建設・IT・ものづくり分野で技術者を採用したい都内中小企業が、奨学金を借りている大学生等の返還負担を軽減できるのが「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」です。
東京都と公益財団法人東京しごと財団が実施しており、企業が負担した金額と同額を東京都が負担して、財団が奨学金貸与団体へ直接支払う仕組みになっています。
令和8年度の企業登録は受付中で、締切は令和8年12月17日(木)17時必着です。ただし、この事業で押さえるべき期限は企業登録の締切だけではありません。
大学生等の側にも別の登録締切(令和9年3月12日17時必着)があり、さらに令和8年度登録企業の採用期限は令和9年4月1日と定められています。この3つがそろわないと助成は受けられません。
この記事では、自社が登録企業の要件を満たすかの判定、4区分ある企業負担額と助成額の計算、3つの期限からの逆算、登録後・採用後に発生する手続きまでを、公式の募集ページと公式FAQの記載にもとづいて整理します。
中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業(令和8年度)の基本情報
| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | 中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業(令和8年度企業登録) |
| 対象都道府県・市区町村 | 東京都(本社または主たる事業所が都内、または大学生等を都内の事業所等で勤務させることを条件に採用する企業) |
| 実施機関 | 公益財団法人東京しごと財団(東京都事業) |
| 対象者 | 建設・IT・ものづくり分野で大学生等の技術者(研究・技術の職業)採用を希望する都内中小企業等(法人・個人事業主) |
| 対象業種(日本標準産業分類) | D 建設業/L 学術研究,専門・技術サービス業のうち74 技術サービス業の7421 建築設計業・7422 測量業/G 情報通信業のうち39 情報サービス業・40 インターネット附随サービス業/E 製造業 |
| 対象経費 | 登録者(奨学金の貸与を受けている大学生等)の奨学金返還費用の一部 |
| 助成額(登録者1人あたり) | 年10万円/年24万円/年50万円/年75万円(大学院卒に適用する場合)のいずれか×最大3年(合計30万円/72万円/150万円/225万円) |
| 補助率 | 企業負担額と同額を東京都が負担(企業と都で2分の1ずつ) |
| 企業登録の受付期間 | 令和8年2月5日(木)~令和8年12月17日(木)17時 ※必着 |
| 大学生等(登録者)の受付期間 | 令和8年4月9日(木)~令和9年3月12日(金)17時 ※必着 |
| 採用期限 | 令和9年4月1日(木)までに入社・雇用契約を開始 |
| 専用枠 | 1年度あたり1社につき3名が上限 |
| 申請方法 | 郵送または電子申請(Jグランツ/GビズIDプライムが必要) |
| 問い合わせ先 | 奨学金返還支援事業事務局 03-6698-5102(平日9時15分~18時)/東京しごと財団 企業支援部雇用環境整備課 採用定着促進支援係 03-5211-1080(平日9時~17時) |
出典:中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業「企業の皆様へ」、東京しごと財団「事業概要」
令和8年度に押さえるべき3つの期限
本事業は企業と大学生等がそれぞれ別に登録する仕組みのため、期限が1つではありません。企業登録だけ間に合っても、学生側の登録や採用日が期限を過ぎると助成は受けられません。
企業登録の締切は令和8年12月17日17時(必着)
令和8年度の登録企業の募集期間は、令和8年2月5日(木)から令和8年12月17日(木)17時までです(東京しごと財団「事業概要」)。
郵送は「必着」であり、消印有効ではありません。電子申請(Jグランツ)を選ぶ場合はGビズIDプライムの取得が前提になりますが、公式サイトには「ID発行が間に合わないことによる申込期日の延長はできかねます」と明記されており、その場合は郵送で申し込むよう案内されています。
大学生等の登録締切は令和9年3月12日17時(必着)
採用したい大学生等の側の登録受付期間は、令和8年4月9日(木)から令和9年3月12日(金)17時までです。企業登録の締切より約3か月遅い設定になっています。
ここが実務上つまずきやすい点で、公式FAQは「企業等から財団へ採用内定報告又は採用報告がなされたとしても、大学生等が未登録の場合には助成を受けられません」と明記しています(公式よくあるご質問)。
採用期限は令和9年4月1日
令和8年度の登録企業については、令和9年4月1日(木)が採用期限です。公式FAQでは、ここでいう採用日は実労働開始日(初出勤日)ではなく「労働者を雇い入れた日(入社日、雇用契約の開始日)」とされています。
令和9年4月2日以降に本事業の専用枠で採用する場合は、あらためて令和9年度の登録申込が必要になります。
自社が登録企業の要件を満たすかを確認する
登録企業の要件は「都内に拠点があること」「対象業種であること」「企業負担金額の負担を確約できること」の3つをすべて満たすことです。業種と職種の判定はとくに細かく決められています。
対象業種は日本標準産業分類の4つの区分に限定される
| 分野 | 業種(日本標準産業分類) |
| 建設 | D 建設業/L 学術研究,専門・技術サービス業のうち74 技術サービス業(他に分類されないもの)の7421 建築設計業または7422 測量業 |
| IT | G 情報通信業のうち39 情報サービス業または40 インターネット附随サービス業 |
| ものづくり | E 製造業 |
「情報通信業なら対象」ではない点に注意が必要です。G 情報通信業のうち対象になるのは39 情報サービス業と40 インターネット附随サービス業だけで、放送業や映像・音声・文字情報制作業は含まれません。建設分野も同様に、技術サービス業のうち対象になるのは7421 建築設計業と7422 測量業に限られます。
複数の事業を営んでいる場合の判定について、公式FAQは「同一の企業等で複数の事業を営まれている場合には『主たる事業』に該当する業種でご判断ください」としています。業種の分類根拠は総務省「日本標準産業分類」(平成25年10月改定、第13回改訂)です。
職種は「02 研究・技術の職業」に限定される
採用する職種は、厚生労働省編職業分類(令和4年改訂、第5回改訂)の「02 研究・技術の職業」である必要があります。営業職や事務職での採用は、業種が対象であっても本事業の対象になりません。
ただし公式FAQには例外の扱いも示されており、対象職種で採用した人を人材育成や研修の目的で一定期間だけ職種外の業務に従事させる場合は助成対象とされています。その場合は、雇用契約書(写し)に対象職種の技術者である旨を記載し、育成計画書にその配置や研修の必要性、対象職種との関連性を詳細に記載する必要があります。
本社が都外でも対象になるケース
対象になるのは、次のいずれかに該当する中小企業等です。
- 本社または主たる事業所が東京都内にある中小企業等
- 大学生等を東京都内の事業所等で勤務させることを条件に採用する中小企業等
本社が都外の企業でも、都内の事業所で勤務させる求人であれば登録できます。この場合、提出する「登録企業の概要」に採用予定者の勤務予定地の事業所所在地を記載することが求められます。
なお公式FAQでは、大企業の子会社やグループ会社であっても、対象となる中小企業等および登録要件を満たしていれば登録可能とされています。自社で独自の奨学金返還支援制度を持っている企業も登録できます。中小企業等の該当判定は中小企業基本法第2条の要件(業種ごとの資本金の額または出資の総額・従業員数)にもとづくため、公式FAQ内の一覧表で自社の該当区分を確認してください。
登録しても助成対象にならない採用パターン
公式サイトおよび公式FAQの記載から、次のケースは助成の対象になりません。
- すでに入社している社員に本事業を適用しようとする場合(採用済の社員は支援対象外)
- パートや嘱託職員としての採用(正規雇用労働者のみが対象)
- 採用する大学生等が専修学校の学生・卒業生である場合(登録できません)
- 他の制度による奨学金の返還免除等をすでに受けている登録者
- 助成金の支給申請時点で、登録企業が都内に事業所をもたなくなっている場合
採用したい相手が「登録者」の要件を満たすかどうかも確認が必要です。対象になるのは、日本学生支援機構の第一種奨学金または第二種奨学金、あるいは代理返還制度を実施している公的機関の貸与型奨学金で財団理事長が認めるものの貸与を受けている人です。第一種と第二種を併用している場合も、助成の上限の範囲内であればいずれも支援対象になります。
企業負担額と助成額の4区分シミュレーション
本事業では、企業が負担した金額と同額を東京都が負担します。企業は登録申込時に負担額の区分を選択し、選択した企業負担金額は登録後の変更が原則できません。採用計画と資金繰りを踏まえて選ぶ必要があります。
4区分の負担額・助成額の早見表
| 区分 | 企業負担額(A) | 東京都の負担額(B) | 登録者1人への助成額(A+B) | 3年間の合計助成額 |
| ア | 年5万円 | 年5万円 | 年10万円 | 30万円 |
| イ | 年12万円 | 年12万円 | 年24万円 | 72万円 |
| ウ | 年25万円 | 年25万円 | 年50万円 | 150万円 |
| エ(大学院卒に適用する場合) | 年37.5万円 | 年37.5万円 | 年75万円 | 225万円 |
企業はア・イ・ウのいずれか1つを選択し(重複選択は不可)、専用枠で採用する登録者が修士相当以上の学位を取得した者である場合に限り、エを任意で追加選択できます。東京都の案内でも助成額は「年10万円×3年」「年24万円×3年」「年50万円×3年」「年75万円×3年(新設)」の4区分として整理されています(Tokyo支援ナビ)。
たとえば区分ウを選び、専用枠3名をすべて採用して3年間在籍した場合の計算例は次のとおりです(想定例)。
- 企業負担額:年25万円×3名×3年=225万円
- 登録者が受け取る助成額:年50万円×3名×3年=450万円
- 企業の支出タイミング:1年在籍後・2年在籍後・3年在籍後の3回に分かれる
上の数値は制度上の区分から計算した想定例であり、実際の採択事例ではありません。登録者を採用しなかった場合、企業の出えん金の支払いは発生しません。
返還残額が助成額を下回るときは千円未満を切り捨てて計算する
登録者が自分で繰上返還を行っていた場合や、既卒者で採用前から返還を進めていた場合には、奨学金の返還残額が助成額を下回ることがあります。この場合、助成額は支給申請日の属する月の前月末時点での奨学金返還残額(利息分を除く)が上限になります。
端数の扱いについて、公式FAQは奨学金返還残額から千円未満を切り捨てて出えん額を計算するとしたうえで、次の例を示しています。
- 申込時に出えん額150万円(年50万円)を選択した企業で、助成対象者の奨学金返還必要額が499,900円の場合
- 千円未満を切り捨てて499,000円とし、その2分の1相当額である249,500円がその年度の企業の出えん額になる
つまり、区分ウを選んでいても実際の企業負担が年25万円を下回るケースがあります。予算計上の際は上限額で見ておき、確定額は財団からの請求で確認する流れになります。
出えん金の税務上の取扱い
公式FAQでは、法人税について「使用人の奨学金の返済に充てるための給付にあたるので、給与として損金算入できるとされています」、所得税について「非課税とされていますが、一定の要件を満たす必要があります」と説明されており、国税庁の質疑応答事例および日本学生支援機構の代理返還制度のページが参考資料として案内されています。
公式FAQ自体が「税法上の取扱いの詳細については、各地域の所轄の税務署に確認してください」としているため、実際の処理は所轄税務署に確認してください。
専用枠の設定と内定者対応で間違えやすいポイント
専用枠を設定すると、枠が埋まるまで本事業を適用する義務が生じる
「専用枠」とは、本事業の奨学金返還支援の対象となることと対象となる採用人数をあらかじめ明示したうえで行う、本事業専用の正規雇用労働者の求人募集のことです。上限は1社1年度あたり3名で、各社の専用枠の人数は求人情報として事業専用ウェブサイトで大学生等に公開されます。
公式FAQは「専用枠での採用を希望する大学生等を採用する場合は、専用枠を満たすまで必ず本事業を適用して採用することが必要です」としています。応募が専用枠の人数を超える場合は、本事業を適用しない採用になる可能性があることをあらかじめ必ず伝達し、適用せずに採用する場合は本人の同意を得る必要があります。
逆に、専用枠を設定しても採用者がいなかった場合は、その後の手続きは必要ありません。
内定者が未登録の場合は採用日より前に登録させる
公式FAQによれば、原則として大学生等は採用選考を受ける前に登録を完了していることが必要ですが、未登録の場合でも採用日より前の募集期間内(令和8年度は令和9年3月12日17時必着)に手続きを行えば登録者となることが可能です。
そのため採用選考の場面では、企業側から大学生等へ次の2点を必ず確認するよう案内されています。
- 本事業に登録しているかどうか
- 本事業の専用枠での採用を希望するかどうか
登録者側の申込はマイページからの新規登録で行い、学歴に関する証明書(在学生は卒業見込証明書または学生証、既卒者は卒業証明書等)と奨学金貸与証明書のPDFをアップロードします。奨学金貸与証明書は発行までに時間がかかることがあるため、内定を出した段階で早めに請求するよう伝えておくと期限に間に合いやすくなります。
登録申込に必要な書類と取得先
提出書類はアからオまでの5点
| 書類 | 内容・取得先 |
| ア 企業登録申込書(様式第1号) | 公式サイトからExcel/PDFでダウンロード。記入例あり。自署欄あり |
| イ 誓約書(様式第2号) | 公式サイトからWord/PDFでダウンロード。記入例あり |
| ウ 法人登記の履歴事項全部証明書 | 発行日から3か月以内の原本。法務局で取得。個人事業主は開業・廃業届出書の写しと住民票記載事項証明書の原本(発行日から3か月以内)で代替 |
| エ 東京都の都税に係る納税証明書 | 申込日時点で納期が確定した直近のものの原本。法人は法人都民税と法人事業税(いずれも都税事務所発行)。個人事業主は個人都民税(区市町村発行)と個人事業税(都税事務所発行) |
| オ 登録企業の概要 | 様式任意。会社案内やパンフレット等。記載必須項目あり(下記参照) |
個人事業主で居住地と事業所地が異なる場合、個人都民税の納税証明書は両方の区市町村分が必要とされています。区市町村と都税事務所の2か所で取得することになるため、この1点だけでも往復の日数を見込んでおく必要があります。
提出書類は返却や送付依頼に一切応じられないと明記されているため、控えを必ず保管してください。
令和7年度登録企業は2点の提出を省略できる
見落とされやすいのが、継続登録する法人向けの省略規定です。公式サイトによれば、令和7年度登録企業であった法人が令和8年度も登録を希望する場合で、令和7年度登録の際に提出した内容に変更が生じていないときに限り、「ウ 法人登記の履歴事項全部証明書」と「オ 登録企業の概要」の提出を省略できます。
省略できるのはこの2点だけで、ア・イ・エは省略できません。とくにエの都税の納税証明書は「申込日時点で納期が確定した直近のもの」が求められるため、毎年あらためて取得する必要があります。
「登録企業の概要」に記載が必要な6項目
オの「登録企業の概要」は様式任意ですが、登録申込日時点の次の内容がすべて記載されている必要があります。
- 企業等の名称
- 事業概要
- 業種
- 代表者氏名
- 事業所所在地(履歴事項全部証明書の登記上の本店所在地と申込書記載の本社または主たる事業所の所在地が異なる場合は両方。本社等が都外の場合は採用予定者の勤務予定地の事業所所在地も記載)
- 常時使用する従業員数(申込書と同一の内容で、申込日時点の人数)
手持ちのパンフレットに従業員数の記載がない場合は、Word等に企業名・所在地・代表者名を記載し、申込書の従業員数と相違ないことを明示して提出するよう案内されています。既存の会社案内をそのまま使えないケースがあるため、書類準備の初期段階で6項目の記載有無を確認しておくと差し戻しを避けられます。
令和8年度の申請手順と締切から逆算した準備
- 公式サイトから令和8年度登録企業募集要項をダウンロードし、業種(日本標準産業分類)と職種(02 研究・技術の職業)、中小企業基本法第2条の要件に自社が該当するか確認する。
- 専用枠の人数(1年度あたり最大3名)と企業負担金額の区分(ア~ウ、大学院卒に適用する場合はエ)を決める。登録後の変更は原則できないため、3年分の支出を見込んで決定する。
- 電子申請を使う場合はGビズIDプライムを取得する。デジタル庁のGビズID運用センターによる審査があり発行に時間がかかるため、募集要項の確認と並行して着手する。間に合わない場合は郵送に切り替える。
- 様式第1号・第2号をダウンロードして記入例を確認しながら作成し、法人登記の履歴事項全部証明書(法務局)と都税の納税証明書(都税事務所・区市町村)を取得する。いずれも発行日や納期の条件があるため、取得時期を締切から逆算する。
- 令和8年12月17日(木)17時までに、郵送(〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3-8-5 住友不動産飯田橋駅前ビル11階 東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 採用定着促進支援担当係 宛)またはJグランツで申し込む。郵送は必着。
- 登録決定後、委託事業者から事業専用ウェブサイトへの掲載準備について連絡があるため、求人情報の記事作成に協力する。あわせて自社サイト等でも本事業のPRを行う。
- 採用選考時に、応募者が本事業に登録済みか、専用枠での採用を希望するかを確認する。未登録の場合は令和9年3月12日17時までに登録するよう伝える。
- 令和9年4月1日までに技術者として入社・雇用契約を開始する。
公式サイトは各書類の取得に必要な日数までは示していないため、法務局や都税事務所での取得日数は自社の所在地の窓口で確認してください。GビズIDプライムについては公式サイトが「余裕をもってご準備ください」と案内しており、締切間際の着手は郵送への切り替えを前提にする必要があります。
登録後・採用後に必要な手続きと出えん金の支払い
本事業は登録して終わりではなく、採用後にも報告義務と支払いが発生します。令和8年4月2日以降に採用する場合の様式も公式サイトに用意されています。
採用日から原則1か月以内に登録者と企業の双方が報告する
助成金の支給要件として、公式FAQは「採用日から原則1か月以内に登録者が財団へ就職状況報告を行うとともに、採用企業も財団へ報告を行い、財団においていずれも受理されていること」を挙げています。企業側と本人側の両方が必要で、片方だけでは要件を満たしません。
企業が使用する主な様式は次のとおりです。
| 場面 | 様式 |
| 登録申込内容に変更が生じたとき | 企業登録変更届出書(様式第3号) |
| 登録後に求人情報を取り下げるとき | 取下げ申出書(様式第4号) |
| 内定時・採用時の報告(令和8年4月2日以降の採用) | 内定/採用報告書(様式第5号) |
| 採用時の報告(令和8年4月2日以降の採用) | 育成計画書(様式第6号) |
助成金が支給されるための要件
公式FAQは「登録によって助成金の支給が確約されるものではありません」と明記しており、支給には次のような要件を満たす必要があるとしています。
- 大学等の卒業・修了後、令和9年4月1日までに登録企業の専用枠で採用された技術者であること
- 1回目の支給申請は採用日から継続して1年間、2回目は2年間、3回目は3年間在籍していること
- 各支給申請日時点で奨学金の延滞金がなく、返還期限猶予中でないこと
- 2回目の申請には1回目の助成金を、3回目の申請には2回目の助成金を受給していること
- 支給申請日の前月末時点で奨学金返還残額(利息分を除く)があること
支給の流れは、登録者本人が財団へ支給申請 → 財団が審査して停止条件付支給決定を通知 → 財団が登録企業へ出えん金の支払いを請求 → 入金確認後に財団が助成金の額を確定し、代理返還制度を活用して奨学金貸与団体へ支出、という順序です。企業が本人に現金を渡したり立て替えたりする必要はありません。
都内に事業所がなくなった場合は助成対象外になる
公式FAQは「登録者が助成金を支給申請する時点で登録企業が都内に事業所をもたなくなったときは、助成対象外となります」としています。3年間にわたる制度であるため、都外への移転や事業所の統廃合を検討している場合は、この点を踏まえて区分や専用枠の設定を判断する必要があります。
東京都が公表している登録企業の活用事例
事業専用ウェブサイトの事例紹介では、登録企業が選択した区分と専用枠の人数が公開されています。採択事例や採択結果ではなく、登録企業へのインタビュー形式の活用事例として掲載されているものです。
| 分野 | 本社/従業員規模 | 選択した助成額(うち企業負担額) | 専用枠 |
| 製造業(建築資材メーカー) | 江戸川区/200~300人 | 年24万円(年12万円)×3年 | 1年度あたり2名 |
| 情報サービス業(独立系IT企業) | 立川市/100~200人 | 年10万円(年5万円)×3年 | 1年度あたり3名 |
| 製造業(研究開発型) | 中央区/300~400人 | 年50万円(年25万円)×3年 | 1年度あたり3名 |
| 建設業(総合建設会社) | 墨田区/100~200人 | 年50万円(年25万円)×3年 | 1年度あたり3名 |
出典:中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業「事例紹介」(企業名は非公表)
従業員100人台の企業が専用枠3名・年50万円の区分を選んでいる例もあれば、200~300人規模で専用枠2名・年24万円の区分を選んでいる例もあります。企業規模と区分の選択は連動していないため、自社の採用計画と3年分の支出見込みから判断することになります。
なお、これらは登録企業自身が語った内容の紹介であり、選択した区分と採用結果の因果関係を示すものではありません。
問い合わせ先と確認すべき公式資料
- 中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業事務局:03-6698-5102(月~金曜日 9時15分~18時、土日祝・年末年始を除く)/事業説明の申込も受付
- 公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 採用定着促進支援係:03-5211-1080(平日9時~17時、12時~13時を除く)
- 事業専用ウェブサイト「企業の皆様へ」:令和8年度登録企業募集要項、様式第1号~第6号、記入例
- 公式よくあるご質問:中小企業基本法第2条の要件一覧、専用枠、助成要件、出えん金の税務上の取扱い
- 東京しごと財団「事業概要」:企業・登録者それぞれの募集期間、募集チラシ
- Jグランツの公募詳細ページ:電子申請の受付、操作マニュアル
まとめ
中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業は、建設・IT・ものづくり分野の都内中小企業が、技術者として採用した大学生等の奨学金返還を東京都と折半で支援できる制度です。令和8年度の企業登録は令和8年12月17日(木)17時必着で受付中です。
判断のポイントは、業種が日本標準産業分類の該当区分(D建設業、L74のうち7421・7422、G39・G40、E製造業)に入るか、職種が「02 研究・技術の職業」か、そして企業負担額の区分を3年分の支出として確約できるかの3点です。
登録後は、大学生等側の登録締切(令和9年3月12日17時)と採用期限(令和9年4月1日)、採用日から原則1か月以内の報告という3つの期限が続きます。内定を出した相手が未登録のままだと助成を受けられないため、選考の段階で登録状況を確認する運用を決めておくことが実務上の要になります。
最新の要件・様式・期限は、必ず事業専用ウェブサイトの「企業の皆様へ」と公式よくあるご質問で確認してください。
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