塗装や印刷、ドライクリーニングの現場では、シンナーや溶剤といった揮発性有機化合物を日常的に扱っています。
石油系の原材料が値上がりを続けるなか、排出を抑える設備へ切り替えたくても、数百万円から数千万円という初期費用が壁になっている事業者は少なくありません。
東京都と公益財団法人東京都環境公社は、こうした都内の中小事業者に向けて、VOC排出削減設備やVOC削減装置付きの空調・換気設備を導入する費用の一部を補助する制度を用意しています。
補助率は補助対象経費の3分の2で、補助対象設備1台あたり2,000万円が上限、令和8年度の申請受付は令和9年3月31日17時までです。
受付は先着順で、予算に達した時点で予告なく締め切られる仕組みになっています。
この記事では、対象になる事業者と設備、補助対象経費の内訳、審査で見られる観点、申請から入金までの流れを一次情報に沿って整理していきます。
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の基本情報
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を対象者が活用すべき理由(メリット)
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を申請すべき人とそうでない人の特徴
- その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の申請に必要なもの
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の採択率を上げる事業計画書の作り方
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の申請手順
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を自社で申請する際の注意点
- 自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を不正受給するとどうなるのか
- 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業のまとめ
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の基本情報
| 正式名称 | 令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業 |
| 対象地域 | 東京都内 |
| 実施機関 | 公益財団法人東京都環境公社 技術支援部(省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業ヘルプデスク) |
| 対象者 | 都内で工場内塗装(工業塗装及び自動車板金塗装に限る)、印刷、ドライクリーニングのいずれかの作業工程でVOCを取り扱う中小企業者、個人事業主、障害者就労施設を有する社会福祉法人等 |
| 対象業種 | サービス業(他に分類されないもの)、分類不能の産業(Jグランツ上の表示。実態としては工場内塗装・印刷・ドライクリーニングの工程を持つ事業者) |
| 対象経費 | 設計費、設備費、工事費、処分費 |
| 対象設備 | VOC排出削減設備(排ガス処理装置、局所排気装置、溶剤回収装置、溶剤再生装置、簡易VOC測定機、スプレーガン、塗装ブース、塗料供給配管、スプレーガン洗浄機、乾燥機、印刷機、ホットドライ機)、VOC削減装置付空調・換気設備 |
| その他要件 | 未使用品であること、リース品でないこと、原材料・消耗品でないこと、都内の事業所に導入すること、導入後にVOC削減率・省エネ効果を報告し東京都の調査に協力すること |
| 対象外 | 過剰・予備・将来用のもの、中古品や故障中の機器、交付決定日より前に締結した契約に係る経費、安全対策費、現場管理費・一般管理費などの諸経費、申請書類の作成費用 |
| 申請期間 | 令和8年4月1日(水曜)~令和9年3月31日(水曜)17時00分(先着順・予算超過時は受付停止) |
| 上限金額 | 補助対象設備1台ごとに2,000万円 |
| 補助率 | 補助対象経費の3分の2(千円未満切捨て、消費税及び地方消費税相当額を除く) |
| 実績報告期限 | 補助事業完了日から60日以内、最終期限は令和9年11月30日 |
| 問い合わせ先 | 省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業ヘルプデスク(電話03-3633-2282/メールkaizen-voc@tokyokankyo.jp) |
補助金・助成金の正式名称
制度の名称は「省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業」で、Jグランツには年度を冠した「令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業」として掲載されています。
根拠となるのは、令和4年9月21日付で制定された省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業実施要綱と、同年11月29日付の補助金交付要綱です。
事業そのものは令和4年度から令和9年度までの期間で実施されますが、交付申請を受け付けるのは令和8年度が最後と案内されています。
VOCとは揮発性有機化合物のことで、光化学オキシダントやPM2.5の原因物質として排出抑制が求められている物質です。
対象都道府県・市区町村
対象地域は東京都内で、都内に事業所を持つ事業者が対象となります。
区市町村単位の絞り込みはなく、23区でも多摩地域でも島しょ地域でも、都内であれば同じ条件で申請できます。
重要なのは補助対象設備を都内の事業所に導入することで、本社が都外にある企業でも、都内の工場や店舗に設置するのであれば対象になります。
なお、区市町村が独自に実施する補助制度との併用は妨げられていませんが、両方を合計した額が補助対象経費を上回る場合は、その超過分が差し引かれます。
実施機関
運営しているのは公益財団法人東京都環境公社で、事業の窓口は技術支援部に置かれたヘルプデスクです。
財源は東京都からの出えん金を基にした基金で、令和8年度分としておよそ2.3億円が追加で措置されています。
公社は工事業者のあっせんや申請書類の作成代行を行わないと明記していますので、施工先の選定と書類準備は自社で進める必要があります。
技術的な相談については、東京都が派遣する「東京都VOC対策アドバイザー」の制度を利用することができます。
対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
補助対象事業者は、都内で工場内塗装、印刷、ドライクリーニングのいずれかの作業を行っている中小企業者、個人事業主、および障害者就労施設を有する社会福祉法人等です。
ここでいう工場内塗装は工業塗装と自動車板金塗装に限られており、建築現場での塗装作業などは含まれません。
中小企業者の判定は中小企業基本法の定義に従い、製造業・建設業・運輸業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業は5千万円以下または100人以下、小売業は5千万円以下または50人以下が目安です。
一方で、国その他の団体から同一内容で補助金を受けている者、法令上必要な許可や届出がない者、税金の滞納がある者、国や地方公共団体の出資を受けている者は対象外です。
暴力団排除条例に基づく誓約書の提出も申請時に求められます。
対象業種
Jグランツの公募情報では、対象業種として「サービス業(他に分類されないもの)」と「分類不能の産業」が指定され、従業員数の上限は300名以下と表示されています。
ただし実務上の判断基準は日本標準産業分類そのものではなく、VOCを扱う3つの作業工程を実際に行っているかどうかです。
工業塗装や自動車板金塗装を行う工場、印刷会社、クリーニング店が実質的な対象で、業種名だけで自社を判断せず作業工程で確認することが大切です。
複数の業種を営んでいる場合、中小企業者の判定は売上高が大きい方を主たる業種として扱います。
対象経費
補助対象経費は、設計費、設備費、工事費、処分費の4区分です。
設備費には機器本体のほか、事業実施に不可欠な付属機器、機器搬入費、据付費、総合試験調整費、立会検査費、冷媒ガスの回収・充填作業費、養生費などが含まれます。
工事費として認められるのは、労務費、材料費、基礎工事、配電・配管工事、直接仮設費、断熱・保温等の設置工事費、天井解体および復旧費、点検口取付費といった、事業に不可欠な工事の費用です。
処分費が計上できるのは、現に使用している設備から補助対象設備へ更新する場合の撤去・処分費に限られます。
なお、自社やグループ企業から調達する場合は利益等排除の対象となり、原価または売上総利益率を用いて補助対象経費が算定されます。
その他要件
補助対象設備には、未使用品であること、リース品でないこと、原材料または消耗品でないことという3つの共通要件が課されています。
申請内容は新設、増設、更新のいずれかの導入区分に当てはまる必要があり、いずれにも該当しない場合は受け付けられないことがあります。
VOC排出削減設備については導入によって大気中へのVOC排出量が減ることが、空調・換気設備についてはこれに加えて作業環境の改善と省エネ化が見込まれることが条件です。
設備を更新する場合は、既存設備と導入設備を比べて原油換算エネルギー使用量が削減されていることが求められます。
導入後は、VOC削減効果と省エネ効果を東京都へ報告し、セミナーでの事例発表やアンケート調査に協力する義務も生じます。
補助対象外となるもの
補助対象とならない経費として、過剰とみなされるもの、予備または将来用のもの、補助対象事業以外で使う目的のもの、中古または故障中の機器の購入費が挙げられています。
とりわけ注意が必要なのは、公社が交付決定をした日より前に締結した契約に係る経費で、これは例外なく補助の対象外です。
工事費のうち安全対策費、土地の取得・賃貸・管理費、道路使用許可申請費用、本事業と直接関係のない工事費も認められません。
共通仮設費、現場管理費、一般管理費、運搬費、保険料、従業員給料手当といった諸経費全般、および公社へ提出する申請書類の作成費用も対象から外れます。
印刷機については、単に運用の利便性を高めるためのソフトウェアや給排紙トレイなどのオプションが補助対象外になる旨が公式サイトで明示されています。
申請期間
令和8年度の交付申請受付期間は、令和8年4月1日から令和9年3月31日17時00分までです。
西暦にすると2026年4月1日から2027年3月31日までで、Jグランツ上の受付終了日時も同じく2027年3月31日17時と表示されています。
ただし受付は先着順で、受理した交付申請額の合計が予算の範囲を超えた時点で、予告なく受付が停止される可能性があります。
予算超過となった日に複数の申請が重なった場合は、抽選によって受け付ける申請が決まる仕組みです。
申請から交付決定通知までは概ね2か月を要しますので、工事の着工時期から逆算して余裕を持って申請してください。
上限金額・助成額
補助金額の上限は、補助対象設備1台ごとに2,000万円です。
「1事業者あたり」ではなく「1台ごと」に上限が設定されている点が、この制度の特徴といえます。
補助金額に千円未満の端数が生じた場合は切り捨てとなり、消費税および地方消費税に相当する額は補助対象経費から除かれます。
交付決定額はあくまで交付の限度額であり、実際に要した経費がこれを超えても増額されることはありません。
補助金は工事完了と実績報告を経てから支払われるため、設備費と工事費はいったん全額を自社で負担する資金計画が必要です。
補助率
補助率は補助対象経費の3分の2で、補助対象設備1台ごとに算定されます。
たとえば補助対象経費が1,500万円であれば補助金額は1,000万円、自己負担は500万円という計算になります。
3分の2という補助率は設備投資系の補助制度としては手厚い水準で、上限の2,000万円に達するのは補助対象経費が3,000万円を超える規模の案件です。
なお、区市町村から同一経費で補助を受ける場合は、合計額が補助対象経費を上回らないよう調整されます。
問い合わせ先
問い合わせ窓口は、公益財団法人東京都環境公社 技術支援部 技術課 環境改善係に置かれた省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業ヘルプデスクです。
電話番号は03-3633-2282で、受付時間は開庁日の9時から12時、13時から17時までとなっています。
メールアドレスはkaizen-voc@tokyokankyo.jpです。
申請前の段階では原則として書類の事前確認は行われず、工事の詳細や費用の相談にも応じていない点は理解しておく必要があります。
実施要綱、交付要綱、募集要項に目を通したうえで問い合わせると、対応がスムーズに進みます。
公式公募ページと確認すべきこと
電子申請の入口と公募の概要はJグランツの公募詳細ページにまとめられています。
実施要綱、交付要綱、募集要項、Q&A、リーフレット、各様式一式、提出物チェックリストは東京都環境公社の公式サイトからダウンロードできます。
最初に確かめたいのは、自社の作業工程が対象の3工程に当てはまるか、導入予定の機器が交付要綱別表の補助対象設備に該当するか、GビズIDプライムアカウントを取得済みかの3点です。
空調・換気設備を検討している場合は、導入推奨機器の検索ページや省エネ型製品情報サイトで、機器が指定基準を満たすかを事前に確認しておきましょう。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を対象者が活用すべき理由(メリット)
溶剤や洗浄剤の価格が上がり続けるなかで、VOCの排出を抑える設備は原材料の使用量そのものを減らす投資でもあります。
とはいえ、排ガス処理装置や塗装ブース、業務用の印刷機といった設備は一台で数百万円から数千万円に達し、日々の資金繰りを考えると後回しにされがちです。
この制度を使えば費用の3分の2が補助されますので、実質的な負担を3分の1に圧縮して設備を刷新できます。
上限が1事業者単位ではなく設備1台ごとに設定されているため、複数の設備をまとめて入れ替える計画とも相性がよい仕組みです。
VOC削減装置付きの空調・換気設備を選べば、排出削減と同時に作業環境の改善と電力コストの低減も期待できます。
さらに、東京都VOC対策アドバイザーの助言を受けた設備は交付要綱の一覧に載っていなくても対象にできる余地があり、現場の実情に合わせた設備選定がしやすくなっています。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を申請すべき人とそうでない人の特徴
- 申請すべき人
- 見送ったほうが良い人の特徴
申請すべき人
- 都内で工業塗装または自動車板金塗装を行っており、塗装ブースや排ガス処理装置の更新を検討している事業者
- 都内の印刷会社で、低VOC材料へ切り替えるために印刷機や乾燥機の導入が必要な事業者
- 都内でドライクリーニング店を営み、対象型番のホットドライ機や乾燥機への入れ替えを考えている事業者
- VOC削減フィルターを組み合わせた高効率換気設備や省エネ型空調機を導入したい事業者
- 交付決定を待ってから発注する工程を組める事業者
- 設備費と工事費を先に自社で立て替えられる資金余力がある事業者
- GビズIDプライムアカウントを保有している、または余裕をもって取得できる事業者
- 導入後にVOC削減率や省エネ効果を報告し、東京都の調査に協力できる事業者
見送ったほうが良い人の特徴
- 都外にのみ事業所があり、都内に設備を設置する予定がない事業者
- 建築塗装など、対象となる3つの作業工程に当てはまらない業務を行っている事業者
- すでに施工業者と契約や発注を済ませてしまっている事業者
- リース契約や中古機器の購入で設備を調達しようとしている事業者
- 原材料や消耗品の購入費を補助してほしいと考えている事業者
- 国その他の団体から同一内容で補助金の交付を受けることが決まっている事業者
- 法令上必要な許可や届出が済んでいない、または税金の滞納がある事業者
- 用途地域の制限により、その場所で当該事業を行う許可を得られていない事業者
その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
- 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
- ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
- 中小企業省力化投資補助金
- 小規模事業者持続化補助金
新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
今の事業とは別の市場や商材へ踏み出す中小企業に向けて、機械装置費や建物費といった初期投資を後押しする制度です。
低VOC材料への転換をきっかけに、これまで受注できなかった分野の加工へ広げていくような計画であれば、検討の余地があります。
ただし同一の設備について国から重複して補助を受けることはできませんので、どちらの制度でどの設備を申請するかは事前に切り分けておく必要があります。
公募回ごとに要件や締切が更新されますので、検討時点の公募要領で最新情報を押さえてください。
ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
技術的な新規性を伴う製品やサービスの開発と、そのための設備投資を支える国の代表的な補助制度です。
水性塗料やUV硬化インキへの転換に合わせて、これまでにない加工精度や短納期を実現する取組であれば、申請の筋が通りやすくなります。
審査では老朽設備の単純な入れ替えでないことが問われますので、技術面の革新性をどう説明するかが分かれ目です。
賃上げに関する要件が設定されている回もあり、社内の給与水準とあわせた検討が求められます。
中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む中小企業が、省力化につながる機器やシステムを導入する費用を対象とした制度です。
塗装工程の自動化や印刷後工程の省人化など、作業者数そのものを減らす設備を考えているなら選択肢に入ります。
登録済みのカタログ製品から選ぶ方式と、個別に事業計画を提出する方式があり、導入したい設備によって申請の道筋が変わります。
カタログの掲載製品は随時入れ替わりますので、検討のたびに公式サイトで最新版を確かめる習慣をつけましょう。
小規模事業者持続化補助金
従業員数の少ない事業者が販路を広げる取組に対して、幅広い経費で使える制度です。
環境負荷の低い加工に対応したことを打ち出すウェブサイトの刷新や、展示会への出展費用などが対象になります。
設備そのものは本制度で、その設備を活かした受注獲得の取組は持続化補助金でと役割を分ければ、両方の効果を引き出せます。
申請には商工会議所または商工会の確認が必要ですので、地元の窓口へ早めに声をかけておくと安心です。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の申請に必要なもの
- 申請に必要な書類一覧と取得方法
- 記載例はどこで確認できるか
申請に必要な書類一覧と取得方法
交付申請では、提出物チェックリスト、補助金交付申請書(第1号様式)、内訳明細表(共通様式1)を基本として、案件に応じた添付書類を揃えます。
空調設備または換気設備を導入する場合は、新旧仕様入力表(共通様式2・3)、VOCを吸着捕集することを示すフィルター性能の公的な証明書、導入推奨機器検索画面の写しが追加で必要です。
全案件で共通して求められるのは、発行後3か月以内の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、見積書の写し、敷地内平面図、設備配置図、特記仕様書またはカタログ、工事前のカラー写真です。
見積書は処分費を含めて2社以上から取得する必要があり、一式表記は認められず費用の算出根拠を必ず示さなければなりません。
個人事業主の場合は、直近1か年分の青色申告者であることを証明する書類と開業届等の写しを提出します。
建物を借りている場合は建物の全部事項証明書と賃貸借契約書または設置承諾書が、条例上の工場に該当する場合は工場認定書が加わります。
記載例はどこで確認できるか
様式類と記入上の注意点は、東京都環境公社の事業ページで公開されている募集要項、実施要綱、交付要綱で確認できます。
募集要項の巻末には様式一覧表と提出物一覧表が収録されており、どの書類がどの案件で必要になるかが表形式で整理されています。
判断に迷いやすい論点はQ&A集にまとめられていますので、工場認定書をこれから取得する場合などは先に目を通しておくと安心です。
Jグランツの入力手順については、公社が用意しているJグランツ操作マニュアルが参考になります。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の採択率を上げる事業計画書の作り方
- 市場性を具体的に書く
- 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
- この制度を利用する必要性・重要性を記載
- 実行体制を明記する
市場性を具体的に書く
この制度は競争型の公募ではなく、要件適合性を確かめる審査を経て先着順に交付決定される仕組みです。
そのため他社と競う提案書は求められませんが、導入設備がどの受注案件のどの工程で稼働するのかを具体的に示すことが、要件充足の説明力を高めます。
年間の塗装面積や印刷部数、クリーニング処理点数といった実数を添えると、設備規模の妥当性が伝わりやすくなります。
既存設備の原材料年間使用量が確認できる購入伝票も、更新・増設の案件では提出が必要になる場合があります。
差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
審査項目には、導入設備が交付要綱別表第1に定める設備に該当し、能力や指定基準の要件を満たしているかという観点が含まれています。
そこで効くのが、カタログや特記仕様書のどの数値が基準を満たしているのかを、要綱の記載と対応づけて示すことです。
たとえば高効率換気設備なら比消費電力0.4W/(㎥/h)以下、熱交換型換気設備なら熱交換率40%以上という数値を、仕様書のページとともに示しましょう。
要件を満たすことが書面で確認できない機器は、確認に時間がかかるか対象外と判断される可能性があります。
この制度を利用する必要性・重要性を記載
審査ではVOC削減効果と作業環境の改善、そして空調・換気設備であれば省エネ効果が見込まれるかが問われます。
導入前後で溶剤の使用量や排出量がどう変わるのか、更新であれば原油換算エネルギー使用量がどれだけ減るのかを、数量で書き分けてください。
低VOC製品への材料変更に伴って導入が必要となる設備は、なぜその機器がなければ材料転換ができないのかという因果関係の説明が要になります。
SDSなどVOC含有率が分かる資料を添えると、削減効果の裏付けが明確になります。
実行体制を明記する
審査項目には、補助対象経費の範囲が交付要綱の規定に沿い、事業に直接関係のない経費が混じっていないかという観点があります。
内訳明細表では、設計費、設備費、工事費、処分費の区分ごとに補助対象と補助対象外を明確に分けて記載してください。
交付決定から実績報告書の最終提出期限である令和9年11月30日までの工程を月単位で描き、施工業者との調整スケジュールを固めておくことが重要です。
社内で申請を担当する部署と、経理処理・証憑保管を担う部署の役割分担も、あらかじめ決めておきましょう。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の申請手順
- 自社が都内で工場内塗装、印刷、ドライクリーニングのいずれかの作業を行う中小企業者等に該当するかを確認する
- 東京都環境公社の公式サイトから実施要綱、交付要綱、募集要項、Q&A、各様式一式、提出物チェックリストをダウンロードする
- 導入したい設備が交付要綱別表第1の補助対象設備に該当し、指定基準を満たすかをカタログや仕様書で確認する
- 必要に応じて東京都VOC対策アドバイザーの派遣を依頼し、技術的な助言を受ける
- GビズIDプライムアカウントを取得する(発行に時間がかかるため早めに着手する)
- 処分費を含めて2社以上の施工業者から見積書を取得する
- 敷地内平面図、設備配置図、工事前のカラー写真、登記簿謄本などの添付書類を揃える
- 補助金交付申請書(第1号様式)と内訳明細表(共通様式1)を作成し、補助対象経費と補助対象外経費を分けて記載する
- 令和9年3月31日17時00分までに、Jグランツから申請書類一式を提出する
- 公社の審査(必要に応じて現地調査やヒアリング)を経て、交付決定通知書を受領する
- 交付決定後に速やかに施工業者と契約し、工事に着手する(交付決定前の契約は対象外)
- 工事と支払いを完了し、完了日から60日以内かつ令和9年11月30日までに実績報告書兼補助金交付請求書を提出する
- 書類審査と必要に応じた現地調査を経て、補助金額確定通知書を受領する
- 確定通知の発行後およそ1か月で、指定口座に補助金が振り込まれる
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を自社で申請する際の注意点
まず押さえておきたいのは、交付決定より前に発注や契約を済ませてしまうと、その経費は例外なく補助されないという点です。
交付決定通知書が届くまでは契約書に押印せず、見積書の有効期限を延ばしてもらうよう施工業者と話をつけておきましょう。
受付が先着順である点も見落とせず、年度末まで期間があるからと構えていると、予算超過による受付停止に遭う恐れがあります。
書類に不備があった場合、修正を求められた日の翌日から60日以内に対応しないと、申請が取り下げられたものとみなされます。
支払方法にも制約があり、クレジット払い、手形払い、相殺による決済は認められず、現金または銀行振込に限られます。
取得した設備は法定耐用年数の期間内は処分できず、取得価格50万円以上のものを処分する際は事前に公社の承認と算出金の納付が必要になります。
自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
- 制度選定の精度が上がる
- 事業計画の質が上がる
- 採択後の実務まで見据えられる
制度選定の精度が上がる
東京都環境公社だけでも、省エネ型ノンフロン機器普及促進事業やPFOS等含有泡消火薬剤の転換促進事業など、複数の設備系補助制度が並行して動いています。
どの制度がどの設備をカバーしているかは要綱を読み比べないと判断できず、対象範囲を取り違えると準備が無駄になります。
本制度は同一設備について国その他の団体からの重複受給を禁じていますので、国の補助金との組み合わせ方こそ最初に整理すべき論点です。
早い段階で使える制度を絞り込めれば、見積取得や書類収集にかける時間を無駄にせずに済みます。
事業計画の質が上がる
内訳明細表で補助対象と補助対象外を切り分ける作業は、工事見積の構造を理解していないと手が止まりやすいところです。
諸経費や安全対策費が対象外である一方、天井解体および復旧費や点検口取付費は対象になるという線引きは、要綱を読み込んではじめて見えてきます。
申請の受理は必要書類が全て揃った状態が前提ですので、不足のない書面を一度で整えられることが期間短縮に直結します。
仕上がった資料は、設備投資の社内稟議や金融機関への説明にもそのまま使えます。
採択後の実務まで見据えられる
交付決定を受けた後も、契約、工事、支払い、実績報告、現地調査、額確定という手続きが続きます。
工期がずれる場合は補助事業遅延等報告書、機器の型式を変える場合は補助事業計画変更申請書というように、場面ごとに提出する様式が決まっています。
計画変更の承認にはおよそ1か月を要し、承認が下りるまで工事を止める必要があるため、段取りを誤ると工期全体が崩れます。
なお、官公署へ提出する書類の作成代行には資格上の制約がありますので、依頼先の業務範囲と費用は契約前に確かめておきましょう。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業を不正受給するとどうなるのか
- 虚偽の申請が招く返還と公表という結末
- 予定が変わったときに取るべき手続き
虚偽の申請が招く返還と公表という結末
この補助金の財源は東京都の出えん金による基金であり、募集要項の冒頭でも不正行為には厳正に対処すると明記されています。
提出書類にいかなる理由があっても事実と異なる記載があってはならず、虚偽が発覚すれば不交付の決定または交付決定の取消しが行われます。
すでに補助金が交付されている場合は、年10.95%の利率で計算した違約加算金を上乗せして返還しなければなりません。
指定された期限までに納付しなかったときは、さらに年10.95%の延滞金が加算されます。
加えて、公社が実施する他の補助事業について一定期間対象外とされたうえ、氏名または名称と不正の内容が公表される措置も定められています。
予定が変わったときに取るべき手続き
工期の遅れや機器の型式変更、設置場所の移動といった計画のずれは、設備工事の現場では珍しくありません。
こうした変更が生じた時点で補助事業計画変更申請書や補助事業遅延等報告書をJグランツから提出すれば、正規の手続きとして処理されます。
承認を得ずに無断で計画を変更したり、遅延を報告しないまま進めたりすると、交付決定そのものが取り消される場合があります。
軽微な変更に当たるかどうかは自己判断せず、事前に公社へ相談するよう募集要項でも案内されています。
帳簿や証拠書類は実績報告書を提出した年度の終了日から5年間の保存義務がありますので、整理を後回しにしない体制を整えておきましょう。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業のまとめ
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業は、都内で工場内塗装、印刷、ドライクリーニングを行う中小企業者等が、VOCの排出を抑える設備を導入する費用を支援する制度です。
補助率は補助対象経費の3分の2、上限は補助対象設備1台ごとに2,000万円で、令和8年度の交付申請受付は令和9年3月31日17時00分までです。
補助対象経費は設計費、設備費、工事費、処分費の4区分で、諸経費や申請書類の作成費用は含まれません。
受付は先着順のため、予算が上限に達した時点で予告なく締め切られる点に注意が必要です。
交付決定前に契約した経費は対象外ですので、見積取得から発注までの段取りを施工業者と事前に共有しておきましょう。
申請の入口はJグランツの公募詳細ページ、要綱や様式の入手先は東京都環境公社の公式サイトです。
交付申請の受付は令和8年度が最後と案内されていますので、設備更新を考えている事業者は早めに検討を進めてください。
-1200-x-400-px-3.png)
