今治市設備投資奨励金とは?対象業種・交付額の計算例・着手前の指定申請を解説

補助金

今治市設備投資奨励金は、今治市企業立地促進条例に基づき、愛媛県今治市内に事業所を持つ中小企業者が2,000万円以上の設備更新(機械・装置の入れ替え・設置)を行った場合に、その設備更新に伴う固定資産税の収納額に相当する額の交付を受けられる制度です。

交付期間は基準年度(設備更新完了の日が属する年の翌年度)を含む3年間で、各年度の上限は1,000万円、3年間で最大3,000万円になります。

最大の注意点は、設備更新に「着手するまで」に市長へ指定申請書を提出し、適用事業者の指定を受ける必要があることです(今治市企業立地促進条例施行規則第6条)。着手後の申請は対象外になります。

年度ごとの公募期間が定められた補助金ではなく、条例に基づく常設の奨励制度です。ただし、対象業種は市内の区域(指定区域とそれ以外)によって異なり、小売業のように対象に含まれない業種もあります。

本記事では、区域別の対象業種、交付額の計算例、指定申請から交付までの手順と必要書類を、今治市の条例・施行規則に基づいて解説します。

今治市設備投資奨励金の基本情報

制度名 今治市設備投資奨励金(指定区域では「指定区域設備投資奨励金」)
根拠法令 今治市企業立地促進条例(平成18年条例第25号)・同施行規則
対象地域 愛媛県今治市内(指定区域〈今治新都市区域など〉と指定区域を除く全域で対象業種が異なる)
実施機関 今治市(産業部産業政策局産業振興課)
対象者 今治市内に事業所を有する中小企業者(中小企業基本法第2条第1項の定義による)
対象となる投資 生産増強・高付加価値化・環境負荷軽減のための機械・装置の入れ替え・設置。同一年の1月1日~12月31日に行われ、投資額2,000万円以上であること。事業所の雇用維持が条件
交付額 設備更新に伴い新たに取得した資産に係る固定資産税の収納額に相当する額
交付期間・上限 基準年度(設備更新完了日の属する年の翌年度)を含め3年間。各年度1,000万円が上限(3年間で最大3,000万円)
申請期間 公募期間の定めはない常設制度。ただし指定申請は設備更新に着手するまで、交付申請は各年度の固定資産税を完納した後
併用の制限 設備投資奨励金と同条例の他の奨励金は重複支給されない(条例第14条)。市の他の補助金等の対象となっているものには交付されない(条例第15条)
問い合わせ先 今治市産業部産業政策局産業振興課(電話0898-36-1540)

自社が対象になるかを確認する

対象になるかどうかは、「中小企業者に該当するか」「対象業種に該当するか」「対象になる設備更新か」の3点で判断します。

対象となる「中小企業者」の範囲

条例上の中小企業者は、中小企業基本法第2条第1項に定める中小企業者を指します(今治市企業立地促進条例第2条第5号)。資本金と従業員数のいずれか一方を満たせば該当します。

業種 資本金 常時使用する従業員
製造業・建設業・運輸業など(下記以外) 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下

また、条例上の設備更新は「本市に事業所を有する企業」が行うものと定義されているため、本社が市外にある企業でも、今治市内の事業所で行う設備更新であれば対象になり得ます。個別の該当可否は産業振興課に確認してください。

対象業種は区域によって異なる(小売業は対象外)

対象業種は、今治市企業立地促進条例施行規則の別表で区域ごとに定められています。指定区域(今治新都市区域および市長が特に認めた区域)とそれ以外の全域で、次のように異なります。

業種(日本標準産業分類) 指定区域を除く全域 指定区域
製造業(先進的植物工場を含む) 対象 対象
電気・ガス・熱供給・水道業 対象 対象
情報通信業(情報サービス業、インターネット附随サービス業〈コールセンター事業を含む〉、映像・音声・文字情報制作業の一部) 対象 対象
卸売業(各種商品、繊維・衣服等、飲食料品、建築材料・鉱物・金属材料等、機械器具、その他) 対象 対象
医療・福祉 医療業のうち産科・小児科に限る 対象(限定なし)
学術研究、専門・技術サービス業(学術・開発研究機関、専門サービス業、広告業の一部) 対象 対象
運輸業、郵便業(鉄道、道路旅客・道路貨物運送、水運、航空運輸、倉庫、運輸附帯サービス) 対象外 対象
教育・学習支援業(学校教育、社会教育・職業教育支援施設など) 対象外 対象
小売業 対象外 対象外

小売業は規則別表に記載がなく、いずれの区域でも対象業種に含まれていません。卸売業のみが対象です。

情報通信業や専門サービス業などは、小分類や事業内容(専ら情報通信技術を利用する事業に限る等)でさらに限定されています。自社の業種が該当するかは、施行規則の別表第1・別表第2と産業振興課への確認で判断してください。このほか、市長が特に必要と認める産業が対象になる場合もあります(規則第2条)。

対象になる設備更新・対象外になるケース

条例上の「設備更新」は、生産を増強し、高付加価値化を促進し、又は環境負荷を軽減するために機械・装置を入れ替え、又は設置することで、当該事業所における雇用が維持される場合に限ると定義されています(条例第2条第10号)。

交付要件の対象となるのは、同じ年の1月1日から12月31日までの間に行われる設備更新で、投資額が2,000万円以上のものです(条例別表)。年をまたぐ工事・導入を予定している場合は、事前に産業振興課へ扱いを確認してください。

次のようなケースは対象になりません。

  • 市の指定を受ける前に設備更新へ着手した場合
  • 投資額が2,000万円に満たない場合
  • 対象業種(上記の区域別一覧)に該当しない場合
  • 設備導入後に事業所の雇用が維持されない場合(「設備更新」の定義を満たさなくなります)

交付額はいくらになるか:固定資産税相当額の計算例

交付額の仕組み

この奨励金は「対象経費×補助率」型の補助金ではありません。設備更新に伴い新たに取得した土地・家屋・償却資産に対して市が課した固定資産税の収納額に相当する額が、基準年度を含む3年間交付されます(条例第2条第12号・別表)。

今治市の固定資産税額は「課税標準額×税率1.4%」で算定されます(今治市資産税課「固定資産税のあらまし」)。機械・装置などの償却資産は毎年評価替えが行われて評価額が下がっていくため、2年目・3年目の交付額は通常、初年度より小さくなります。

計算例(税率1.4%で試算)

※以下は税率1.4%を用いた計算例(想定)です。採択事例ではありません。課税標準額(評価額)は取得価額そのものではなく固定資産評価基準により算定されるため、実際の交付額は資産ごとの評価額と実際の収納額によって決まります。

  • 計算例1:設備更新で機械・装置を4,000万円分新たに取得し、初年度の課税標準額が3,500万円と評価された場合。固定資産税は3,500万円×1.4%=49万円となり、基準年度の交付額の目安は49万円(収納額相当)。2年目・3年目は評価額の減少に応じて逓減します。
  • 計算例2:大型投資により新規取得資産の課税標準額が7億2,000万円となった場合。固定資産税は約1,008万円ですが、交付額は各年度上限の1,000万円が適用されます。

奨励金は設備代金そのものを補助する制度ではないため、投資資金は自己資金や融資で全額手当てしたうえで、「固定資産税を納付した後に交付を受ける」という資金の流れになる点に注意してください。

申請の流れ:指定申請は設備更新に「着手するまで」

指定申請から交付までの7ステップ

  1. 設備投資計画を策定し、産業振興課に事前相談する
  2. 設備更新に着手するまでに、指定申請書(施行規則別記様式第1号)に添付書類をそろえて提出する(施行規則第6条第3項第4号)
  3. 市の審査を経て、指定(不指定)書(様式第3号)の交付を受ける
  4. 指定を受けた後に設備更新へ着手し、同一年(1月1日~12月31日)内に投資額2,000万円以上の設備更新を行う
  5. 設備更新の完了日から14日以内に操業開始届(様式第11号)を提出する(施行規則第13条)
  6. 基準年度の固定資産税を完納した後、奨励金交付申請書(様式第8号)で交付申請する(条例第9条)
  7. 交付決定通知(様式第10号)を受けて奨励金を請求し、交付を受ける。2年目・3年目も同様に申請する

交付申請は毎年度の固定資産税完納後(申請回数3回)

交付申請の時期は、交付要件を満たし、かつ基準年度の固定資産税を完納した日以降で、申請回数は3回です(条例第9条第1項第6号)。

2回目以降の申請は、各年度の固定資産税を完納した日以降に行います(同条第2項)。毎年度「納税→交付申請→請求→交付」を繰り返す流れになるため、納期と申請時期をセットで管理してください。

申請に必要な書類

指定申請時に添付する書類(施行規則第6条)

指定申請書(別記様式第1号)には、次の書類を添付します。

  • 事業実施計画書(別記様式第2号)
  • 法人登記事項証明書又は住民票抄本
  • 印鑑(登録)証明書
  • 定款、寄附行為又は規約
  • 直近1事業年度の貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分計算書(欠損金処理計算書)
  • 土地の登記事項証明書及び申請位置図
  • 配置図及び設計図
  • 見積書又は契約書の写し
  • 市税の完納証明書
  • 建築確認の確認済証の写し(該当する場合)
  • その他市長が必要と認める書類

市長が必要ないと認めた書類は提出を省略できる場合があります(施行規則第6条第2項)。登記事項証明書や完納証明書など取得先が分かれる書類が多いため、設備更新の着手予定日から逆算して早めに準備を始めてください。

各様式は今治市企業立地促進条例施行規則の別記様式として定められています。記入方法を含め、申請前に産業振興課へ相談するのが確実です。

交付申請時に添付する書類(施行規則別表第3)

  • 事業実施報告書(別記様式第9号)
  • 市税の完納証明書
  • 交付年度の固定資産記載事項証明書
  • 投下固定資産総額が証明できる書類
  • その他市長が必要と認める書類

交付申請は毎年度行うため、完納証明書と固定資産記載事項証明書は年度ごとに取得が必要です。

他の奨励金・補助金との併用ルール

今治市企業立地促進条例には、併用に関する明文の規定があります。

  • 設備投資奨励金と同条例の他の奨励金(企業立地促進奨励金など)は、重複して支給されません。指定区域内における同種の奨励金についても同様です(条例第14条)
  • 既に市の他の補助金等の対象となっているもの、または対象にしようとしているものには、奨励金は交付されません(条例第15条)

なお、固定資産税に関する支援としては、中小企業等経営強化法に基づく「先端設備等導入計画」の認定による固定資産税の特例措置という別制度もあります。こちらは税そのものの特例で、賃上げ方針の表明などの適用要件があり、既に取得した設備を対象とする計画は認定されません。仕組みも根拠法も異なるため、同じ設備でどちらを利用できるか(併用の可否を含む)は、着手前に産業振興課・資産税課へ確認してください。

指定を受けた後の手続きと取消し・返還の条件

操業開始届・変更・承継の手続き

  • 設備更新が完了したときは、完了日から14日以内に操業開始届(様式第11号)を提出します(施行規則第13条)
  • 指定申請の内容を変更するときは、軽微な変更を除き、指定申請内容変更申請書(様式第4号)で市長の承認を受けます(条例第7条)
  • 合併・分割・事業譲渡などで奨励金を受ける権利を承継するときは、事実が生じた日から30日以内に指定承継申請書(様式第6号)を提出します(条例第8条・施行規則第9条)
  • 事業を休止・廃止したときは、14日以内に事業休止(廃止)届(様式第12号)を提出します(施行規則第14条)

指定の取消しと奨励金の返還(条例第13条)

次のいずれかに該当すると認められた場合、指定の取消し、交付の停止、既に交付された奨励金の全部又は一部の返還命令の対象になります。

  • 交付要件など条例に定める要件を欠いたとき
  • 指定・承認の際に付された条件に違反したとき
  • 事業所の事業を休止・廃止したとき、又はこれと同様の状態になったとき
  • 事業所を指定した事業以外の用途に使ったとき
  • 詐欺その他不正な行為により指定又は交付を受けたとき
  • 市税を滞納したとき
  • その他条例・規則に違反する行為があったとき

設備更新の定義には雇用維持が含まれるため、交付期間中に事業所の雇用が維持されなくなった場合も、要件を欠くものとして取消し・返還の対象になり得ます。市税の滞納が取消事由になっている点にも注意してください。

問い合わせ先と公式情報の確認方法

窓口は今治市産業部産業政策局産業振興課です(電話0898-36-1540、メールsangyou@imabari-city.jp、〒794-8511 今治市別宮町1丁目4番地1 本庁第1別館7階)。

制度の概要は今治市「企業立地優遇制度」ページで、要件・手続き・様式の正確な内容は今治市企業立地促進条例同施行規則で確認できます。国の補助金ポータルJグランツの掲載ページにも制度概要が掲載されています。

今治市企業立地促進条例に基づくその他の奨励金

同じ条例には、設備更新以外の場面で使える奨励金もあります。新設・増設・移転や新規雇用を伴う計画では、こちらも確認してください(設備投資奨励金との重複支給はできません)。

今治市設備投資奨励金のまとめ

今治市設備投資奨励金は、市内の中小企業者が2,000万円以上の設備更新を行った際に、固定資産税の収納額相当額を基準年度から3年間(各年度上限1,000万円・最大3,000万円)受け取れる、条例に基づく常設の制度です。

手続きの成否を分けるのは順序です。指定申請は設備更新に着手するまでに行う必要があり、交付申請は毎年度の固定資産税完納後に計3回行います。対象業種は区域によって異なり、小売業は対象外です。

設備更新の計画が具体化したら、見積の段階で今治市の公式ページで最新情報を確認し、産業振興課(0898-36-1540)へ事前相談することから始めてください。