東京都の中小企業向け奨学金返還支援事業とは?対象要件と申請方法を徹底解説

東京都内で建設・IT・ものづくり分野の技術者採用に取り組む中小企業にとって、若手人材の確保と定着は大きな経営課題です。

こうした課題を解決する制度として、東京都と公益財団法人東京しごと財団が実施する「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」が注目を集めています。

本事業を活用すると、技術者として採用した奨学金貸与中の大学生等が1年以上継続して在籍した場合、企業負担額と同額を東京しごと財団が助成し、最大3年間で合計150万円(大学院卒は225万円)の支援を受けられます

令和8年度の登録申込受付期間は令和8年2月5日から12月17日17時までとなっており、電子申請システム「Jグランツ」または郵送で申し込むことが可能です。

この記事では、奨学金返還支援事業の対象要件、助成額、申請手順、申請時の注意点までをわかりやすく解説します。

  1. 奨学金返還支援事業の基本情報
    1. 補助金・助成金の正式名称
    2. 対象都道府県・市区町村
    3. 実施機関
    4. 対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
    5. 対象業種
    6. 対象経費
    7. その他要件
    8. 補助対象外となるもの
    9. 申請期間
    10. 上限金額・助成額
    11. 補助率
    12. 問い合わせ先
    13. 公式公募ページと確認すべきこと
  2. 奨学金返還支援事業を対象者が活用すべき理由(メリット)
  3. 奨学金返還支援事業を申請すべき人とそうでない人の特徴
    1. 申請すべき人
    2. 見送ったほうが良い人の特徴
  4. その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
    1. 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
    2. ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
    3. 中小企業省力化投資補助金
    4. 小規模事業者持続化補助金
  5. 奨学金返還支援事業の申請に必要なもの
    1. 申請に必要な書類一覧と取得方法
    2. 記載例はどこで確認できるか
  6. 奨学金返還支援事業の採択率を上げる事業計画書の作り方
    1. 市場性を具体的に書く
    2. 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
    3. この制度を利用する必要性・重要性を記載
    4. 実行体制を明記する
  7. 奨学金返還支援事業の申請手順
  8. 奨学金返還支援事業を自社で申請する際の注意点
  9. 自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
    1. 制度選定の精度が上がる
    2. 事業計画の質が上がる
    3. 採択後の実務まで見据えられる
  10. 奨学金返還支援事業を不正受給するとどうなるのか
    1. 助成決定が取り消された場合に生じる影響
    2. 制度の適正な運用を守るための情報提供窓口
  11. 奨学金返還支援事業のまとめ

奨学金返還支援事業の基本情報

項目内容
正式名称中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業(令和8年度企業登録)
対象都道府県・市区町村東京都(本社または主たる事業所が都内、または大学生等を都内事業所で勤務させる企業)
実施機関公益財団法人東京しごと財団(東京都事業)
対象者建設・IT・ものづくり分野で技術者採用を希望する都内中小企業等(法人・個人事業主)
対象業種建設業、情報通信業(情報サービス業・インターネット附随サービス業)、製造業
対象経費技術者として採用した奨学金貸与大学生等への奨学金返還費用の一部
その他要件技術者として正規雇用し1年以上継続在籍させること(1年度1社につき登録者3名まで)
補助対象外となるもの技術者以外の職種での採用、他制度で返還免除等を受けている登録者
申請期間登録申込受付期間:令和8年2月5日~12月17日17時必着
上限金額・助成額登録者1人当たり年額最大50万円(大学院卒75万円)×3年、合計最大150万円(大学院卒225万円)
補助率企業負担額(年5万円・12万円・25万円等から選択)と同額を財団が負担
問い合わせ先公益財団法人東京しごと財団 企業支援部雇用環境整備課 採用定着促進支援係(TEL 03-5211-1080)

補助金・助成金の正式名称

本制度の正式名称は「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」です。

東京都が実施主体となり、公益財団法人東京しごと財団が運営を担っています。

令和8年度は「令和8年度企業登録」として登録企業の募集が行われています

対象都道府県・市区町村

本事業の対象地域は東京都内です。

本社または主たる事業所が都内にある中小企業等に加え、大学生等を都内の事業所等で勤務させることを条件に採用する企業も対象となります。

本社が都外にある場合でも、採用予定の技術者を都内の事業所で勤務させるのであれば申込みが可能です

実施機関

実施機関は公益財団法人東京しごと財団です。

東京都からの出えん金と企業からの負担金を財団が管理し、奨学金貸与団体へ返還費用の一部を直接支払う仕組みになっています。

企業が奨学金返還額を個人に立て替える必要がなく、財団が貸与団体へ直接支払う点が本事業の大きな特徴です

対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)

対象となるのは、建設・IT・ものづくり分野で技術者の採用を希望する都内中小企業等です。

法人だけでなく個人事業主も対象に含まれます。

採用予定の大学生等を技術者(研究・技術の職業)として正規雇用し、1年以上継続して在籍させることが条件になります

対象業種

対象業種は日本標準産業分類に基づき、建設業、情報通信業、製造業の3分野に限定されています。

建設分野では建設業のほか、建築設計業や測量業を含む技術サービス業も対象です。

IT分野は情報サービス業またはインターネット附随サービス業に限られる点に注意が必要です

対象経費

対象経費は、技術者として採用した奨学金貸与中の大学生等に対する奨学金返還費用の一部です。

企業が負担する金額と同額を東京しごと財団が上乗せして助成する仕組みです。

採用後1年、2年、3年と継続して在籍するたびに、企業は選択した負担金額を財団へ支払う必要があります

その他要件

登録企業として認められるためには、大学生等を技術者(研究・技術の職業)として正規雇用する必要があります。

1年度あたり1社につき登録できる人数は3名までとなっています。

登録者を採用しなかった場合は、企業の金銭的負担は一切発生しません

補助対象外となるもの

技術者以外の職種で大学生等を採用する場合は、本事業の対象になりません。

すでに他の制度で奨学金の返還免除等を受けている登録者も対象外です。

建設・IT・ものづくり以外の業種で採用する場合も助成の対象とならないため注意が必要です

申請期間

令和8年度の登録申込受付期間は、令和8年2月5日から12月17日17時までです。

郵送の場合は必着となっており、期日を過ぎると受け付けてもらえません。

電子申請の場合はGビズIDプライムの取得に審査で時間がかかるため、早めの準備が推奨されています

上限金額・助成額

助成額は企業が選択する負担金額に応じて3段階(大学院卒はさらに1段階追加)に分かれています。

年額5万円を選択した場合は登録者1人当たり年間10万円、年額25万円を選択した場合は年間50万円の助成となります。

最大3年間で合計150万円、大学院卒を対象とする最上位区分を選択すれば合計225万円の助成を受けられます

補助率

本事業の補助率は、企業が負担した金額と全く同額を財団が上乗せする「1対1」の仕組みです。

企業は登録申込時にア・イ・ウの3区分から負担額を選択します。

大学院卒の採用者に限り、エの区分を追加で選択できる点も見逃せません

問い合わせ先

本事業に関する問い合わせ先は、公益財団法人東京しごと財団企業支援部雇用環境整備課採用定着促進支援係です。

電話番号は03-5211-1080です。

制度の詳細や申込書類については、事業専用ウェブサイトからも確認できます

公式公募ページと確認すべきこと

本事業の詳細は、Jグランツの公募詳細ページで確認できます。

あわせて、中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業の公式サイトでは、登録企業募集要項や各種様式を入手できます。

申込前には、必ず最新の登録企業募集要項をダウンロードし、必要書類に不備がないか確認することが重要です

奨学金返還支援事業を対象者が活用すべき理由(メリット)

奨学金返還支援事業を活用する最大の理由は、若手技術者の採用コストを抑えながら定着率を高められる点にあります。

奨学金の返還負担が軽減されることで、対象となる大学生等にとって入社の大きな決め手になります。

企業側も採用した技術者が1年以上定着することを前提とした支援であるため、早期離職の抑制につながります。

建設・IT・ものづくりの技術系人材は採用競争が激しい分野であり、他社との差別化材料として本事業を打ち出せます。

都内中小企業であれば業種の専門性を問わず活用でき、初めて奨学金返還支援を導入する企業でも参加しやすい制度です。

奨学金返還支援事業を申請すべき人とそうでない人の特徴

  • 申請すべき人
  • 見送ったほうが良い人の特徴

申請すべき人

  • 建設・IT・ものづくり分野で技術者採用を計画している都内中小企業
  • 若手人材の定着率向上に課題を感じている企業
  • 奨学金を抱える大学生等の採用にハードルを感じている企業
  • 1年以上安定して技術者を雇用できる体制が整っている企業

見送ったほうが良い人の特徴

  • 建設・IT・ものづくり以外の業種で人材を採用する予定の企業
  • 技術者以外の職種での採用を検討している企業
  • 1年未満の短期雇用を前提としている企業
  • GビズIDの取得や必要書類の準備に時間を割けない企業

その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例

  • 新事業進出補助金
  • ものづくり補助金
  • 中小企業省力化投資補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)

新事業進出補助金は、新たな市場・事業への進出に伴う設備投資や販路開拓を支援する制度です。

技術者採用と合わせて新規事業へ挑戦したい企業にとって、あわせて検討する価値がある補助金だといえます

ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)

ものづくり補助金は、中小企業が行う革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援します。

製造業の技術者を新たに迎え入れる企業であれば、採用後の設備投資支援策としても相性が良い制度です

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消に向けた省力化機器の導入を後押しする制度です。

人材確保が難しい分野では、採用支援と省力化投資を組み合わせることで経営の安定化を図れます

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者向けの補助金です。

採用した技術者の活躍の場を広げるための販促活動にも活用しやすい制度といえます

奨学金返還支援事業の申請に必要なもの

  • 申請に必要な書類一覧と取得方法
  • 記載例はどこで確認できるか

申請に必要な書類一覧と取得方法

登録申込には、企業登録申込書や誓約書など複数の書類の提出が必要です。

具体的には、企業登録申込書(様式第1号)、誓約書(様式第2号)、法人登記の履歴事項全部証明書、都税の納税証明書、登録企業の概要資料の5点をそろえる必要があります。

個人事業主の場合は、履歴事項全部証明書の代わりに開業届出書の写しと住民票記載事項証明書が必要になります。

これらの様式はすべて事業専用ウェブサイトからダウンロードでき、法人登記や納税証明書は法務局や都税事務所で取得できます

記載例はどこで確認できるか

各様式には記載例が用意されており、中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業の公式サイトからPDF形式で確認できます。

記載例を参考にすることで、申込書類の不備による差し戻しを防ぎやすくなります

奨学金返還支援事業の採択率を上げる事業計画書の作り方

  • 市場性を具体的に書く
  • 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
  • この制度を利用する必要性・重要性を記載
  • 実行体制を明記する

市場性を具体的に書く

育成計画書や登録企業の概要資料には、自社が事業を展開する市場の状況を具体的に記載することが望まれます。

建設・IT・ものづくりのどの分野でどのような需要があるのかを数値やデータを交えて示すと、担当者に事業の実態が伝わりやすくなります

差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載

自社ならではの技術力や取引実績など、他社との違いを明確に打ち出すことが大切です。

差別化ポイントを明示することで、技術者にとっても入社後のキャリア形成をイメージしやすくなります

この制度を利用する必要性・重要性を記載

なぜ奨学金返還支援事業を利用する必要があるのか、自社の採用課題と結び付けて説明することが重要です。

人材確保が経営上の重要課題であることを具体的なエピソードとともに記載すると、育成計画書全体の説得力が高まります

実行体制を明記する

採用した技術者をどのような体制で育成し、定着させていくのかを育成計画書に明記する必要があります。

指導担当者や研修スケジュールなど実行体制を具体的に記載することで、1年以上の継続雇用という条件を満たせる見込みが伝わります

奨学金返還支援事業の申請手順

  1. 建設・IT・ものづくり分野で技術者採用を計画し、募集要項で対象要件を確認します。
  2. GビズIDプライムアカウントを取得する場合は、審査期間を考慮して早めに申請します。
  3. 企業登録申込書、誓約書、法人登記の履歴事項全部証明書などの必要書類を準備します。
  4. 電子申請システム「Jグランツ」または郵送により、登録申込期間内(令和8年12月17日17時必着)に申し込みます。
  5. 登録完了後、対象となる大学生等を技術者として正規雇用し、1年以上継続して雇用します。
  6. 1年、2年、3年の在籍が確認できた時点で、選択した企業負担金額を東京しごと財団へ支払います。

奨学金返還支援事業を自社で申請する際の注意点

登録申込書の記載内容と提出書類の内容に相違がないよう、あらかじめ社内で二重チェックする体制を整えておくことが望まれます。

GビズIDプライムの発行には審査で相応の時間がかかるため、申込締切の直前に慌てて準備を始めるのは避けるべきです。

企業負担金額は登録後の変更が原則できないため、自社の採用計画や資金繰りを踏まえたうえで区分を選択する必要があります。

技術者として採用した登録者が1年未満で離職した場合は助成を受けられなくなるため、定着支援の仕組みもあわせて検討しておくと安心です。

自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ

  • 制度選定の精度が上がる
  • 事業計画の質が上がる
  • 採択後の実務まで見据えられる

制度選定の精度が上がる

社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家に相談すると、自社の採用課題に合った制度を的確に選び出してもらえます。

複数の助成金・補助金を組み合わせて活用できるケースもあるため、専門家の視点は制度選定の精度を高めるうえで役立ちます

事業計画の質が上がる

専門家のサポートを受けることで、育成計画書や登録企業の概要資料の内容をより具体的で説得力のあるものに仕上げられます。

第三者の視点でチェックしてもらうことで、書類の不備や記載漏れを未然に防ぎやすくなります

採択後の実務まで見据えられる

登録後の出えん金の支払いスケジュールや、育成計画の実行状況の報告など、実務面での対応も専門家に相談しておくと安心です。

専門家に継続的に伴走してもらうことで、1年ごとに発生する手続きをスムーズに進められます

奨学金返還支援事業を不正受給するとどうなるのか

  • 助成決定が取り消された場合に生じる影響
  • 制度の適正な運用を守るための情報提供窓口

助成決定が取り消された場合に生じる影響

虚偽の申請内容や登録者の在籍実態を偽るなど不正な行為が判明した場合、助成決定が取り消され、すでに支払われた助成金の返還を求められることがあります。

悪質なケースでは、事業者名の公表や関係機関への報告など、企業の信用に関わる対応が取られる可能性があります

事業を所管する東京都および公益財団法人東京しごと財団は、こうした不正受給の防止に向けた審査・確認を行っています。

制度の適正な運用を守るための情報提供窓口

不正受給が疑われる事案を把握した場合には、事業を所管する東京しごと財団や東京都の窓口へ情報提供を行うことができます。

制度の信頼性を守るためにも、疑わしい事案があれば早めに問い合わせ窓口へ相談することが推奨されます

奨学金返還支援事業のまとめ

中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業は、建設・IT・ものづくり分野の技術者採用に取り組む都内中小企業にとって、採用コストの負担を軽減できる心強い制度です。

登録申込受付期間は令和8年12月17日17時までとなっており、申込を検討している企業は早めの準備が欠かせません。

制度の詳細や最新情報は、Jグランツの公募詳細ページおよび中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業の公式サイトで必ず確認してください。

本記事を参考に、自社の採用戦略の一つとして奨学金返還支援事業の活用を検討してみてはいかがでしょうか。