「対句法って何だろう? 例文にするとどんな感じかな」
「対句法と反復法の違いがわからない……」
国語の授業などで『対句法』という言葉を聞いたことがある人でも、上記のように疑問に思うかもしれません。
詳しくは本文で解説いたしますが、対句法とは似た表現を詩などの文中に並べて、各語句の印象を強める手法を指します。
【対句法の例文】
昨日は晴れ。今日も晴れ。明日も晴れ。
対句法を使うことで単に『3日間晴れ』と書くよりも、なぜか晴れの印象が強くなりますよね。
コレが対句法の効果になります。
もちろん、対句法の効果は他にも『文章にリズム感が出る』などといったものもあり、歌詞や詩にも使われています。
しかしそうなると「対句法と反復法との違いは何?」と気になる人もいるハズ。
そこでこの記事では対句法の意味・例文だけでなく、反復法との違いや使える場面をご紹介いたします。
この記事を読み終える頃には、あなたの表現技法の引き出しが格段に増えています。
対句法とは?意味や反復法との違いを解説
こちらの記事では対句法の説明を含め、他の技法との違いについてご紹介していきます。
- 対句法って何?
- 反復法との違いは?
- 倒置法との違い
対句法って何?
先ほど簡単に触れましたが、対句法とは似た単語を対になるように使用する表現技法を指します。
文章中に対句を用いた修辞法。
対句法(ついくほう)の意味|goo辞書(2022年5月31日時点)
「対」と言う字が使われていますが、これは反対という意味ではなく、表現が「セット」になっている事を意味します。
同じもしくは類似した表現を並べ、対になった語句の印象を強める技法です。
それでは例文を詳しく見ていきましょう。
雨ニモ負ケズ。風ニモ負ケズ。雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ。
雨ニモマケズ|青空文庫(2022年5月31日時点)
こちらは宮沢賢治の『雨ニモマケズ』から抜粋したものです。
「〇〇にも負けず」を繰り返す事で対の表現になっています。
さらに気象をテンポ良く繰り返し対比する事で趣を与え、語句の印象を強めています。
対になる文章を際立たせたい時や、風情を与えたい時に使うと良いでしょう。
反復法との違いは?
対句法と反復法の違いは「何を並べて意味を成すか」です。
具体的に言いますと、対句法は『似たような表現を並べて対にする技法』反復法は『似たような語句を並べる技法』を指します。
例文で比較してみると下記のようになります。
【対句法の例文】
今日は勉強で寝不足。昨日はゲームで寝不足。
【反復法の例文】
寝不足だ。勉強とゲームのやり過ぎで、二日連続寝不足だ。
前者の例文では日数+理由+「寝不足」という表現を繰り返して対にしているので、対句法です。
一方後者の例では、始めと終わりに「寝不足だ」という同じ句を並べているので、反復法という事になります。
どちらの例も、勉強とゲームが原因で寝不足である事を説明した文章ですが、強調している部分が異なります。
対句法は表現を比較して際立たせ、反復法は繰り返した語句を強調するのです。
倒置法との違い
対句法と倒置法では、それぞれを使った文章の意味が異なります。
対句法が対になった表現を強調するのに対し、倒置法は文中の語句の位置を入れ替えて内容を強調する技法です。
例文を交え、対句法と倒置法の違いをご紹介します。
【例文】
あの子と貴方に出会えて良かった。
【倒置法の例文】
出会えて良かった、あの子と、・・・貴方に。
【反復法の例文】
あの子と出会えて良かった。貴方に出会えて良かった。
3つの例文で使っている語句は同じですが、倒置法では言葉の順序を変えるだけで意味深になり、文末に含みを感じる印象になりました。
対句法は「誰」+「出会えて良かった」という表現を繰り返す事で対になった部分を強調しています。
それに対し、倒置法はあえて通常と異なる語句の配列にする事で、倒置した語句に意味を持たせているのです。
対句法の効果を豊富な例文で解説
対句法には以下4つの効果があります。
- 文章のリズムを整えられる
- 互いの文章を強調させられる
- ギャップを印象付けられる
- 文章が趣深くなる
文章のリズムを整えられる
対句法には文章の調子やリズムを整える効果があります。
例文を比較してみましょう。
【通常の文章】
青空が広がって白い雲が浮かんでいる。今日は絶好のピクニック日和だ。
【対句法を用いた文章】
青い空、白い雲。今日は絶好のピクニック日和だ。
対句法では似た表現の句を並べているため、同じ情景を説明しているにもかかわらず、思わず口に出して読みたくなるようなリズムの良さが生まれます。
歌詞や書籍のタイトルにも、対句法が使われていることは多々あります。
文字数に制約のある場面では、対句法によって表現の幅を広げることができるからです。
例文からもわかる通り、対句法を用いた文章では、文字数が減っているのに印象に残る表現になっていますよね。
意識してみると新しい発見があるのではないでしょうか。
互いの文章を強調させられる
同じような形の文を並べることで、お互いの文章を際立たせる効果があります。
【通常の文章】
ライオンはシマウマを襲う。これがサバンナである。
【対句法を用いた文章】
敵を襲うライオン。敵に襲われるシマウマ。これがサバンナである。
サバンナでのライオンとシマウマの関係性が「襲う」と「襲われる」の対句により際立ったのが分かります。
文章の中で特に強調したい部分がある場合、この例のように対句法を使って表現すると良いでしょう。
読者の視点からも、対句法によりお互いの文章の似た部分と異なる部分の比較がしやすくなります。
つまり、筆者の言いたいことの理解に繋がるのです。
ギャップを印象付けられる
ギャップを印象づけたい場合にも、対句は効果的です。
【通常の文章】
分からないことは恥ずかしがらずに質問するべきだ。そうでなければ一生恥ずかしい思いをすることになる。
【対句法を用いた文章】
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
「◯+は+△」という同一の構成の中で、「一時の恥」と「一生の恥」という正反対の句を組み合わせています。
そのため比較がしやすく、正反対の語句の差が際立ちます。
つまり、ギャップを印象づけることができるのです。
このことわざで伝えたいのは「臆せず質問することの大切さ」ですが、対句表現になることで説得力が増していますよね。
文章が趣深くなる
対句を用いることで、趣深く風情ある表現をすることができます。
【通常の文章】
出会って半年とは思えないほど仲良くなれたのに、君は突然転校してしまった。
【対句法を用いた文章】
春、君と出会い、秋、君と別れる
「春」と「秋」の時間の対比、「出会い」と「別れ」の対比により、二人の間に起きた出来事を読者に想像させる効果があります。
通常の文章よりも対句法を用いたほうが、解釈の幅を広げることができますね。
詩や小説でも、文章に格式高いイメージや趣深い印象を与えることのできる対句は、よく使われています。
【国語の授業】対句法は詩にも使える
対句法は以下のような場合に活用できます。
- 動詞に対して使う
- 名詞に対して使う
- 現代詩
- 平家物語
- 和歌
- 八股文
- ウガリット神話
- アンチテーゼ
動詞に対して使う
対句法は動詞に対しても使うことができます。
具体的にいうと以下のように使います。
よく食べて、よく寝て、よく遊ぶ。
上記のように動詞に対して使うことで、調子を整えてリズム感を生み出します。
実際に対句法を使っていない文章と比べるとわかりやすいです。
【代表的な例文】
よく食べて、よく寝て、よく遊ぶ(対句法)
子供はよく食べる
前者の場合、各動詞の音数が同じとなり、リズムがあります。
その一方で後者は、文にリズムがありません。
したがって、文にリズムがほしい時は、動詞に対句法を活用するのがおすすめです。
その結果、印象に残る文が作れるでしょう。
名詞に対して使う
名詞にも対句法を活用することができます。
具体的にいうと以下のように使います。
男は度胸、女は愛嬌。
上記のように2つ以上の名詞を対して取り入れることで、差を際立たせることが可能となります。
実際に対句法を使っていない文章と比べるとわかりやすいです。
【代表的な例文】
男は度胸、女は愛嬌(対句法)
度胸と愛嬌
前者の場合、男と女が対句となり、比較が容易です。
その一方で後者は、異なる意味の単語の羅列となり、比較ができません。
したがって、ギャップを作りたい際や比較したい場合は、2つ以上の名詞を使う対句法を取り入れてみましょう。
その結果、差を際立たせた文となるでしょう。
現代詩
現代詩においても対句法が用いられています。
具体的にいうと以下のような、現代詩です。
【代表的な例文】
雨ニモマケズ、風ニモマケズ。
冒頭の雨ニモマケズ、風ニモマケズの一文は対句法となります。
上記のように、類似する自然現象である雨と風を対にすることで、強い印象を与えています。
また、詩にリズムも感じられる一文です。
したがって、文に強い印象を与えたい場合は対句法を使います。
その結果、対句法とは現代詩の中でも見受けられる鮮やかな表現技法といえます。
平家物語
対句法は鎌倉時代から使用されています。
具体的にいうと以下のような、平家物語の一文です。
かぶらは海に入りければ、扇は空へぞ上がりける。
これは、矢が海に入り、一方、扇は空へと舞い上がったことを表現した文です。
上記の一文は、以下のような3つの対句が存在します。
- かぶら(矢)と扇
- 海と空
- 入りと上がり
このように、多くの対句が用いられています。
したがって、有名な平家物語にも対句法が使われていることがわかるでしょう。
その結果、鎌倉時代から対句の使用がみられることより、対句法の歴史は長いといえます。
和歌
和歌にも対句法が使われています。
具体的にいうと、以下のような百人一首のひとつです。
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂(あふさか)の関。
これは、鎌倉時代に蝉丸が歌った、百人一首の10番目の歌です。
この歌は、あの行く人も帰る人も別れては知るも知らぬも逢坂の関(逢坂山にあった関所)を表現した和歌です。
この和歌の対句は、行くも帰るもとなります。
上記のように、百人一首をはじめとする和歌にも、対句法が用いられています。
その結果、平家物語のように、対句法は鎌倉時代から愛用されていた表現技法といえるでしょう。
八股文
八股文(はっこぶん)は、中国の「科挙」で使われた文体の一種で、対句法を用いています。
なかなか聞きなれない言葉ですよね。
なぜ八股文と呼ばれているのでしょうか。
「股」は、対であることを意味しています。
八股文では全文を八段に分けて書き、起股・虚股・中股・後股と呼ばれる主要な四つの部分を、それぞれ対句で表現する必要がありました。
このような、型にはまった独特な文体であることから称されたようです。
かつて中国の宋代や明代では、官僚選定のために「科挙」という試験制度がありました。
その中で四書五経から出題された章句について、受験者はその意味を八股文の形式で論説したのです。
この回答形式からも、「科挙」の合格難易度が非常に高かった理由が伺えますよね。
ウガリット神話
ウガリット神話に登場する詩では、対句法や韻律が用いられていました。
ウガリットは、紀元前1200年頃まで地中海東岸にあった、古代都市国家です。
その遺跡から発見された粘土板文書に記されていたのが、ウガリット神話の詩です。
対句法が使用されている最古の例と言っていいでしょう。
ウガリットと古代オリエントの知恵文学は、対句法などの表現技法の点で、類似している部分が多くあります。
旧約聖書における「ヨブ記」や「箴言」のほか、外典の「ソロモンの知恵」などの総称が知恵文学です。
耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
表現技法が似通っているのは、各地の賢者が互いに影響を与えたからだと言われています。
日本が縄文時代だった頃、古代の中東の地域ではこのような文学活動が盛んであったことが分かりますね。
アンチテーゼ
アンチテーゼとは、ある理論や主張を否定するために用いられる、反対の理論や主張のことです。
また「修辞学」においては、一般的に「対句法」や「対照法」と訳されます。
言葉を効果的に伝える技術や、言葉の美しい表現技法を研究する学問が「修辞学」です。
対句法と対照法の二つの表現技法は、似ているようで意味が異なります。
【対句法の例】
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に
【対照法の例】
月とスッポン
提灯に釣鐘
このように、似た音数・似た表現の句を並べたものが対句法であり、相反する事物を対照させる技法が対照法です。
では、それを踏まえてアンチテーゼの例を見てみましょう。
【命題】
着物は日本を代表する文化である。
【アンチテーゼ】
着物は日本を代表する文化ではない。なぜなら、日常生活で着物を着る人はほとんどいないからだ。
このように、命題に対する否定的な意見を、対句法や対照法を用いて表現するのがアンチテーゼです。