東京都医療DX人材育成支援事業は、東京都保健医療局が令和8年度に実施している補助金です。都内の病院・医科診療所が、職員のIT・DX関連の研修受講や資格取得にかけた費用を、1医療機関あたり50万円を上限に、補助率10分の10(全額)で補助してもらえます。
提出期限は3回に分かれており、第1回の令和8年6月30日はすでに終了しています。現在申請できるのは、第2回の令和8年9月30日必着分と、最終回となる第3回の令和8年11月30日必着分です。
ただし、どちらの回で申請するかによって交付決定の時期が変わり、研修や資格取得を実施できる期間が変わります。また補助率が10分の10であっても、補助金が入金されるのは補助事業完了後(令和9年5月予定)であり、医療機関側で一度費用を立て替える必要があります。
この記事では、東京都保健医療局の公式ページと「令和8年度医療DX人材育成支援事業補助金申請手続の手引」をもとに、自院が対象になるか、どの回で申請すべきか、交付申請から入金までに何をいつ準備すべきかを整理します。
東京都医療DX人材育成支援事業の基本情報
| 正式名称 | 令和8年度医療DX人材育成支援事業(東京都) |
| 対象地域 | 東京都内 |
| 実施機関 | 東京都保健医療局医療政策部医療政策課医療改革推進担当/申請受付・審査・問合せ対応は東京都医療DX推進事業補助金事務局に委託 |
| 対象者 | 東京都内において病院又は医科診療所を開設する者であって、東京都知事が適当と認める者 |
| 対象業種 | 医療、福祉 |
| 対象経費 | IT・DX関連の研修受講費、資格取得費、技能認定試験の受験費、代替職員の雇用又は派遣費 |
| 事業実施の条件 | 電子カルテシステムの導入など医療機関のデジタル化に向けた取組を進めること/デジタル技術導入状況に関する調査など東京都の効果検証に協力すること |
| 補助対象外 | 交付申請前に開始した取組、国や地方公共団体の他の補助金等を充当する経費 |
| 提出期限 | 第1回:令和8年6月30日(終了)/第2回:令和8年9月30日【必着】/第3回:令和8年11月30日【必着・最終】 |
| 基準額 | 1医療機関当たり500千円(50万円) |
| 補助率 | 10分の10 |
| 交付決定時期 | 第1回:令和8年8月以降/第2回:令和8年11月以降/第3回:令和9年1月以降(いずれも見込み) |
| 補助対象期間 | 交付申請後から令和9年3月31日まで |
| 補助金の支払 | 補助事業完了後(令和9年5月予定) |
| 申請方法 | 原則として補助金申請システムjGrantsによるオンライン申請 |
| 問い合わせ先 | 東京都医療DX推進事業補助金事務局(050-3816-2607)/制度に関する問い合わせは東京都保健医療局医療政策課医療改革推進担当(03-5320-4448) |
出典:東京都保健医療局「令和8年度医療DX人材育成支援事業」(更新日:2026年4月7日)、および同局「令和8年度医療DX人材育成支援事業補助金申請手続の手引」(PDF)
現在の受付状況と、第2回・第3回のどちらで申請するかの判断
この補助金は先着順ではなく、回ごとに提出期限が定められています。第1回の令和8年6月30日はすでに終了しているため、いま検討できるのは第2回と第3回の2択です。
提出期限と交付決定時期の対応
| 回 | 提出期限 | 交付決定時期(見込み) | 事業完了期限 |
| 第1回 | 令和8年6月30日(火)【必着】※終了 | 令和8年8月以降 | 令和9年3月31日 |
| 第2回 | 令和8年9月30日(水)【必着】 | 令和8年11月以降 | 令和9年3月31日 |
| 第3回 | 令和8年11月30日(月)【必着・最終】 | 令和9年1月以降 | 令和9年3月31日 |
どの回で申請しても、事業完了の期限は令和9年3月31日で共通です。つまり申請が遅い回になるほど、交付決定から事業完了までの期間が短くなります。
第2回(令和8年9月30日必着)で申請した場合
交付決定は令和8年11月以降の見込みです。交付決定を受けてから研修受講や受験を始める場合、令和8年11月から令和9年3月31日までのおよそ5か月で、受講・受験・業者等への支払までを終える必要があります。
年2回程度しか実施されない資格試験を予定している場合や、代替職員を雇用・派遣で確保する必要がある場合は、この5か月の中に日程が収まるかを先に確認してください。
第3回(令和8年11月30日必着)で申請した場合
第3回は令和8年度の最終回で、交付決定は令和9年1月以降の見込みです。交付決定後に取組を始めるとすると、令和9年1月から3月31日までの約3か月しか残りません。
手引には、補助対象は原則として年度内(令和9年3月末)に、研修受講・資格取得・技能認定試験の受験・代替職員の雇用又は派遣、および業者等への支払が完了したものと記載されています。試験の合格発表や請求書の締め日が年度をまたぐ可能性がある場合、第3回まで待つのはリスクが高くなります。これによりがたい場合は都担当者に相談することとされているため、日程が読めない段階で第3回を選ぶより、第2回で申請できるよう準備を前倒しするほうが確実です。
取組を開始してよいのは「交付決定後」ではなく「交付申請後」
この制度でとくに間違えやすいのが、いつから研修や受験を始めてよいかという点です。手引の留意事項では、研修受講・資格取得・技能認定試験の受験・代替職員の雇用又は派遣は「交付申請後に開始してください。交付申請前に実施した取組は補助対象外になります」とされています。基準となるのは交付決定日ではなく、交付申請日です。
この違いは、第2回で申請した場合に約2か月、第3回なら約1か月以上の差になります。交付申請を済ませていれば、交付決定を待たずに研修の申込や受講を開始できるため、令和9年3月31日までの実施期間を実質的に長く確保できます。
実績報告では「補助金の交付申請日以降に実施(申し込み、受講等)を開始したことが確認できる書類」を提出することになっています。研修の申込完了メール、受講申込書の控え、受験申込の受付通知などは、交付申請日より後の日付であることがわかる形で必ず保存しておいてください。
なお交付決定は交付申請より後に行われるため、交付決定前に費用が発生する取組を始める場合は、その扱いを東京都医療DX推進事業補助金事務局(050-3816-2607)に事前に確認したうえで判断してください。
自院が対象になるかを確認する
対象になる医療機関
対象は、東京都内において病院又は医科診療所を開設する者であって、東京都知事が適当と認める者です。都外に所在する医療機関は対象になりません。また要綱の文言は「病院又は医科診療所」であり、歯科診療所・薬局・訪問看護ステーションなどは明記されていません。自院の類型が対象になるか判断がつかない場合は、申請前に東京都保健医療局医療政策課医療改革推進担当(03-5320-4448)に確認してください。
対象から除外される者
公式ページでは、次に該当する者は対象とならないと明記されています。
- 国
- 地方公共団体
- 地方独立行政法人および特定地方独立行政法人
- 独立行政法人および特定独立行政法人
- 国立大学法人
- 本補助金の交付を受けたことがある医療機関
- 暴力団
- 法人その他団体の代表者・役員・使用人・その他の従業者若しくは構成員に暴力団員等に該当する者があるもの
過去にこの補助金の交付を受けた医療機関は申請できない
除外要件のうち、実務上もっとも見落とされやすいのが「本補助金の交付を受けたことがある医療機関」です。過去年度に医療DX人材育成支援事業の交付を受けている場合、令和8年度は申請できません。
裏を返すと、この補助金を使えるのは1医療機関につき一度きりです。50万円の枠を1人分の受験料だけで消化してしまうと、次年度以降に同じ制度を使い直すことはできません。どの職員に、どの研修・資格・技能認定試験を、どの順番で受けさせるかを決めてから交付申請するほうが、枠を有効に使えます。
補助額と対象経費|1医療機関50万円・補助率10分の10
基準額は1医療機関当たり500千円(50万円)、補助率は10分の10です。上限額の範囲内であれば対象経費の全額が補助されるため、補助率をかける計算は不要です。対象経費の合計が50万円を超えた分は自院の負担になります。
対象となる4つの取組
令和8年度(交付申請後から令和9年3月31日まで)に実施する、次の取組に係る経費が対象です。
- IT・DX関連の研修受講(医療機関への出張研修を含む)
- IT・DX関連の資格取得(資格取得に付随する通信講座の受講を含む)
- IT・DX関連の技能認定試験の受験
- 1から3までに取り組む職員が研修等で不在となる際の代替職員の雇用又は派遣
4つ目の代替職員の費用が対象に含まれている点は、この補助金の特徴です。日中の研修に職員を送り出すために外来体制を維持できないという理由で受講を見送っていた場合、代替職員の雇用費・派遣費まで含めて計画を立てられます。
なお、どの資格・研修がIT・DX関連に当たるかの具体的な一覧は公式資料では公表されていません。受講予定の研修や受験予定の試験が対象になるかは、事務局に事前確認するのが確実です。
補助対象外となる経費
- 交付申請前に開始した研修受講、資格取得、技能認定試験の受験、代替職員の雇用又は派遣
- 国や地方公共団体の他の補助金等を充当する経費
- 令和9年3月31日までに完了(支払を含む)しなかった取組に係る経費(これによりがたい場合は都担当者に相談)
補助率10分の10でも立替が必要|入金は令和9年5月予定
補助率10分の10と聞くと、自院の持ち出しがまったく発生しないように見えます。しかし手引には「補助金の支払については、補助事業完了後(令和9年5月予定)になります」と明記されています。研修費や受験料は、いったん医療機関が支払い、後から補助金を受け取る流れです。
たとえば第2回で申請し、令和8年12月に研修費と受験料の合計50万円を支払った場合、その50万円が入金されるのは令和9年5月頃の見込みです。約5か月間、50万円を自院で立て替えることになります。50万円の枠をフルに使う計画を立てるときは、この立替期間を資金繰り上どう吸収するかもあわせて確認しておいてください。
あわせて注意したいのが、支払の名義です。実績報告では領収書等の写しを提出しますが、職員個人が受験料などを支払った場合には、医療機関から職員個人への立替払が完了していることが確認できる書類もあわせて提出する必要があります。職員が個人のクレジットカードで受験申込をするようなケースでは、院内での精算記録を必ず残してください。
申請手順と交付申請時の提出書類
申請の手順
- 東京都保健医療局の公式ページで「申請手続の手引」と、実施要綱・交付要綱を確認する
- 受講予定の研修・受験予定の試験の日程と費用を確認し、令和9年3月31日までに支払まで完了できるかを確認する
- 申請様式をjGrantsの公募ページからダウンロードし、事業計画書・経費所要額調などを作成する
- jGrantsから交付申請を行う(第2回は令和8年9月30日必着、第3回は令和8年11月30日必着)
- 提出された事業計画書等に基づき、東京都が審査する
- 交付決定を受ける(第2回は令和8年11月以降、第3回は令和9年1月以降の見込み)
- 研修受講・資格取得・技能認定試験の受験・代替職員の確保を実施し、令和9年3月31日までに支払まで完了させる
- 実績報告書等を提出する(具体的な期限は東京都から別途通知)
- 東京都の審査を経て額が確定し、「額の確定通知書」が交付される
- 額の確定通知書に基づき支払請求を行い、指定口座に補助金が振り込まれる(令和9年5月予定)
申請は原則としてjGrantsによるオンライン申請です。jGrantsの利用が難しい場合は、東京都医療DX推進事業補助金事務局(050-3816-2607)に相談することとされています。
交付申請時に提出する書類
- 医療DX人材育成支援事業補助金に係る交付申請書(別記第1号様式)
- 医療DX人材育成支援事業計画書(別記第1号様式 別紙1)
- 経費所要額調(別記第1号様式 別紙2)
- 歳入歳出予算書(見込書)抄本(当該補助事業の支出予定額が記載されているもの)
- 印鑑証明書
- その他参考となる資料
jGrantsで申請する場合、このうち交付申請書と印鑑証明書は提出不要です。印鑑証明書は取得に手間と時間がかかる書類なので、jGrantsを使えるかどうかで準備の負担が変わります。
取組の種類別に変わる添付書類
この補助金では、「その他参考となる資料」として何を出すかが、4つの取組区分ごとに手引で示されています。研修を受けるのか、資格を取るのか、代替職員を雇うのかによって必要な資料が変わるため、計画を立てる段階で確認しておくと差し戻しを防げます。
交付申請時に添付する資料
| 取組内容 | 提出物 |
| 研修受講 | 受講を予定している研修の案内・パンフレット・ホームページ画面を印刷したもの等で、研修提供企業、研修内容、実施方法・場所、実施時期・日時、受講時間数、受講料が確認できる書類 |
| 資格取得 | 取得・受験を予定している資格の案内等で、認定者、資格内容、受験方法・場所・日時、受験料が確認できる書類/受講を予定している講座の案内等で、講座提供企業、講座内容、実施方法・場所、実施時期・日時、受講時間数、受講料が確認できる書類 |
| 技能認定試験の受験 | 受験を予定している試験の案内等で、認定者、試験内容、受験方法・場所・日時、受験料が確認できる書類 |
| 代替職員の雇用又は派遣 | 雇用契約書(案)、労働者派遣契約書(案) |
いずれも「予定している」研修・資格・試験の情報を示す資料です。申込ページのスクリーンショットや案内PDFは、日程と料金が載っている状態で保存しておいてください。代替職員については、契約書そのものではなく案の段階で提出できます。
実績報告時に提出する書類
- 医療DX人材育成支援事業補助金に係る事業実績報告書(別記第2号様式)
- 事業実績報告書(別記第2号様式 別紙1)
- 経費所要額精算書(別記第2号様式 別紙2)
- 歳入歳出決算書(見込書)抄本
- 領収書等の写し(職員個人が支払いをした場合は、医療機関から職員個人への立替払が完了していることが確認できる書類もあわせて提出)
- 補助金の交付申請日以降に実施(申し込み、受講等)を開始したことが確認できる書類
- その他事業の実施状況及び実施結果が確認できる書類の写し
jGrantsで申請する場合、事業実績報告書(別記第2号様式)は提出不要です。最後の「実施状況及び実施結果が確認できる書類」も、取組区分ごとに手引で例示されています。
| 取組内容 | 提出物 |
| 研修受講 | 修了証、受講証明書など受講したことが確認できる書類 |
| 資格取得 | 資格取得を証する書類、受験したことが確認できる書類、通信講座等を受講したことが確認できる書類 |
| 技能認定試験の受験 | 技能認定を証する書類、受験したことが確認できる書類 |
| 代替職員の雇用又は派遣 | 雇用契約書、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書、出勤簿、賃金台帳、労働者派遣契約書 |
代替職員については、契約書だけでなく出勤簿と賃金台帳まで求められます。派遣ではなく直接雇用で対応する場合は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書も必要になるため、労務手続を含めて段取りを組んでおいてください。
交付決定後に必要な手続き
計画を変更・中止する場合は事前に知事の承認が必要
次のいずれかに該当する場合は、あらかじめ知事の承認が必要とされており、該当する事例が発生したときは必ず連絡することとされています。
- 補助事業に要する経費を変更しようとするとき
- 補助事業の内容を変更しようとするとき
- 補助事業を中止しようとするとき
受験予定だった職員が異動した、予定していた研修が中止になり別の研修に振り替えたい、といったケースは「補助事業の内容の変更」に当たり得ます。差し替えを決めた時点で、実施前に変更申請を行ってください。
実績報告から入金までの流れ
補助事業が完了したら実績報告書を提出します。具体的な提出期限は東京都から別途通知されるため、交付決定通知や事務局からの連絡を必ず確認してください。
提出された実績報告を東京都が審査し、内容に適合すると認めたときに補助金の額が確定し、「額の確定通知書」が交付されます。その通知書に基づいて支払請求を行い、東京都の確認後に指定口座へ振り込まれます。支払時期は補助事業完了後の令和9年5月が予定されています。
東京都医療DX人材育成支援事業のまとめ
東京都医療DX人材育成支援事業は、都内の病院・医科診療所を対象に、IT・DX関連の研修受講・資格取得・技能認定試験の受験、およびその間の代替職員の費用を、1医療機関50万円を上限に補助率10分の10で支援する制度です。
判断のポイントは3つあります。1つ目は申請回の選択で、第2回(令和8年9月30日必着)と第3回(令和8年11月30日必着)では交付決定が約2か月ずれる一方、事業完了期限はどちらも令和9年3月31日で共通です。2つ目は開始時期の基準で、取組を始めてよいのは交付決定後ではなく交付申請後です。3つ目は資金繰りで、補助率10分の10でも入金は令和9年5月予定のため、それまでは自院で立て替えることになります。
また本補助金の交付を受けたことがある医療機関は対象外で、実質的に1医療機関1回限りの制度です。申請前に、どの職員がどの研修・資格・試験に取り組むかまで固めておくことをおすすめします。
最新の要件・様式・提出期限は、東京都保健医療局の令和8年度医療DX人材育成支援事業のページ、申請手続の手引、医療DX人材育成支援事業実施要綱、医療DX人材育成支援事業補助金交付要綱で必ずご確認ください。
-1200-x-400-px-3.png)
