東京都「年収の壁突破」総合対策促進奨励金とは?対象要件と申請方法を解説

働く意欲のある女性が就業調整を意識せずに能力を発揮できる環境づくりは、都内中小企業にとって重要な経営課題になっています。

そこで注目したいのが、東京都と公益財団法人東京しごと財団が実施する「年収の壁突破」総合対策促進奨励金です。

本奨励金は、配偶者手当の収入要件の見直しや、社会保険に加入した非正規雇用者向け手当の新設に取り組んだ都内中小企業に対して、1コースあたり30万円、2コース申請で最大50万円を支給する制度です

申請受付は全10回に分かれており、現在は令和8年7月1日から7月31日17時までの第3回受付期間となっています。

この記事では、年収の壁突破総合対策促進奨励金の対象要件、助成額、申請手順、注意点までをわかりやすく解説します。

  1. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の基本情報
    1. 補助金・助成金の正式名称
    2. 対象都道府県・市区町村
    3. 実施機関
    4. 対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
    5. 対象業種
    6. 対象経費
    7. その他要件
    8. 補助対象外となるもの
    9. 申請期間
    10. 上限金額・助成額
    11. 補助率
    12. 問い合わせ先
    13. 公式公募ページと確認すべきこと
  2. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を対象者が活用すべき理由(メリット)
  3. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を申請すべき人とそうでない人の特徴
    1. 申請すべき人
    2. 見送ったほうが良い人の特徴
  4. その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
    1. 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
    2. ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
    3. 中小企業省力化投資補助金
    4. 小規模事業者持続化補助金
  5. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請に必要なもの
    1. 申請に必要な書類一覧と取得方法
    2. 記載例はどこで確認できるか
  6. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の採択率を上げる事業計画書の作り方
    1. 市場性を具体的に書く
    2. 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
    3. この制度を利用する必要性・重要性を記載
    4. 実行体制を明記する
  7. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請手順
  8. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を自社で申請する際の注意点
  9. 自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
    1. 制度選定の精度が上がる
    2. 事業計画の質が上がる
    3. 採択後の実務まで見据えられる
  10. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を不正受給するとどうなるのか
    1. 交付決定の取り消しと返還を求められるケース
    2. 疑わしい事案を相談できる窓口
  11. 「年収の壁突破」総合対策促進奨励金のまとめ

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の基本情報

項目内容
正式名称令和8年度「年収の壁突破」総合対策促進奨励金(企業における「年収の壁突破」総合対策促進事業)
対象都道府県・市区町村東京都(都内で事業を営む中小企業事業主・個人事業主)
実施機関公益財団法人東京しごと財団(東京都事業)
対象者都内中小企業事業主(個人事業主含む)。都内勤務の常時雇用労働者を1名以上6か月以上継続雇用等の要件を満たす事業主
対象業種ほぼ全業種(建設業、製造業、情報通信業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉等)
対象経費社会保険加入促進コース(非正規雇用者向け社会保険料関連手当の新設)、配偶者手当見直しコース(配偶者手当の収入要件撤廃等)の取組費用
その他要件労使協定の締結→就業規則の改正→労働基準監督署への届出の順に取組を実施すること、専門家による個別相談を取組期間中に合計2回利用すること
補助対象外となるもの取組の手順相違(就業規則改正が労使協定締結より先など)の場合、既に同様の手当がある場合、要件を全期間通じて満たしていない場合
申請期間全10回のうち現在第3回(令和8年7月1日~7月31日17時)受付中。以降第4回~第10回(令和9年2月28日17時まで)
上限金額・助成額1コース30万円、2コース申請で合計50万円
補助率定額支給(奨励金)
問い合わせ先「年収の壁突破」総合対策促進奨励金事務局(東京しごと財団企業支援部雇用環境整備課内、TEL 03-5211-2315)

補助金・助成金の正式名称

本制度の正式名称は「令和8年度『年収の壁突破』総合対策促進奨励金」です。

東京都が実施する「企業における『年収の壁突破』総合対策促進事業」の一環として、公益財団法人東京しごと財団が交付事務を担っています。

令和7年度にも同種の奨励金が実施されており、令和8年度版として制度が継続・拡充されています

対象都道府県・市区町村

本奨励金の対象地域は東京都内です。

本店登記または支店・営業所が都内にある法人、あるいは事業所が都内にある個人事業主が対象となります。

都内勤務の常時雇用労働者を1名以上、6か月以上継続して雇用していることも交付要件のひとつです

実施機関

実施機関は公益財団法人東京しごと財団です。

東京都の事業として、企業支援部雇用環境整備課が窓口を担当しています。

申請から交付決定、実績報告まで一貫して同財団が審査を行う仕組みです

対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)

対象となるのは、都内で事業を営む中小企業事業主です。

法人だけでなく個人事業主も対象に含まれます。

交付申請日から実績報告日に至るまでの全期間を通じて、12項目の要件をすべて満たし続ける必要があります

対象業種

対象業種はほぼすべての業種に及びます。

建設業、製造業、情報通信業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉など幅広い業種が含まれます。

業種を問わず、都内中小企業であれば基本的に申請を検討できる制度です

対象経費

対象となる取組は、社会保険加入促進コースと配偶者手当見直しコースの2つに分かれています。

社会保険加入促進コースは、非正規雇用者が負担する社会保険料に関する手当を新設する取組が対象です。

配偶者手当見直しコースは、収入要件の撤廃、他手当への振替、基本給への繰り入れのいずれかの見直しが対象になります

その他要件

取組を実施する際は、労使協定の締結を先に行い、その後に就業規則を改正して労働基準監督署へ届け出る必要があります。

常時雇用する労働者数が10人未満の事業者も、就業規則の届出対象に含まれます。

専門家による個別相談窓口を、取組期間中(交付決定日から3か月以内)に合計2回利用することも必須の要件です

補助対象外となるもの

労使協定の締結より先に就業規則を改正するなど、手順を誤った場合は奨励金の対象になりません。

すでに同様の手当が存在する非正規雇用者を対象とする場合も対象外です。

奨励金を受けるためだけに手当制度を改廃した場合も対象外となるため注意が必要です

申請期間

申請受付は全10回に分かれており、1事業主につき1回限りの申請となります。

現在は令和8年7月1日から7月31日17時までの第3回受付期間にあたります。

第4回以降も令和9年2月28日17時まで毎月受付が予定されており、各回とも受付社数に上限が設けられています

上限金額・助成額

助成額は1コースにつき30万円です。

社会保険加入促進コースと配偶者手当見直しコースの両方に取り組む場合は、2コース分の申請が可能です。

2コースを申請した場合の助成額は合計50万円となり、交付申請後のコース追加はできません

補助率

本奨励金は定率補助ではなく、コースごとに定められた定額を支給する仕組みです。

実際にかかった経費の額にかかわらず、要件を満たせば1コース30万円が支給されます。

経費の実費精算ではなく定額支給である点は、他の設備投資系補助金とは異なる特徴です

問い合わせ先

問い合わせ先は「年収の壁突破」総合対策促進奨励金事務局です。

公益財団法人東京しごと財団企業支援部雇用環境整備課内に設置されています。

電話番号は03-5211-2315で、平日午前9時から午後5時まで(正午~午後1時、土日祝日、年末年始を除く)対応しています

公式公募ページと確認すべきこと

本奨励金の詳細は、Jグランツの公募詳細ページで確認できます。

あわせて、「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の特設サイトでは、コース別の詳細要件や募集要項をダウンロードできます。

申請前には、必ず最新の募集要項でコース別の交付要件と取組手順を確認することが重要です

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を対象者が活用すべき理由(メリット)

年収の壁突破総合対策促進奨励金を活用する最大の理由は、女性やパート従業員が就業調整を意識せず働ける環境を整えられる点にあります。

配偶者手当の収入要件を見直すことで、優秀な人材がより長い時間働ける体制づくりにつながります。

社会保険加入を後押しする手当を新設すれば、非正規雇用者の定着率向上にも寄与します。

専門家による個別相談を無料で利用できるため、制度改定のノウハウがない企業でも安心して取り組めます。

人手不足が続くなか、既存の従業員がより長く安定して働ける職場づくりは採用面でもプラスに働きます。

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を申請すべき人とそうでない人の特徴

  • 申請すべき人
  • 見送ったほうが良い人の特徴

申請すべき人

  • 配偶者手当の収入要件見直しを検討している都内中小企業
  • 非正規雇用者の社会保険加入を後押ししたい企業
  • 就業規則の改正や労使協定の締結を計画的に進められる企業
  • 専門家の個別相談を活用しながら制度改定を進めたい企業

見送ったほうが良い人の特徴

  • 都内に本社・事業所がない企業
  • 就業規則の改正や労使協定の締結に時間を割けない企業
  • 取組期間中(3か月以内)に個別相談を2回利用する余裕がない企業
  • 手当制度の変更を奨励金目的だけで検討している企業

その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例

  • 新事業進出補助金
  • ものづくり補助金
  • 中小企業省力化投資補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)

新事業進出補助金は、新市場や新分野への進出を目指す中小企業の設備投資や体制整備を後押しする制度です。

働きやすい職場づくりと並行して事業拡大にも挑みたい企業には、組み合わせて検討する意義がある補助金です

ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)

ものづくり補助金は、中小企業の革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善に向けた設備投資を支援する制度です。

パート従業員の労働時間拡大とあわせて生産設備を刷新したい企業にとって相性の良い制度です

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金は、深刻化する人手不足への対応として省力化機器の導入を支援する制度です。

従業員の働き方改善と省力化投資をあわせて進めることで、限られた人員でも生産性を維持しやすくなります

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する補助金です。

働きやすい職場をアピール材料とした採用広報にも活用しやすい制度といえます

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請に必要なもの

  • 申請に必要な書類一覧と取得方法
  • 記載例はどこで確認できるか

申請に必要な書類一覧と取得方法

交付申請には、就業規則の写しや労使協定書など複数の書類の提出が必要です。

具体的には、交付申請書、事業計画書、就業規則(変更前・変更後)の写し、労使協定書の写し、登記事項証明書等の提出が求められます。

実績報告の段階では、労働基準監督署への届出控えや賃金台帳など取組の実施を証明する書類も必要になります。

申請様式は特設サイトの「提出書類・資料ダウンロードページ」から入手できます

記載例はどこで確認できるか

各様式の記載例や募集要項は、「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の特設サイトからダウンロードして確認できます。

記載例を参考にすることで、労使協定書や就業規則の記載不備を未然に防ぎやすくなります

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の採択率を上げる事業計画書の作り方

  • 市場性を具体的に書く
  • 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
  • この制度を利用する必要性・重要性を記載
  • 実行体制を明記する

市場性を具体的に書く

事業計画書には、自社が属する業界における人材確保の競争状況を具体的に記載することが望まれます。

パート従業員の就業調整がどの程度自社の人手不足につながっているかを具体的な数値で示すと説得力が増します

差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載

他社に先駆けて配偶者手当の見直しに取り組む姿勢は、採用競争における差別化要素になります。

働きやすさを前面に打ち出すことで、他社と比較した際の応募者への訴求力が高まります

この制度を利用する必要性・重要性を記載

なぜ本奨励金を利用する必要があるのか、自社の人材確保や定着の課題と結び付けて説明することが重要です。

従業員アンケート等の具体的な根拠を添えることで、計画全体の説得力が高まります

実行体制を明記する

労使協定の締結や就業規則の改正をどのようなスケジュールと担当者体制で進めるのかを明記する必要があります。

労働者代表の選出方法まで具体的に記載することで、手順相違による対象外を防ぎやすくなります

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請手順

  1. 募集要項を確認し、社会保険加入促進コースと配偶者手当見直しコースのどちらに取り組むか検討します。
  2. 特設サイトから交付申請書・事業計画書等の様式をダウンロードします。
  3. 電子申請システム「Jグランツ」または郵送により、該当する回の受付期間内に交付申請を行います。
  4. 交付決定後、3か月以内の取組期間中に労使協定の締結、就業規則の改正、労働基準監督署への届出を順に行います。
  5. 専門家による個別相談窓口を、取組期間中に合計2回(1回目は交付決定日から1か月以内)利用します。
  6. 取組内容を証明する書類を添えて実績報告を行い、奨励金の支給を受けます。

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を自社で申請する際の注意点

労使協定の締結と就業規則の改正は必ず順番を守って実施し、日付の前後関係を書類上でも確認できるようにしておく必要があります。

専門家による個別相談は1回目を交付決定日から1か月以内に利用する決まりがあるため、スケジュールを早めに押さえておくことが望まれます。

各回の受付社数には上限が設けられているため、希望する回に申請できるとは限らない点にも留意が必要です。

1事業主につき申請は1回限りであるため、2コース同時申請を希望する場合は交付申請時に必ずその旨を選択しておく必要があります。

自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ

  • 制度選定の精度が上がる
  • 事業計画の質が上がる
  • 採択後の実務まで見据えられる

制度選定の精度が上がる

社会保険労務士に相談すると、自社の就業規則や賃金制度の現状を踏まえたうえで最適なコースを選び出してもらえます。

労務まわりの専門知識が必要な制度だからこそ、社労士の視点は選定精度を高めるうえで役立ちます

事業計画の質が上がる

専門家のサポートを受けることで、労使協定書や就業規則の変更内容をより実態に即したものに仕上げられます。

第三者の視点で確認してもらうことで、手順相違による対象外化のリスクを減らせます

採択後の実務まで見据えられる

交付決定後の個別相談の利用スケジュールや実績報告に必要な書類の準備も、専門家に相談しておくと安心です。

継続的な伴走支援を受けることで、3か月という短い取組期間内の手続きをスムーズに進められます

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を不正受給するとどうなるのか

  • 交付決定の取り消しと返還を求められるケース
  • 疑わしい事案を相談できる窓口

交付決定の取り消しと返還を求められるケース

虚偽の申請内容や、実態を伴わない手当制度の新設・見直しが判明した場合、交付決定が取り消され、すでに支給された奨励金の返還を求められることがあります。

悪質なケースでは、事業者名の公表など企業の信用に関わる対応が取られる可能性もあります

事業を所管する東京都および公益財団法人東京しごと財団は、交付後も要件充足の状況を継続的に確認しています。

疑わしい事案を相談できる窓口

不正受給が疑われる事案を把握した場合は、事業を所管する東京しごと財団の窓口へ情報提供を行うことができます。

制度の公平性を保つためにも、疑わしい事案があれば早めに事務局へ相談することが推奨されます

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金のまとめ

「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、配偶者手当の見直しや社会保険加入促進に取り組む都内中小企業にとって、最大50万円の支援を受けられる心強い制度です。

申請受付は全10回に分かれており、令和9年2月28日17時まで毎月受付が予定されています。

制度の詳細や最新情報は、Jグランツの公募詳細ページおよび「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の特設サイトで必ず確認してください。

本記事を参考に、自社の働き方改革の一環として本奨励金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。