「比喩にはいろんな表現技法があるけど、直喩と隠喩の違いって何?」
「換喩・提喩って聞いたことあるけど、どんな意味があるの?」
文章を書くときに『比喩』という言葉をよく耳にしますが、正確に理解している人は少ないハズ。
詳しくは本文でご紹介しますが、直喩と隠喩の違いを簡単にいいますと『まるで~のようだ』といった言葉を使って、文章表現しているか否かにあります。
【直喩】
彼の怒り方はまるで鬼のようだ
【隠喩】
彼の怒り方は鬼だな
上記のように直喩では『まるで~のようだ』といった文章が埋め込まれていますので、一目で「比喩が使われているな」とわかります。
しかし隠喩ですとこういった表現技法は使われていませんよね。
これが直喩と隠喩の違いです。
そしてこの直喩と隠喩の他にも、比喩には『換喩・提喩』などといった表現技法があります。
ただしこれらは直喩・隠喩とは別の意味があり少し趣が異なった表現技法ですので、使い方には少しコツがあります。
そこでこの記事では直喩と隠喩の違いはもちろん、それぞれの表現技法を例文で解説・換喩や提喩などといった別の比喩表現も解説いたします。
この記事を読み終えるころには直喩・隠喩だけでなく、その他比喩表現を使った文章を上手に書けるようになり、文章表現が豊かになりますよ。
比喩の代表例|直喩と隠喩における意味の違い
直喩と隠喩は両者ともに比喩法の一種です。
似たような表現方法ですが、それぞれ明確な違いがあります。
今回は直喩と隠喩の明確な違いを見ていきましょう。
- 文法上における両者の明確な違い
- そもそも直喩(明喩)ってなに?
- そもそも隠喩(暗喩・メタファー)ってなに?
文法上における両者の明確な違い
直喩と隠喩の違いは「~のようだ」などの言葉を使って他に例えているかいないかです。
例えば「彼女の笑顔は花のようだ」という文章は「彼女の笑顔」を「花」みたいであると明確に例えているため直喩になります。
この場合「彼女の笑顔」と「花」を「ようだ」という言葉で繋いでいます。
一方で「彼女の笑顔は花だ」という文章は上記と違い「~のようだ」という表現を使用していないため隠喩となるのです。
このように直喩と隠喩とは決まった言葉を使用し、何かに対して別の何かを直接的に比べているかどうかの違いであるということです。
どちらも一般的に広く知られている単語を比喩として使わないと、読み手に意図が伝わらない可能性があるので注意しましょう。
そもそも直喩(明喩)ってなに?
直喩とは比喩法の一つであり「~のような」などの表現を使用して、2つの対象を直接的に比べることです。
別名で明喩とも言います。
直喩を使用することで、具体的な想像をすることが可能になります。
例えば「まるで彼は台風のように去っていった」という文章でみてみましょう。
「彼」と「台風」という2つの対象を「まるで」と「のような」という言葉を使い結び付けています。
そのため、彼が台風のような速さであっという間に去っていったという場面を思い描くことができるでしょう。
また、直喩には「まるで」などのようにいくつかの決まり文句が存在します。
直喩かどうかを判断するには、これらの決まった文言がつくかどうかで区別しましょう。
なお、直喩で使う決まった言葉は以下の通り。
- ~のようだ
- まるで~
- ~ように
- ~みたいな
- ~のごとし
- ~に似たり
このように直喩とは上記の決まり文句を使用して比較する比喩法の一つであるということを理解しておきましょう。
そもそも隠喩(暗喩・メタファー)ってなに?
隠喩とは直喩で使用している「~のようだ」などの直接的な言葉を使わない比喩法です。
暗喩やメタファーと呼ぶこともあります。
直喩が「~のようだ」と具体的に対象物を比較するのに対して、隠喩は明確化しないことでそれとなく比較する表現方法です。
「彼は光だ」
このような文章から何を想像するでしょう。
性格の明るさであったり、将来的な可能性を表しているかもしれません。
このように直喩と違い、言い切ることで様々な想像を掻き立てる事ができ、読み手に強いイメージを与えることができます。
隠喩のメリットは使う事で直喩と比べて読み手に強いインパクトを残すことができることです。
また、直喩と隠喩の見分け方として、直喩のように決まった言葉を使用しない比喩は隠喩であると覚えておきましょう。
直喩の表現技法を例文で解説
直喩の使用方法を例文を用いて、解説していきます。
直喩というのは、「〜のようだ」「〜に似ている」などの言葉を用いて、他のものにたとえる表現方法のことです。
直喩は、別名で明喩とも呼ばれています。
直喩の正しい使用方法を知ることで、日本語の表現が豊かになります。
今回解説する直喩は、以下の4つです。
- ~のようだ
- ~のごとく
- ~に似ている
- ~みたいだ
~のようだ
直喩の1つに、「~のようだ」があります。
「~のようだ」を使用しない場合と使用する場合の例文をみてみましょう。
「~のようだ」を使用しない場合
「彼女の肌は、白い」
「~のようだ」を使用する場合
「彼女の肌は、まるで雪のようだ」
彼女の肌を「雪のようだ」という直喩を用いることにより、分かりやすく表現しています。
「彼女の肌は、白い」でも文章としては問題ありません。
しかし、雪という言葉を用いることで、彼女の肌が白いことがより伝わりやすくなります。
~のごとく
次は「~のごとく」という直喩もあります。
「~のごとく」を使用しない場合と使用する場合の例文をみてみましょう。
「~のごとく」を使用しない場合
照らしつける陽射しによって、汗が流れ出てくる
「~のごとく」を使用する場合
照らしつける陽射しによって、汗が滝のごとく流れ出てくる
「~のごとく」は、意味としては「~のように」と同様です。
汗を滝という言葉に例えて表現することにより、照らしつける陽射しがどれだけ熱いのかが分かりやすいです。
気温が10〜20℃台であるとは考えづらく、30℃以上の真夏日や35℃以上の猛暑日であることが予想できます。
~に似ている
続いて「~に似ている」という直喩です。
「~に似ている」を使用しない場合と使用する場合の例文をみてみましょう。
「~に似ている」を使用しない場合
あの先生の顔は、目が切れ長のつり目である
「~に似ている」を使用する場合
あの先生の顔は、キツネに似ている
「キツネに似ている」という表現を用いることにより、先生が何に似ているかということが分かりやすい表現となっています。
例えば、複数の先生がその場にいる場面を想像してみてください。
相手に先生を説明する上で、具体的な「キツネ」に例えることで、どの先生を指しているのか分かりやすいです。
~みたいだ
最後に「~みたいだ」です。
「~みたいだ」を使用しない場合と使用する場合の例文をみてみましょう。
「~みたいだ」を使用しない場合
2人は仲が良い
「~みたいだ」を使用する場合
2人は仲が良いので、まるで兄弟みたいだ
「兄弟」という言葉を用いて例えることにより、2人の仲の良さを分かりやすく表現しています。
上記で直喩を解説してきましたが、他のものにたとえない表現は隠喩(または暗喩)と呼ばれています。
例えば、暗喩は「彼女は天使だ」と言い切ることにより、聞き手に対して「彼女」と「天使」の関係を暗に伝えることが可能です。
しかし、使用するワードによって、相手に伝わらない可能性があるため、注意が必要です。
直喩だけでなく、暗喩も併せて使用方法をマスターすることで、日本語を今以上に楽しむことが出来ます。
隠喩の表現技法を有名なことわざで解説
ココでは隠喩の具体例としまして、有名なことわざを使って解説いたします。
- 継続は力なり
- 水の泡
- 花のかんばせ
継続は力なり
「継続は力なり」には、小さなことでも積み上げていくことで大きな結果につながる、という意味があります。
このことわざは、「継続」をすることで「力」になる、のように直接的ではない例えをしています。
「継続」と「力」は本来異なる意味をもつ言葉であるため、「継続は力なり」は隠喩表現を使ったことわざだということがわかりますね。
例えば、以下のようなシーンで使われることが多いです。
- 頑張って毎日勉強をして試験に合格できた、継続は力なりだ。
- 彼は1年前までは華奢だったのに、今では筋トレを継続した結果筋肉質になった、継続は力なりだ。
上記をみると、試験に合格するために継続して勉強を頑張った結果、試験に合格できました。
また、筋トレをして筋肉質になったことで、他の人から継続した結果を認めてもらっていますね。
このように、小さな努力でも積み上げていくことで結果に繋がることや、他の人から言われるポジティブな言葉として使われます。
苦難や挫折があっても、「継続は力なり」を思い出して、コツコツと努力を積み上げていきましょう。
水の泡
「水の泡」ということわざは、努力してきたことが全て無駄になってしまった時の例えとして使われます。
ことわざの由来は、水に浮かぶ泡のように簡単に消えてしまうことからきていると言われています。
例えば、以下のようなシーンで使われることが多いです。
- 試験当日に発熱してしまい、試験を受けることができなかったため、苦労が水の泡になってしまった。
- パソコンで資料を作っていたが、突然の停電でデータがなくなってしまい、苦労が水の泡になってしまった。
- 模型を作成していたが、突然の地震により模型が壊れてしまい、今までの苦労が無駄になってしまった。
このように、苦労や努力をしたことが、水の泡のようになくなり無駄になってしまった時に使われます。
苦労や努力を続けたことが無駄になってしまった場合だけでなく、模型作りのように楽しく行っていた事柄にも使われます。
つまり、ビジネスシーンだけでなく、趣味や勉強など多くのシーンで使われることわざであることがわかりますね。
また、「水に浮かぶ泡のように消えてしまう」といった表現から、隠喩表現を使ったことわざということがわかります。
例えば〜のように、といった表現をしていませんし、「水」=「泡」ではありません。
このことから、直接的な表現をしていないため、「水の泡」は隠喩表現だということがわかります。
マイナスのイメージで使われることの多いことわざですが、苦労や努力した経験は無駄にはなりません。
全てが水の泡になるというネガティブな例えとして、捉えすぎないように注意しましょう。
花のかんばせ
「花のかんばせ」には、花のように美しい顔といった意味があります。
「かんばせ」は漢字で書くと「顔」になり、顔のようすや顔つきという意味をもつ言葉です。
例えば〜のように、といった表現をしていないことや、「花」=「顔」ではないことから、隠喩表現ということがわかります。
「花のかんばせ」は日常会話で使われることはほとんどなく、小説の中で使われることが多いことわざです。
例えば、南方熊楠の小説「十二支考」では、以下のように使われています。
嬋娟たる花の顔ばせ、耳の穴をくじりて一笑すれば天井から鼠が落ち、鬢のほつれを掻き立てて枕のとがを憾めば二階から人が落ちる。
青空文庫|十二支考・鼠に関する民俗と信念(2022年2月14日)
嬋娟とは、女性の姿を艶やかで美しいと表現した言葉です。
つまり「花のかんばせ」は、艶やかで花のように美しい顔の女性の姿を表現しています。
このように、小説の中では風情のある表現として使われています。
「花のかんばせ」は、現在ではあまり聞きなれないことわざです。
しかし、ことわざの意味を知ることで、小説の読み口が変わってくるかもしれませんよ。
【換喩・提喩など】その他比喩表現技法
直喩・隠喩以外の比喩表現を解説いたします
- 諷喩(allegory)
- 提喩(synecdoche)
- 換喩(metonymy)
- 活喩(prosopopoeia)
- 擬人法(personification)
諷喩(allegory)
諷喩(ふうゆ)とは、例えだけを示すことによって、例えられているものが何かを推測させる比喩です。
例えば、有名なことわざで例えてみましょう。
「井の中の蛙、大海を知らず」
上記では、「井の中の蛙」と「大海」という例えのみが示されています。
「井の中の蛙」は、井戸の中で生活している「トノサマガエル」なのか、もしくは「アマガエル」かなどの特定がされていません。
同じように、「大海」も「太平洋」なのか、「オホーツク海」なのかなどの特定がないため、様々な推測ができるでしょう。
このように例えを示すことで、読み手にとって様々な推測をさせる比喩のことを、諷喩と言います。
諷喩にはいわゆる「言葉のあや」と言われるものが多いことも特徴的ですね。
提喩(synecdoche)
提喩(ていゆ)とは、全体と部分との関係に基づいて、言葉を表現する比喩の1つです。
例えば、以下のような文章で例えてみましょう。
お時間があれば、お茶をしませんか?
上記で「お茶」と表現していますが、緑茶や紅茶などの飲み物に限定していません。
この「お茶」の言葉の中には、緑茶や紅茶、またはコーヒーやオレンジジュースなど多くの種類が含まれるでしょう。
このことから、「お茶」という全体的な意味を含んだ言葉を使い、その他の部分的な飲み物の意味も伝えています。
このように表現する比喩のことを、「提喩」とよぶのです。
換喩(metonymy)
換喩(かんゆ)も比喩の1つで、ある事物を表すために、それと関係の深い事物で置き換える方法のことを言います。
例えば以下の表で例えてみましょう。
【換喩表現と換喩に関係する事物】
例文 | 換喩 | 換喩に関係する事物 |
---|---|---|
彼は「パトカー」に捕まった | パトカー | 警察 |
「スタジアム」は熱狂に包まれた | スタジアム | 観客 |
上記の表で表現されている「パトカー」とは実際には「警察」の意味です。
また、同じように「スタジアム」は「 観客」という意味を持っています。
このように、単に「警察」や「観客」と表現していません。
あえて「パトカー」や「スタジアム」と表現しています。
「換喩」とは、変換の換という文字を使っていることもあり、何かを変換するという意味を持っていると言えるでしょう。
このことから、ある言葉を関係の深い言葉に置き換える場合などに使用する方法です。
活喩(prosopopoeia)
活喩(かつゆ)とは、生き物ではないものを命があるもののように扱う比喩です。
例えてみるならば、以下のような例文があります。
空が泣いている
この例文では天気が悪くなっている様子を、空を人のように例えて、泣いていると表現しています。
機関車が唸り声を上げて走っている
この例文では、機関車が汽笛を鳴らしている様子をまるで動物が唸り声をあげているように表現していますね。
このように、生き物ではないものに命を吹き込むように表現する比喩です。
無生物でも温かみが加わり、思いの丈がより伝わるようになりますね。
擬人法(personification)
擬人法(ぎじんほう)とは、人ではないものを人に例えて、イメージ化させる比喩のことを言います。
例えば、以下のような文章で見てみましょう。
風が私達にささやきかける
この例文では、あたかも風が人のように表現しています。
一般的に考えると、風は生き物ではないので、しゃべったりささやいたりはしません。
そのため、ささやくことはできないのが普通と言えるでしょう。
しかし、人に例えて表現することで、なんだかそばにいるようなイメージで受け取れますね。
このように、人ではないものを人に例えて表現する比喩を擬人法と呼ぶのです。