「反語法ってどういう意味?」
「反語法を文章・小説に使うと、どういった効果があるのかな」
文章テクニックの1つである反語法という言葉を聞くと、このように疑問に思う人もいるハズ。
詳細は本文で解説いたしますが反語法とは簡単に言うと、以下のように皮肉を用いた文章表現を指します。
【反語法の例文】
誰が見ても「ひどい出来だな」と思う踊りに対して、「君のダンスは素晴らしいね。思わず見惚れてしまったよ」と言う。
単に「下手くそ」とこき下ろすよりも、反語法を使うことで踊りのひどさが強調されていますよね。
その結果、『踊りのひどさ・発言者の性格の悪さ』が読み取れ、印象的な文章に早変わりしています。
これが反語法のメリットです。
そして、そんな反語法をフルに使っている小説が『オリガ・モリソヴナ』です。
反語法を文章・小説に取り入れたい人は、この本を一度読んでみるとよいでしょう。
そこでこの記事では反語法の意味だけでなく、『オリガ・モリソヴナ』の口コミも解説いたします。
この記事を読み終える頃には、反語法を用いて印象的な文章を簡単に書けるようになっています。
反語法の意味・効果を解説
反語法とその効果、反語法以外の修辞法について解説いたします。
- 反語法とは?
- 反語法の効果
- 反語法以外の修辞法
反語法とは?
反語法について、精選版日本国語大辞典は以下のように定義しています。
強意を示すために反語を用いる修辞法。愚かな人に対して、「おりこうさん」「先生」など。
コトバンク|反語法(2022年05月19日付)
簡単にいいますと、反語法とは「文の意味を強調するために、あえて逆の意味をいうこと」、つまりは皮肉を指すわけですね。
例えば、クラスにたいへん態度が悪い子供がいたとしましょう。
先生はその子供のことを「態度が悪い生徒」と呼びます。
事実その通りですね。
一方で、反語法を用いると、先生はその子供に向かって「おりこうさん」という言い方が可能です。
「子供の態度が悪い」という事実に反して「たいへん行儀がよい」という意味の「おりこうさん」と呼びかけます。
これは事実と反対の表現を使う皮肉の一種ですね。
以上のように、事実とはかけ離れた反対の表現を使うことで文に皮肉を込めることが可能だとわかりました。
反語法の効果
反語法を使って得られる効果は「文の意味が強調される」ことです。
例えば、ある貴族が世にも珍しいペンダントを手に入れたとしましょう。
貴重なペンダントを手に入れた貴族のすごさが強調されているのは、以下のどちらの例だと感じましたか?
【反語法の例文A】
私はたいへん珍しいペンダントを手に入れた
【反語法の例文B】
誰がこんなに珍しいペンダントを手に入れられるだろうか?
【例A】は、「貴重なペンダントを手に入れた」という事実をそのまま述べています。
これでは事実を述べただけで、文意の協調にはなりません。
【例B】は、「貴重なペンダントを手に入れた」という事実を「こんなに貴重なペンダントを手に入れられるのは誰か?」という問いに見せかけています。
この問いには「誰も手に入れられない、自分以外は」という反語法が使われています。
よって、【例B】の方が「手に入れられるのは自分だけだ」という事実を強調できているといえるでしょう。
このように、反語法を用いると文意が強調されるという効果が得られます。
このような効果が必要とされるのは、実際とは反対のことをいって、暗に自分の気持ちを表現したい場合です。
具体的にいいますと、望ましくない行動をした人を暗に批判したり、言論統制下で暗に自分の主張を伝えたりするときなどですね。
遅れてきた人に対して、「まあ、早かったですね」と反語法を使うと、「あなたは遅れてきましたね」という批判的な文意が強調されて伝わるのがわかります。
反語法以外の修辞法
反語法以外にもさまざまな修辞法があります。
以下に主な修辞法を5つ解説いたします。
それぞれの読みと意味を表にまとめましたので、参考にしてください。
【主な修辞法の意味と用法】
代表的な修辞法 | 読み | 意味 |
---|---|---|
冗語法 | じょうごほう | 論理的には不必要な語句を付け加える表現法。 |
畳語法 | じょうごほう | 激しさまたは強調のために、言葉を連続して繰り返す修辞技法のこと。 |
倒置法 | とうちほう | 文などにおいてその成分をなす語や文節を、普通の順序とは逆にする表現法。 |
比喩法 | ひゆほう | 物事を直接に描写・叙述・形容などしないで、たとえを用いて理解を容易にし、表現に味わいを加える修辞法。 |
それぞれの修辞法について、例文も確認しておきましょう。
ここでは例文「早く起きて」をそれぞれの修辞法で表します。
【各修辞法の例文】
・冗語法の場合「さっさと早く起きて」
・畳語法の場合「早く!早く!早く!起きて」
・倒置法の場合「起きてよ、早く」
・比喩法の場合「光の速さで起きて」
冗語法では「起きる」が明確にあらわされていますね。
畳語法では「早く」を繰り返し強調していることがわかります。
倒置法では「起きる」と「早く」の語順を入れ替えることで、語調を整えています。
比喩法では「光の速さ」に例えることで、早く起きてほしい気持ちをわかりやすく表現していますね。
このように、反語法以外にもいろいろな修辞法があることがわかりました。
反語法がメインの傑作小説【オリガ・モリソヴナ】
タイトルに反語法と入っている本に『オリガ・モリソヴナの反語法』というものがあります。
いったいどのような本なのか、ご紹介いたします。
- オリガ・モリソヴナの反語法
- なぜ反語法という言葉がタイトルに入っているのか
- 過去にはNHK オーディオドラマの題材にもなっている
オリガ・モリソヴナの反語法
『オリガ・モリソヴナの反語法』は、2002年、作家の米原万里によって書き下ろされた長編小説です。
本の詳細情報は以下の通りです。
【オリガ・モリソヴナの反語法の詳細情報】
著者 | 米原 万里 |
---|---|
発行年月 | 2002年10月 |
出版社 | 集英社 |
ページ数 | 407ページ |
価格 | 1,980円(税込) |
著者である米原万里は、ロシア語同時通訳・作家で、2006年5月に56歳という若さで逝去されました。
著書には『オリガ・モリソヴナの反語法』のほかに、『不実な美女か貞淑な醜女か』や『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』などがあります。
この『オリガ・モリソヴナの反語法』は、2003年にBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。
本書の主人公と同じく、プラハにあるソビエト学校で少女時代を過ごした著者の実話要素を含んだ小説になっており、読者からは次のような声が聞かれます。
想像以上に悲惨な彼女の過去やその周りの人々の昔話に衝撃を受けた。スターリン体制下で逮捕された人々の手記や物語をこれまで読む機会がなかったので、ここまで非道なことが実際に起こっていたのかと怒りが湧く。日本人だけでなく、世界中の人に届いてほしい名作だと感じた。
honto本の通販ストア|オリガ・モリソヴナの反語法の通販(2022年6月5日時点)
オリガが生きたとされる1930年代のスターリン政権の悲惨な様子や、1990年代ソ連が崩壊した後のロシアの様子が、とてもリアルに描かれています。
主人公が数々の謎を紐解いていく様子は、ミステリーとしても非常に読みごたえがあり、最後まで読者を飽きさせません。
なぜ反語法という言葉がタイトルに入っているのか
反語法という言葉がタイトルに入っているのは、物語の中で反語法が重要な役割を果たしているからです。
オリガは、舞踊の授業の中で反語法を用いて生徒を罵倒していきます。
一九六〇年代のチェコ、プラハ。父の仕事の都合でこの地のソビエト学校へ通う弘世志摩は四年生。彼女が一番好きだったのは、オリガ・モリソヴナ先生の舞踊の授業。老女なのに引き締まった肉体、ディートリッヒのような旧時代の服装で踊りは飛び切り巧い。先生が大袈裟に誉めたら、要注意。それは罵倒の裏返し。学校中に名を轟かす「反語法」。先生は突然長期に休んだり、妖艶な踊り子の古い写真を見せたり、と志摩の中の“謎”は深まる。
amazon|オリガ・モリソヴナの反語法(2022年5月19日時点)
主人公である弘瀬志摩は、ソビエト学校の少し変わった舞踊の教師オリガ・モリソヴナ先生に影響を受け、のちにダンサーを目指します。
時は流れて数十年、42歳になった主人公はダンサーを引退し、ロシア語の通訳者として仕事をしていました。
そして1992年、彼女はソ連が崩壊した後のモスクワへ渡り、恩師であるオリガ先生に抱いていた謎について探ることにします。
古い友人とともに「オリガ先生」という人物について調べていくうち、いくつもの驚くべき真実を知ることになるのです。
オリガ先生の使う反語法、そこにはオリガ・モリソヴナという人間の人生が深くかかわっています。
反語法と彼女の人生は切っても切れない関係で繋がれているのです。
過去にはNHK オーディオドラマの題材にもなっている
本作は過去、NHKのオーディオドラマとして、以下15回にわたり放送されたこともあります。
【放送日】
放送日 | 時間帯 | 回 |
2016年7月18日~7月22日 | 午後10時45分~午後23時 | 1~5回 |
2016年7月25日~7月29日 | 午後10時45分~午後23時 | 6~10回 |
2016年8月1日~8月5日 | 午後10時45分~午後23時 | 11~15回 |
2020年6月15日~6月19日 | 午後9時15分~午後9時30分 | 1~5回 |
2020年6月22日~6月26日 | 午後9時15分~午後9時30分 | 6~10回 |
2020年6月29日~7月3日 | 午後9時15分~午後9時30分 | 11~15回 |
2016年の人気ラジオドラマ投票で、見事に2位を獲得しました。
初回放送後に、2020年再放送がされるなど大変人気のある作品であることがわかります。
オリガ・モリソヴナの反語法、ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。