【2026年度】脱炭素ビルリノベ事業|対象建築物の判定と補助額計算、11月30日締切までの準備手順

その他

事務所ビル、商業施設、学校、ホテル、病院、老人ホームなど、既存の業務用建築物の断熱改修や設備更新を検討している事業者に向けた制度が、環境省の脱炭素ビルリノベ事業です。

正式名称は「令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)」で、公式サイトでは「脱炭素ビルリノベ2026事業」と案内されています。

令和8年度の公募期間は2026年6月4日〜2026年11月30日23:59で、現在も受付中です。ただし、交付決定額の合計が予算額に達した場合は、公募期間内であっても交付申請の受付が終了します。

補助率は設備区分ごとに異なり、断熱窓・断熱材・設計費・トップ性能枠の高効率空調が1/2、高効率空調・制御機能付きLED照明器具・業務用給湯器・BEMSが1/3です。補助金額は1事業あたり上限10億円、下限200万円です。

この記事では、公募要領公式のよくあるご質問よくある不備まとめといった公式資料をもとに、自社の建物が対象になるか、補助額がいくらになるか、締切までに何を準備すべきかを順に判断できるように整理しました。

  1. 脱炭素ビルリノベ2026事業の基本情報
  2. 受付状況と、2026年11月30日の締切から逆算した準備の順番
    1. 現在の受付状況と、期間内でも終了する条件
    2. 締切日から逆算すると、先に着手すべき手続きが決まる
  3. 自社の建物が対象になるか判定する(建物用途・登記の「種類」・事業者区分)
    1. 補助対象になる建物用途と、対象外になる建物用途
    2. 登記事項証明書の「種類」欄で申請できなくなるケース
    3. 補助対象事業者に該当するか
    4. 建物用途が対象でも申請できない2つのケース
  4. 補助額はいくらになるか|設備区分別の補助率と計算例
    1. 設備区分ごとに補助率が違う
    2. 補助額の計算例(想定例)
    3. 下限200万円・上限10億円の判定は「合算後」で行う
  5. 補助対象となる経費・設備と、対象にならない経費
    1. 対象となる設備費・工事費・設計費
    2. 対象にならない主な経費
  6. 令和7年度(脱炭素ビルリノベ2025事業)からの主な変更点
  7. 申請要件(BPI・BEI・BEMS・運用改善)
  8. 申請手順と提出書類(jGrants・GビズID)
    1. 交付申請から補助金受取までの流れ
    2. 交付申請で使う主な書類と、見積りのルール
  9. 公式「よくある不備まとめ」で示された、申請前に確認すべき項目
    1. 登記事項証明書で起こりやすい不備
    2. 見積書で起こりやすい不備
    3. CO2削減量算出シートで起こりやすい不備
  10. 他制度との併用可否と、補助金が入金される時期
    1. 他の補助金・地方財政措置との併用
    2. 補助金の入金時期と資金繰り
    3. 圧縮記帳の取り扱い
  11. 交付決定(採択結果)の公表状況と、過年度の活用事例
    1. 令和8年度の交付決定案件
    2. 過年度事業の活用事例
  12. 交付決定後に必要な手続きと、返還につながる注意点
    1. 中間報告・実績報告・5年間の事業報告
    2. 財産処分の制限と、返還が生じる条件
  13. 脱炭素ビルリノベ2026事業のまとめ

脱炭素ビルリノベ2026事業の基本情報

正式名称令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)
通称脱炭素ビルリノベ事業/脱炭素ビルリノベ2026事業
対象地域全国(国内の既存業務用建築物)
実施機関環境省(執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ〈SII〉)
対象者民間企業、個人事業主(原則、青色申告者)、独立行政法人、地方独立行政法人、国立・公立大学法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、地方公共団体 等
対象建築物事務所等・ホテル等・病院等・百貨店等・学校等・飲食店等・集会所等(図書館/体育館/映画館)の既存建築物
対象経費設備費・工事費・設計費
主な要件改修後の外皮性能BPIが1.0以下/一次エネルギー消費量を用途に応じて30%または40%以上削減/BEMS等によるエネルギー管理
申請期間2026年6月4日(木)〜2026年11月30日(月)23:59(予算額到達時は期間内でも終了)
補助金額上限:1事業あたり10億円/下限:1事業あたり200万円
補助率断熱窓・断熱材・設計費・高効率空調(トップ性能枠):1/2
高効率空調・制御機能付きLED照明器具・業務用給湯器・BEMS:1/3
予算額2026年度 約28億円/2027年度 約48億円/2028年度 約19億円(令和10年度までで95億円)
申請方法jGrantsによる電子申請(GビズIDプライム/メンバーアカウントが必要)
問い合わせ先SII 脱炭素ビルリノベ事業事務局(0120-102-912/平日10:00〜12:00・13:00〜17:00)

出典:脱炭素ビルリノベ2026事業 公募情報令和8年度 公募要領(PDF)

受付状況と、2026年11月30日の締切から逆算した準備の順番

現在の受付状況と、期間内でも終了する条件

令和8年度の公募は2026年6月4日に開始し、締切は2026年11月30日23:59です。公募は随時受付・随時交付決定の方式で運用されています。

交付決定額の合計が予算額に達した場合は、公募期間内であっても交付申請の受付を終了すると公募要領に明記されています。応募状況により予算額を超える見込みとなった場合は、公式サイトで予算額の残りを表示する等の措置が行われます。

年度ごとの予算枠も決まっており、2026年度は約28億円です。各年度の上限額を超えて採択することはできないため、事業計画の年度配分もあわせて検討する必要があります。

締切日から逆算すると、先に着手すべき手続きが決まる

この制度では、締切だけでなく「事業完了日」と「BELS認証の取得期限」が先に決まっている点が特徴です。単年度事業の場合、原則2027年1月31日(日)までに設備の検収と補助対象経費の支払いを完了させる必要があります。

さらに、省エネルギー性能表示(BELS)の認証も、単年度事業なら2027年1月31日まで、複数年度事業なら交付決定から1年以内または最終年度の1月31日のいずれか早い方までに取得しなければなりません。

契約・発注は交付決定日以降でなければ補助対象になりません。交付決定前に発注した経費は対象外となるため、工期は「交付決定日から2027年1月31日まで」で組み立てることになります。

そのため、締切に間に合わせるだけでなく、次の順番で準備を進める必要があります。

  1. GビズIDプライム(メンバー)アカウントを取得する(jGrants申請に必須)
  2. 公式の申請可否チェックシートで対象になるかを確認する
  3. 建築研究所計算支援プログラム(Webプログラム)の標準入力法またはモデル建物法で、改修後のBPI・BEIを試算する
  4. 型番検索で、導入予定製品が補助対象製品として登録されているか確認する
  5. 登記事項証明書など、有効期限のある書類を交付申請時点から6か月以内に収まるよう取得する
  6. 見積書を取得し、jGrantsで交付申請する
  7. 交付決定後に契約・発注し、工事を実施する

GビズIDや各種証明書の取得にかかる日数は公式資料で示されていないため、所管窓口の案内を確認したうえでスケジュールに組み込んでください。

自社の建物が対象になるか判定する(建物用途・登記の「種類」・事業者区分)

補助対象になる建物用途と、対象外になる建物用途

この制度は「業種」ではなく、建築物省エネ法上の「建物用途」で対象かどうかが決まります。製造業の会社でも、工場そのものは対象になりません。

建物用途対象用途の具体例
事務所等事務所、官公署
ホテル等ホテル、旅館
病院等病院、老人ホーム、福祉ホーム
百貨店等百貨店、マーケット
学校等小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、大学、高等専門学校、専修学校、各種学校
飲食店等飲食店、食堂、喫茶店
集会所等(図書館)図書館、博物館
集会所等(体育館)体育館、公会堂、集会場、ボーリング場、劇場、アスレチック場、スケート場、公衆浴場、競馬場・競輪場
集会所等(映画館)映画館、カラオケボックス

一方、次の建築物は補助対象外です。

  • 工場等(工場、畜舎、自動車車庫、自転車駐車場、倉庫、卸売市場、火葬場 等)
  • 住宅(集合住宅〈賃貸・分譲問わず〉、寮、戸建住宅、別荘 等)
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号・第4号に該当する建物、および「性風俗関連特殊営業」を主に営む建築物
  • 新築の建築物(本事業の対象は既存建築物のみ)

サービス付き高齢者向け住宅等の施設は、建築確認申請の建物用途が非住宅の場合に限り申請可能です。複数の用途が混在する建築物は、建物用途ごとにBEIを達成する必要があり、一部の用途だけを申請する場合は建物全体(評価対象外を含む非住宅部分)で20%以上の削減が必要です。

出典:令和8年度 公募要領 別表1 補助対象建築物(PDF)

登記事項証明書の「種類」欄で申請できなくなるケース

建物用途が対象であっても、提出する土地・建物の登記事項証明書の記載内容によって申請が止まることがあります。

SIIが公開している「よくある不備まとめ<交付申請向け>」には、登記事項証明書(土地・建物)の「種類」の欄に「工場、居宅、寄宿舎、共同住宅」のいずれかが記載されている場合には申請できないと明記されています(詳細はSIIへ連絡)。

実際の利用が事務所であっても、登記上の種類が「居宅」や「共同住宅」のまま更新されていない建物は珍しくありません。改修計画を立てる前に、法務局で登記事項証明書を取得して「種類」欄を確認しておくと、後戻りを避けられます。

なお、用途変更を伴う改修の場合は、変更後の主たる用途が補助対象建築物に該当すれば対象になります。その場合、建築確認申請を伴う用途変更なら用途変更の建築確認申請書、伴わないなら変更予定の用途が確認できる書類等の提出が必要です。

出典:よくある不備まとめ<交付申請向け>Ver1.0(PDF)よくあるご質問

補助対象事業者に該当するか

申請できるのは、日本国内で事業を営み、国内の業務用建築物に基準を満たす設備を導入する次の事業者です。

  • 民間企業
  • 個人事業主(原則、青色申告者に限る)
  • 独立行政法人、地方独立行政法人
  • 国立大学法人、公立大学法人、学校法人
  • 社会福祉法人
  • 医療法人
  • 一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人
  • 地方公共団体
  • その他環境大臣の承認を得てSIIが適当と認める者

企業規模による制限はなく、要件を満たしていれば中小企業でも大企業でも対象になります。一方で、所有者に個人が含まれる場合や、法人格のない管理組合が申請する場合は、承認を受けずに申請することができず、事前にSIIを通じた協議が必要です。

建物所有者と設備所有者が異なる場合は、両者による共同申請が原則です。テナントが設備所有者となる場合も、建物所有者とテナントの共同申請になります。ESCO事業者と組む場合はシェアード・セイビングス契約、リース事業者と組む場合はファイナンスリース契約が条件です。

また、テナントビルでは「リーディングテナント行動方針」への賛同登録が求められ、2022年度のCO2排出量が20万t以上の民間企業(多排出企業)には、GXリーグ/GXフューチャー・リーグへの参加や排出削減目標の設定・公表などの追加要件があります。

建物用途が対象でも申請できない2つのケース

公募要領では、次のいずれかに該当する建築物は対象外と定められています。

  • 省エネ適合性判定の義務化開始(2017年4月1日)以降に建てられた建築物で、省エネ判定通知書等により、すでに一次エネルギー消費量が省エネルギー基準から用途に応じて30%または40%以上削減されていることがわかる場合
  • 改修前にすでに『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB OrientedのBELS認証を取得している建築物(本事業の効果によりZEBのランクを上げる場合を除く)

つまり、すでに省エネ性能が高い比較的新しい建物ほど対象から外れやすく、竣工から年数が経ち、外皮性能BPIが1.0を超えている建物ほど活用しやすい制度です。旧耐震基準の建築物については、新耐震基準の耐震性を満たすことも要件になります(補助対象事業と同時に実施する耐震改修で満たす場合は対象)。

補助額はいくらになるか|設備区分別の補助率と計算例

設備区分ごとに補助率が違う

この制度の補助率は「1/2〜1/3」とまとめて表記されることが多いのですが、実際には設備区分ごとに固定されています。どの設備にいくら使うかで補助額が変わるため、区分ごとに分けて計算します。

区分製品区分補助率
設備費・工事費断熱窓1/2
設備費・工事費断熱材1/2
設備費・工事費高効率空調1/3
設備費・工事費制御機能付きLED照明器具1/3
設備費・工事費業務用給湯器1/3
設備費・工事費BEMS1/3
設備費・工事費高効率空調(トップ性能枠)1/2
設計費1/2

トップ性能枠は、電気式パッケージエアコンのうちトップランナー基準の達成率が店舗用111%以上・ビル用109%以上・設備用107%以上で、かつAIを活用した制御システムを導入するものが対象です。AI制御は、外気温・気象情報等の外部データをリアルタイムで取得して自動チューニングを行い、空調のみを制御対象とし、空調機器本体と同一メーカーの組み合わせであることが条件です。

出典:令和8年度 公募要領 8.補助率(16ページ)・別表2(PDF)

補助額の計算例(想定例)

以下は実際の採択事例ではなく、補助率の適用方法を示すための想定例です。

設備区分補助対象経費補助率補助額
断熱窓2,000万円1/21,000万円
高効率空調(通常)3,000万円1/31,000万円
制御機能付きLED照明器具900万円1/3300万円
BEMS600万円1/3200万円
設計費400万円1/2200万円
合計6,900万円2,700万円

この場合、自己負担額は6,900万円 − 2,700万円 = 4,200万円です。仮に空調3,000万円分をトップ性能枠(1/2)に置き換えられれば、空調の補助額は1,500万円となり、合計補助額は3,200万円に増えます。

なお、消費税の取り扱いや端数処理の方法は公式資料で確認できないため、実際の申請額は公募要領および交付申請書の様式にしたがって算出してください。

下限200万円・上限10億円の判定は「合算後」で行う

補助金額は1事業あたり上限10億円、下限200万円です。申請単位は、原則として建築基準法で定める「一の建築物」の単位となります。

たとえば高効率空調300万円(補助額100万円)とBEMS150万円(補助額50万円)だけの改修では、補助額の合計が150万円となり、下限200万円に届かないため申請できません。小規模な設備更新だけを想定している場合は、この下限に届くかを最初に確認しておく必要があります。

逆に、補助金額の合計が10億円を超える申請であっても、10億円を上限に交付決定が行われます。複数棟が渡り廊下でつながっている場合でも、構造上独立し、建物ごとにWebプログラムの計算とBELS認証取得ができるなら、別の建物として個別申請が可能です。

補助対象となる経費・設備と、対象にならない経費

対象となる設備費・工事費・設計費

補助対象製品は、SIIがあらかじめ定めた基準を満たし、補助対象製品として登録・公表している設備に限られます。導入予定の製品は型番検索で確認してください。

  • 建築外皮:断熱窓(ガラス交換・外窓交換〈カバー工法/はつり工法〉・内窓設置)、断熱材
  • 空調設備:電気式パッケージエアコン、ガスヒートポンプエアコン、チリングユニット、吸収式冷凍機、ターボ冷凍機、ルームエアコン
  • 照明設備:制御機能付きLED照明器具(管球のみは対象外)
  • 給湯設備:業務用ヒートポンプ給湯器、潜熱回収型給湯器
  • BEMS:中央監視装置、伝送装置、通信装置、制御配線、制御機器、盤類、計測計量装置 等
  • 工事費:搬入・据付工事、配管工事、ダクト工事、電気配管・配線工事、断熱工事、機器保温塗装工事、基礎工事、場内搬送費、試運転調整費、仮設費、共通費 等
  • 設計費:補助対象製品の導入に係る基本設計・実施設計、省エネルギー性能の表示に係わる費用(評価料金、BELSプレート1枚分の料金)

対象にならない主な経費

交付決定前に契約・発注した経費は対象外です。これに加えて、公募要領では次のような経費が補助対象外として例示されています。

  • 建築工事、躯体工事、省エネルギーに直接的に寄与しない設備工事等
  • 給排水衛生関係(水栓金具等)、冷蔵/冷凍設備(ショーケース等)
  • 内装、家具類(カーテン、ブラインド等を含む)、外装仕上げ材、シャッター、雨戸等
  • 遮熱・断熱塗料、遮熱フィルム(遮熱シートも対象外)
  • 防災設備、防犯設備、昇降機設備(エレベーター、エスカレーター)
  • 再エネによる発電設備(FITによる売電を行うもの)
  • 既存機器等の撤去・移設・処分費、冷媒ガス処理費等
  • 運用に係る経費(電力、通信費、分析費、ソフトウェアライセンス維持費等)
  • オプション機器、保証費、設備に関わる消耗品等

また、中古品は補助対象製品として認められません。増築そのものも対象外で、増築を伴う改修の場合は既存の建物に対する改修部分の費用のみが対象になります。交付申請前に取得したBELS認証の費用も補助対象外です。

令和7年度(脱炭素ビルリノベ2025事業)からの主な変更点

SIIが公開している「過年度との変更点」では、令和8年度の変更として次の3点が示されています。

  1. 設計費が新たに補助対象(補助率1/2)になった。交付決定後に発生する基本設計・実施設計費、BELS認証の取得に必要な費用(評価料金、BELSプレート1枚料金)、ZEB化可能性調査が対象範囲に含まれる。
  2. エネルギーの計測対象範囲が合理化された。延床面積10,000㎡未満の建築物に限り、設備区分ごとの計測は「空調+改修設備のみ」で足りるようになった(従来は改修しない設備も含めてすべて計測が必須)。延床面積10,000㎡以上の建築物は、建物全体および設備区分ごとの計測が必須のまま。
  3. 断熱窓・断熱材の補助が、製品の種別当たりの補助金額×面積という定額補助から、補助対象経費(設備費・工事費)×1/2の定率補助に変更された。

断熱窓・断熱材が定率になったことで、単価の高い高性能製品を選んだ場合の補助額の考え方が変わります。過年度の単価表をもとにした試算は使えないため、必ず令和8年度の資料で計算し直してください。

出典:過年度との変更点(PDF)

申請要件(BPI・BEI・BEMS・運用改善)

改修後に、次の要件をすべて満たす事業が対象です。

  • 外皮性能:改修後の外皮性能BPIが1.0以下になること。現状のBPIがすでに1.0以下の場合、断熱窓・断熱材の導入は必須ではありません。
  • 一次エネルギー消費量:ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等はBEI≦0.7(30%以上削減)、事務所等・学校等はBEI≦0.6(40%以上削減)。
  • 設備の導入:外皮は断熱窓・断熱材のいずれか、一次エネルギー削減は高効率空調・制御機能付きLED照明器具・業務用給湯器のいずれかを導入すること。
  • エネルギー管理:BEMS等を導入し、建物全体のエネルギー使用量(計測・保存データ粒度30分以内)と設備区分ごとの使用量を月単位で取りまとめ、年に1度、5年間報告すること。
  • 運用改善:管理マニュアル等の策定・実施、専門的な事業者と連携した運用改善、建物の利用実態に合わせた機器設定の最適化のいずれかを実施すること。
  • BELS認証:省エネルギー性能評価の認証を補助事業開始後速やかに取得し、完了実績報告時に省エネルギー性能表示と評価書の写しを提出すること。
  • フロン対策:業務用エアコン等の廃棄時はフロン排出抑制法に則った回収、R22等の破壊処理を行うこと。新設する業務用エアコンの冷媒はGWP675以下が推奨されます。
  • JC-STAR:太陽光発電設備・蓄電池設備・出力制御を行うBEMSを導入する場合、事業完了日までに★1以上の適合ラベルを取得すること。

エネルギー計算は建築研究所計算支援プログラム(Webプログラム)で行い、標準入力法(主要室入力法)またはモデル建物法のいずれかを使用します。BEMSがすでに導入済みで本事業の要件をすべて満たしている場合、改めて設置や変更をする必要はありません。

申請手順と提出書類(jGrants・GビズID)

交付申請から補助金受取までの流れ

  1. 申請準備:Webプログラムで改修後の外皮性能BPIやBEIを算出する
  2. 交付申請:GビズID取得後、必要書類を準備しjGrantsへ入力・申請する
  3. 交付決定:SIIが申請書類を審査し、交付決定する(契約・発注は必ず交付決定後)
  4. 中間報告:既存設備の写真等により、SIIが中間検査を実施する
  5. 実績報告:補助事業が完了した後、SIIが定める期日までに完了実績報告を行う
  6. 確定検査・支払い:SIIの確定検査(書類審査・現地調査)を経て額が確定し、補助金が支払われる
  7. 事業報告:事業完了後、定められた期間、計測したエネルギーデータ等をまとめた事業報告書を提出する

申請にはGビズIDプライム(メンバー)アカウントが必須です。また、改修前の直近の年度単位(4月〜3月)のエネルギー使用量(利用明細)を、中間報告時までにSIIへ提出する必要があります。提出が難しい場合は、申請前にSIIへ相談することとされています。

交付申請で使う主な書類と、見積りのルール

各種様式は公募情報ページの「各種資料」から最新版を入手します。順次更新されるため、必ず申請時点の最新版を使用してください。

見積りは、原則として3者以上による価格競争等を実施した結果の最低価格を上限とします。交付申請時は1者からの参考見積りでも認められますが、交付決定後の業者選定時には競争入札または3者以上の見積書の徴取が必要です。例外的に1者見積りで随意契約を行う場合は、あらかじめ理由書を提出してSIIの承認を受けます。

見積依頼先に同一資本関係にある法人が含まれる場合は、同一資本関係にない法人2者以上から見積書を取得する必要があります。メーカーや販売事業者への手形払い・割賦払いは認められません。

公式「よくある不備まとめ」で示された、申請前に確認すべき項目

SIIは交付申請向けに「よくある不備まとめ」を公開し、不備を招く3大要因として「期限切れ」「数値の不一致」「記入・選択漏れ」を挙げています。ここでは、その資料に記載された具体的な不備内容を整理します。

登記事項証明書で起こりやすい不備

  • 会社・法人の登記事項証明書が、発行から6か月を経過している(交付申請時点から6か月以内に発行したものを提出)
  • 土地・建物の登記事項証明書が、発行から6か月を経過している
  • 土地・建物の登記事項証明書の「種類」欄に「工場、居宅、寄宿舎、共同住宅」のいずれかが記載されている(この場合は申請できないため、SIIへ連絡)

法務局の窓口で発行した場合は、登記官印が確認できることも必要です。

見積書で起こりやすい不備

  • 見積番号が未記載(任意の見積番号を記載する)
  • 補助事業名および件名が未記載。補助事業名は「(建築物の名称)の脱炭素ビルリノベ事業」、件名は「(補助対象製品名)の導入」の形式で、申請情報入力シートと一致させる
  • 納期が未記載、またはSIIが指定する事業完了日までに間に合わない日付になっている
  • 見積有効期限が未記載、または交付申請日を含めた日付になっていない
  • 値引きがある場合に、どの費目からの値引きかが判別できない(指定書式ならマイナス表記、自由書式なら補助対象経費と補助対象外経費のどちらからの値引きか判別できる記載にする)

CO2削減量算出シートで起こりやすい不備

  • 補助事業名が、申請情報入力シートで入力した補助事業名と一致していない
  • 延べ面積が、申請情報入力シートおよびWebプログラム算定結果(Webプログラム入力シート)と一致していない
  • 省エネ基準地域区分が、Webプログラム算定結果で入力した地域区分と一致していない

SIIは、不備による審査期間の長期化が数週間〜数か月単位に及ぶ場合があり、その間に導入予定設備が生産終了となるリスクも生じると説明しています。交付決定が遅れれば、そのぶん工事に使える期間が短くなります。事業完了日が原則2027年1月31日と決まっている以上、書類の整合確認は工期の確保に直結します。

出典:よくある不備まとめ<交付申請向け>Ver1.0(PDF)

他制度との併用可否と、補助金が入金される時期

他の補助金・地方財政措置との併用

公式のよくあるご質問では、併用について次のように示されています。

  • 同一製品に対して、本補助金を含めた2つ以上の補助金を併用することはできない
  • 他の国庫補助金への申請自体は可能。ただし本事業の交付決定前に他の国庫補助金の交付が決定した場合は、速やかにSIIへ連絡する。
  • 地方独自の財源(地方財政措置を含む)との併用は原則可能。ただし「脱炭素化事業債(脱炭素化推進事業債)」との併用はできない(国庫補助金等が交付されない地方単独事業を対象とした制度のため)。
  • 税制優遇制度には併用可能なものもある(詳細は税制担当窓口へ)。

自治体の省エネ補助金との併用を検討している場合は、財源が地方単独事業かどうかで結論が変わります。申請前に、自治体側とSIIの双方に確認しておくと安全です。

補助金の入金時期と資金繰り

補助金は工事の前に受け取れるわけではありません。公式FAQでは、支払い時期の目安が次のように示されています。

  • 単年度事業:完了実績報告書の審査完了後、2027年1月末〜3月末までの支払いを予定
  • 複数年度事業(最終年度以外):各年度末までの支払いを予定
  • 複数年度事業(最終年度):完了実績報告書の審査完了後、最終年度の1月末〜3月末までの支払いを予定

つまり単年度事業では、設備の検収と支払いを2027年1月31日までに完了させたうえで、補助金の入金はその後になります。工事代金は一度全額を自己資金または借入で支払う前提で資金計画を立てる必要があります。

複数年度事業では施工会社等への前払いも可能ですが、その支払額について概算払い等で当該年度の補助金交付を受けたい場合は、支払金額に相当する成果品が当該年度内に確認できることが条件です。設備機器や材料の購入のみでは成果品とみなされません。

なお、本事業において改修を行う建築物に抵当権設定を予定している場合は、あらかじめ財産処分の承認を受ける必要があります(根抵当権は認められません)。資金の調達計画は、補助対象部分だけでなく建築工事等を含む全体を申請時点で示すこととされています。

圧縮記帳の取り扱い

本補助金は、所得税法第42条(国庫補助金等の総収入金額不算入)または法人税法第42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)の適用を受ける国庫補助金等に該当するとSIIが案内しています。

ただし、固定資産の取得に充てるための補助金等以外(経費補填の補助金等)を合わせて交付する場合、その部分は税務上の特例の対象になりません。会計処理は税理士・公認会計士・税務署に確認したうえで進めてください。

出典:脱炭素ビルリノベ2026事業 よくあるご質問公募情報(圧縮記帳等についてのお知らせ)

交付決定(採択結果)の公表状況と、過年度の活用事例

令和8年度の交付決定案件

本事業は随時採択で運営されており、交付決定した案件はSIIの交付決定ページで公表されます。

2026年7月27日更新時点で公表されている令和8年度の交付決定案件は、次の1件です。

No.事業名申請者名事業実施場所
1愛知工業大学 自由ヶ丘キャンパスの脱炭素ビルリノベ事業学校法人名古屋電気学園愛知県

公表されているのは事業名・申請者名・事業実施場所のみで、審査内容や補助金額は公開されていません。公募要領では、交付決定後に事業者名や事業概要等をSIIホームページ等で公表することがある(個人・個人事業主を除く)と定められています。

過年度事業の活用事例

SIIは、過年度事業(脱炭素ビルリノベ2024事業)の活用事例を公募情報ページで公開しています。いずれも交付決定時の情報をもとに作成された資料です。

建築物オーナー所在地・用途公表されている内容
特別養護老人ホーム新和苑社会福祉法人緑新会熊本県・老人ホーム1993年竣工/RC造1階/評価対象面積1,741.76㎡/一次エネルギー削減率46%
カリタス女子中学高等学校体育館学校法人カリタス学園神奈川県・体育館1985年竣工/SRC造2階/評価対象面積3,114㎡/一次エネルギー削減率52%

新和苑では、外皮の断熱見直しによる空調負荷軽減とBEMS導入が、カリタス女子中学高等学校体育館では、冷房のないアリーナの断熱強化と冷暖房設備の更新が実施されています。いずれも竣工から30年以上が経過した建物で、築年数の経過した施設ほど削減幅を確保しやすいことが読み取れます。

出典:脱炭素ビルリノベ2026事業 公募情報「本補助金の活用事例」交付決定案件一覧

交付決定後に必要な手続きと、返還につながる注意点

中間報告・実績報告・5年間の事業報告

交付決定を受けた事業では、SIIによる中間検査が実施されます。中間報告時までに、改修前の直近の年度単位(4月〜3月)のエネルギー使用量をSIIへ提出します。

補助事業が完了したら、SIIが定める期日までに完了実績報告を行い、確定検査(書類審査・現地調査)を経て補助金額が確定します。完了実績報告時には、省エネルギー性能表示とその評価書の写しも提出します。

さらに事業完了後は、建物全体および設備区分ごとのエネルギー使用量を月単位で取りまとめ、年に1度、5年間にわたって報告する義務があります。計測データはZEB Platformに指定のCSV形式でアップロードします。改修して終わりではなく、5年間の運用報告まで含めた体制づくりが前提になる制度です。

補助事業に係わる資料(申請書類、SII発行文書、経理に係わる帳簿および全ての証拠書類)は、補助事業の完了の日の属する年度の終了後5年間、いつでも閲覧に供せるよう保存する必要があります。

財産処分の制限と、返還が生じる条件

補助金で取得または効用が増加した財産を、処分制限期間内に処分しようとするときは、事前に処分内容等についてSIIの承認を受ける必要があります。その際、補助金の返還が発生する場合があります。

  • 処分制限期間:導入した機器等の法定耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める年数)の期間
  • 処分の定義:補助金の交付目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、廃棄し、または担保に供すること
  • 第三者認証の結果、一次エネルギー削減率が交付決定時の値を下回った場合は、原則として補助金を受給できない(個別事業の状況に鑑みてSIIが認める場合を除く)
  • 不正受給が認められた場合:交付決定の取消しに加え、受領済みの補助金のうち取消対象額に年10.95%の加算金を加えた額を返還。事業者名および不正の内容が公表されることがある

出典:令和8年度 公募要領(PDF)

脱炭素ビルリノベ2026事業のまとめ

脱炭素ビルリノベ事業(令和8年度)は、既存の業務用建築物の脱炭素改修を、上限10億円・下限200万円の規模で支援する制度です。公募は2026年6月4日〜2026年11月30日23:59で、予算額に達した時点で期間内でも受付が終了します。

申請を検討する際は、次の順に確認すると判断しやすくなります。

  1. 建物用途が別表1の対象用途に該当するか(工場・住宅・風営法該当施設は対象外)
  2. 土地・建物の登記事項証明書の「種類」欄が「工場、居宅、寄宿舎、共同住宅」になっていないか
  3. 2017年4月1日以降の建築でBEI要件をすでに満たしていないか、ZEB系のBELS認証をすでに取得していないか
  4. 設備区分ごとの補助率で計算した補助額の合計が、下限200万円を超えるか
  5. 交付決定日から2027年1月31日(単年度事業の場合)までに工事と支払いを完了できるか
  6. 5年間のエネルギー使用量報告に対応できる体制があるか

対象になりそうであれば、まず公式の申請可否チェックシートで確認し、公募要領よくある不備まとめを読み込むところから始めてください。

制度の詳細は脱炭素ビルリノベ2026事業の公式サイト、公募の詳細はJグランツの公募詳細ページ、事業全体の位置づけは環境省の事業ページで確認できます。個別の判断に迷う場合は、SII 脱炭素ビルリノベ事業事務局(0120-102-912/平日10:00〜12:00・13:00〜17:00)へ相談してください。