【明治までの書き言葉】文語体の意味・使い方・口語体(話し言葉)との違い

文語体

「文語体ってなんだろう?」

「書き言葉のことかな?」

このように疑問に思う人もいるハズ。

結論から言うと、文語体は現代の書き言葉ではありません。

明治までは文語体が書き言葉だったのですが、言文一致運動などを経て『口語体』が書き言葉になりました。

詳しくは後述しますが、文語体は趣を感じさせる『風流な文章』であると同時に、読むのが難解な『特殊文章』だったからです。

そういった事情もあり当時は文章に文語体を使うと、いろいろな人から反発を受けたようですね。

しかしそうなると「そんなにわかりにくい文章だったのかな? 文語体ってどんな文章なんだろう?」と気になるかもしれません。

そこでこの記事では文語体の意味・例文・使われなくなった歴史的背景・口語体との違いを解説します。

文語体の意味|明治時代までの書き言葉でした

文語体とは何かを3つに分けて説明します。

  1. 文語体の意味
  2. 文語体が使われている作品
  3. 文語体とは書き言葉のこと?

文語体の意味

文語体とは、明治まで使われていた書き言葉のことです。

デジタル大辞泉(小学館)では以下のように述べられています。

文章を書くときに用いられる、日常の話し言葉とは異なった独自の言葉。特に、平安時代語を基礎にして独特の発達をとげた書き言葉をいう。

goo辞書 | 文語の解説(最終閲覧日2021年9月27日)

つまり、話し言葉と違う独特な言葉ですね。

具体的には以下のような文章を言います。

廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火ともしびうつる三階の騷ぎも手に取る如く

樋口一葉|たけくらべ(2021年10月2日)

現代の言葉とはまったく違っていますね。

そして、意味もよくわかりません。

このような書き言葉が文語体です。

なお、この文章は以下のような意味になります。

『回っていけば大門の見返り柳までは長いけれど、お齒ぐろ溝のあかりが映る三階の騒ぎは手に取るようにわかる』

やはり、こちらの方がわかりやすいですよね。

そのため小説・教科書・ライトノベルなどジャンル問わず、現在の文章は口語体で書かれるのが一般的です。

文語体が使われている作品

一例ですが、文語体の使われている作品を紹介します。

【文語体が使われている作品一例】

作品名作者
たけくらべ樋口一葉
舞姫森鴎外
五重塔幸田露伴
薤露行夏目漱石
破戒島崎藤村
2021年9月28日時点

どれも有名な作品です。

一度は読んだことのある方もいると思います。

文語体の作品は、理解が難しいです。

しかし、文語体でしか表現できない雰囲気があります。

例えば、『舞姫』の一文を見てみましょう。

中等室の卓つくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきも徒いたづらなり

森鴎外|舞姫(2021年10月2日)

このように、文語体は非常に趣のある文章です。

文語体の作品は日本語の美しさを感じることができます。

文語体とは書き言葉のこと?

文語体は書き言葉ではありません。(厳密に言うと、明治頃までは文語体が書き言葉でした)

現代の書き言葉は口語体と言います。

そのため文語体は現在、ほとんど使われていません。

しかし、その名残は多く見受けられます。

文化庁の国語分科会では以下のように述べられています。

公用文は明治以降、文語体で書かれてきたため、今もその名残が散見される。「~のごとく」「~しつつも」「~とみなし」などは、文語的言い回しであり、堅苦しい印象になる。

文化庁 | 「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)(最終閲覧日2021年9月28日)

その他にも以下のような文語表現が残っています。

  • あらゆる
  • すべからく
  • いわゆる
  • 願わくば

このように文語体の名残は、日常生活に多く存在しています。

口語体の詳細に関しては後述しますね。

文語体の文体が文章に使われなくなった理由

文語体が使われなくなった歴史的背景は以下の2つです。

  1. 公用文の改善
  2. 言文一致運動

公用文の改善

元々、公用文には文語体が使われていました

しかし上述しましたように文語体はわかりにくいですよね。

そのため普段の話し言葉と同じような文章にしようという風潮が出現しました。

その結果、昭和27年には内閣官房長官が『公用文改善の趣旨徹底について』の通達を行いました。

具体的には以下のように公表しています。

特殊なことばを用いたり,かたくるしいことばを用いることをやめて,日常一般に使われているやさしいことばを用いる。

公用文改善の趣旨徹底について | 第1 用語用字について 1 用語について(最終閲覧日2021年9月28日)

この文書の発行によって、難しい漢字や歴史的仮名遣いは公用文で使われなくなりました。

そして、一般市民の間でも文語体は次第に活用されなくなっていったのです。

言文一致運動

言文一致運動とは、書き言葉を話し言葉に近づけようとする運動です。

書き言葉である文語体は、平安時代頃からほぼ同じ型を保っています。

一方で、話し言葉は様々な影響を受けながら変わっていきました。

そうすると、書き言葉と話し言葉はどんどん乖離していきます。

この「書き言葉と話し言葉の差を無くそう」というのが言文一致運動です。

この考えに賛同した多くの文学者は、自分の作品に話し言葉を使いました。

例えば二葉亭四迷は、以下のような文章を発表したのです。

神田見附かんだみつけの内より、塗渡とわたる蟻あり、散る蜘蛛くもの子とうようよぞよぞよ沸出わきいでて来るのは、孰いずれも顋おとがいを気にし給たまう方々

二葉亭四迷 |浮雲(2021年10月3日)

この文章は、『浮雲』という作品の一部です。
  
現在の書き言葉に近い文章となっていますね。

このように多くの文学者が作品を発表することで、言文一致が広まっていったのです。

現代版文語体(書き言葉)の書き方を例文で解説

現代版文語体の書き方を6つ例文で解説します。

  1. 『すること・という』のような冗長的な表現は避ける
  2. 文章は端的に書く
  3. 『もの・こと』のような無駄な表現は省く
  4. 文章がねじれていないかを確認する
  5. こそあど言葉は極力使わない
  6. 読者が必要とする情報を必ず書く

『すること・という』のような冗長的な表現は避ける

わかりやすい文章にするためには、冗長的な表現は避けましょう。

冗長的とはむだが多いようすのこと。

例えば以下のような文章があります。

A:この文章は明日までに作成することができます。
B:この文章は明日までに作成できます。

AとBではどちらがわかりやいでしょうか。

Bの方がすっきりとわかりやすい文章ですね。

Aは『すること』という冗長的な表現を使用しました。

そのため、まわりくどい印象になっています。

シンプルな文章のためには、『すること・という』表現は避けましょう。

文章は端的に書く

文章は端的に書くことが重要です。

なぜなら、長い文章は多くの人に嫌がられるからです。

そして、何が言いたいのかわからなくもなってしまいます。

以下のような例文を見てみましょう。

文語体は、平安時代の貴族が使っていた話し言葉を元に形成され明治までは公文書などにも使われていた書き言葉であり、公用文の改善や言文一致運動によって、現在の書き言葉に近い表現となり、日本の教科書も文語体から全文口語にかわっていった。

何が言いたいのか良くわからない文章だと思いませんか?

このように、長い文章は読者が「読みたくない」と感じてしまいます。

せっかく書いた文章が読まれないのは、悲しいですね。

したがって、文章は端的に書きましょう。

『もの・こと』のような無駄な表現は省く

シンプルな文章にするためには、無駄な表現は極力省くべきです。

『もの・こと』を使うと、何が言いたいのかわからない文章になってしまいます。

例えば、以下のような例文です。

A:文語体は現在の日常生活で使うことはありません
B:文語体は現在の日常生活で使われていません。

Bの方がすっきりとした印象の文章ですよね。

このように無駄な表現を省くことで、わかりやすい文章になります。

『もの・こと』を使った方がわかりやすい場合

しかしながら、『もの・こと』を使った方がわかりやすい場合もあります。

以下のような例文です。

A:文語体は平安時代から変化がないと考えることもできる。
B:文語体は平安時代から変化がないと考える。

Bの文章は、どのような意味なのか少し考えてしまう表現です。

Aのように『もの・こと』をあえて使うこともあり得ます。

文章によって臨機応変に対応できるようになりましょう。

文章がねじれていないかを確認する

文章がねじれていないか確認することも大切です。

文章のねじれとは、主語と述語がずれてしまっていること。

主語と述語がずれてしまうと、意味のわからない文章になってしまいます。

以下のような例文で説明します。

・文語体は、平安時代の貴族の言葉を使った言文一致運動です。

この文章はねじれています。

主語である文語体と、述語である言文一致運動が繋がっていませんね。

意味のわからない文章は、読者に読まれません。

文章を書いた際は、文章のねじれがないか必ず確認しましょう。

なお、先ほどの例文は以下のような表現が正しいです。

・文語体は平安時代の貴族の言葉を使った形式です。言文一致運動によって使われなくなりました。

2つに分けることで、よりわかりやすくなりました。

このようなわかりやすい文章を意識しましょう。

こそあど言葉は極力使わない

文章を書くときは、こそあど言葉は極力使わないようにしましょう。

こそあど言葉とは『これ』『それ』『あれ』『どれ』などの指示語を指します。

こそあど言葉を使わない方がよい理由は、読者に伝わりにくいからです。

例文を見てみましょう。

文語体は明治頃まで使われていた書き言葉です。
それは言文一致運動によって使われなくなりました。

この場合は『それ』がことあど言葉になります。

では、『それ』は何を指しているのでしょうか。

この場合の『それ』は『文語体』ですよね。

探し方は、文章を読み返すことです。

この文章を読み返すことが、手間と感じる方もいるでしょう。

「よくわからないな」そう思い、読むのを辞めてしまう読者もいます。

そうならないために極力使うのを避るべきです。

しかしそうはいっても、絶対に使ってはいけない訳ではありません。

先ほどの例文を、こそあど言葉を使わずに表現してみます。

文語体は明治頃まで使われていた書き言葉です。
文語体は言文一致運動によって使われなくなりました。

少ししつこい印象になってしまいますね。

この場合は、こそあど言葉をあえて使った方がわかりやすい表現になります。

読者が必要とする情報を必ず書く

文章を作成する場合は、必要とする情報を必ず書く必要があります。

多くの読者は何かが知りたくて文章を読みます。

例えば以下2つの分s尿があったとします。

A:文語体は明治頃まで使われていた書き言葉です。言文一致運動によって使われなくなりました。
B:文語体は昔の書き言葉です。その美しい日本語は、現在は使われていません。しかしノスタルジックな雰囲気が好まれ、多くのファンが現在も愛用しています。

2つの文章を比べてどうでしょう。

Bは個人的な感想が多いですね。

日記のような印象を持ったと思います。

では、Aはどうでしょう。

文語体が何であるかと使われなくなった理由がしっかり書かれていますね。

現代版文語体では、このような明確な理由や根拠が必要とされています。

読者が必要とする情報は必ず書きましょう。

日本語はややこしい!文語体と口語体の違い

文語体と口語体の違いを3つに分けて説明します。

  1. 口語体の意味とは
  2. 口語体の例文
  3. 文語体との違い

口語体の意味とは

口語体とは現代の言葉です。

デジタル大辞泉(小学館)では以下のように記載されています。

現代の、話し言葉に基づく文章の形式。口語文の文体。常体(「だ体」「である体」など)と敬体(「です・ます体」「でございます体」「であります体」など)とがある

goo辞書 | こうご‐たい【口語体】 の解説(最終閲覧日2021年9月28日)

具体的に、以下のような文章が口語体です。

・昨日の夜いご飯はハンバーグだった
・今日はサッカーをする予定です

つまり、国語の教科書に出てくるような文章が口語体になります。

口語体は話し言葉と書き言葉の2種類に分けられる

口語体は、話し言葉と書き言葉に分けることができます。

普段の会話を文章にしてみると、「おや?」と思うことはありませんか?

例えば以下のような文章です。

A:いろんなことを考えて、とっても混乱してるから、どっちか迷ってるみたい
B:色々なことを考えて、とても混乱しているので、どちらか迷っているよう

内容は同じですが、Aが話し言葉、Bが書き言葉です。

Aの話し言葉を文章にしてもさほど違和感はありません。

友人や家族の前で、Aのような文章を書いたとしても、誰も間違っているとは言わないでしょう。

しかしながら、ビジネス文章などを書く場合はBを使わなければなりません。

知らずにAのような話し言葉を使ってしまうと、失礼に当たることも。

論文など不特定多数が見る可能性のある文章は、書き言葉を使うことが望ましいでしょう。

口語体の例文

口語体には『です・ます調』『だ・である調』の2つがあります。

それぞれを例文を使い説明します。

  • です・ます調
  • だ・である調

です・ます調

です・ます調は文末が『です』または『ます』で終わる文章のことです。

敬体とも言われています。

丁寧で優しい印象のある文末ですね。

ビジネスや目上の人に対して使われます。

以下の例文を見てみましょう。

・明日は6時に起床します。
・学校は坂道の上です。

『です・ます調』は、学校の教科書にも使われている文末です。

多くの方が、普段から使用していますね。

ビジネス文書だけでなく、解説文や説明文としても使われます。

だ・である調

文末が『た』または『である』で終わる文章が『だ・である調』です。

常体と言われています。

『です・ます調』よりも強い断定形です。

そのため、新聞や週刊誌で多く使われています。

具体的には以下のような例文になります。

・明日は6時起床である。
・学校は坂道の上だ。

やや硬い印象のある文末です。

なので、論文やレポート、報告書に向いているとされています。

文語体との違い

文語体は昔の言葉、口語体は現在の言葉です。

違いについて表にまとめてみました。

【文語体と口語体の違い】

文語体口語体
歴史的仮名遣い現代の言葉遣い
理解するのに時間がかかる理解が簡単
格式高い・品がある親しみやすい
2021年9月28日時点

文語体は昔の書き言葉です。

口語体は現在の言葉となります。

具体的な違いを例文で見てみましょう。

疎まばらに寄する獅子太鼓ししだいこの遠響とほひびきは、はや今日に尽きぬる三箇日さんがにちを惜むが如く、その哀切あはれさに小ちひさき膓はらわたは断たたれぬべし。

尾崎紅葉|金色夜叉(2021年10月3日)

ああ今の東京とうけい、昔の武蔵野むさしの。今は錐きりも立てられぬほどの賑にぎわしさ、昔は関も立てられぬほどの広さ

山田美妙|武蔵野(2021年10月3日)

Aが文語体、Bが口語体となっています。

2つの作品の雰囲気は、随分と違いますね。

Aは、歴史的仮名遣いとなっており堅苦しく感じます。

一方Bは、現代の言葉に近いため親しみやすいですね。

このように文語体は古文のような言葉です。

そして、口語体は現代の言葉となっています。

2つはまったく違う形や雰囲気を出していますね。