INPIT事業再編計画支援事業補助金|上限650万円の対象経費と申請手順を解説

補助金

M&Aや事業譲渡といった事業再編を進めるとき、相手企業がどんな特許や商標を持ち、それが本当に価値のある権利なのかを見極める作業は避けて通れません。

ところが知財デュー・デリジェンスやIPランドスケープ調査を専門機関に依頼すると、数百万円単位の費用が発生することも珍しくありません。

INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)は、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けた特定中堅企業者を対象に、こうした知財関連調査の費用を支える補助制度を設けています。

令和8年度の補助上限額は1事業者あたり650万円、補助率は3分の1以内で、交付申請の締切は令和8年12月18日17時です。

申請にあたっては、あらかじめ産業競争力強化法上の特定中堅企業者と事業再編計画の認定を受けている必要があり、この前提条件が最初の関門になります。

この記事では、補助対象となる調査の中身、提出書類、審査で見られるポイント、申請の段取りまでを一次情報に沿って整理していきます。

  1. INPIT事業再編計画支援事業補助金の基本情報
    1. 補助金・助成金の正式名称
    2. 対象都道府県・市区町村
    3. 実施機関
    4. 対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
    5. 対象業種
    6. 対象経費
    7. その他要件
    8. 補助対象外となるもの
    9. 申請期間
    10. 上限金額・助成額
    11. 補助率
    12. 問い合わせ先
    13. 公式公募ページと確認すべきこと
  2. INPIT事業再編計画支援事業補助金を対象者が活用すべき理由(メリット)
  3. INPIT事業再編計画支援事業補助金を申請すべき人とそうでない人の特徴
    1. 申請すべき人
    2. 見送ったほうが良い人の特徴
  4. その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
    1. 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
    2. ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
    3. 中小企業省力化投資補助金
    4. 小規模事業者持続化補助金
  5. INPIT事業再編計画支援事業補助金の申請に必要なもの
    1. 申請に必要な書類一覧と取得方法
    2. 記載例はどこで確認できるか
  6. INPIT事業再編計画支援事業補助金の採択率を上げる事業計画書の作り方
    1. 市場性を具体的に書く
    2. 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
    3. この制度を利用する必要性・重要性を記載
    4. 実行体制を明記する
  7. INPIT事業再編計画支援事業補助金の申請手順
  8. INPIT事業再編計画支援事業補助金を自社で申請する際の注意点
  9. 自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
    1. 制度選定の精度が上がる
    2. 事業計画の質が上がる
    3. 採択後の実務まで見据えられる
  10. INPIT事業再編計画支援事業補助金を不正受給するとどうなるのか
    1. 水増し請求や事実と異なる報告がもたらす代償
    2. 手違いに気づいたときの正しい動き方
  11. INPIT事業再編計画支援事業補助金のまとめ

INPIT事業再編計画支援事業補助金の基本情報

正式名称 INPIT事業再編計画支援事業補助金(令和8年度)
対象地域 全国
実施機関 INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)知財活用支援センター 助成事業担当
対象者 産業競争力強化法第23条第1項の事業再編計画の認定を受けた認定事業再編事業者等である特定中堅企業者
対象業種 漁業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、農業・林業、鉱業・採石業・砂利採取業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉
対象経費 知財デュー・デリジェンス、知財侵害予防調査、IPランドスケープ調査、その他工業所有権の保護及び利用を図るために必要な検討に要する調査等に係る謝金・旅費・委託費・外注費
その他要件 本事業を円滑に遂行するための経営基盤と資金管理能力を有すること、経済産業省からの補助金交付等停止措置または指名停止措置が講じられていないこと、EBPMに関する取組に協力すること
対象外 補助金の申請書や実績報告書等の作成に係る費用、事業に関係ない経費、交付決定前に契約(発注)した経費、現金払・手形払による支払い
申請期間 令和8年4月1日(水曜)~令和8年12月18日(金曜)17時00分
上限金額 1事業者あたり650万円
補助率 3分の1以内
補助事業実施期間 交付決定日から令和9年3月12日(金曜)まで
問い合わせ先 INPIT 知財活用支援センター 助成事業担当(電話03-3581-1101/メールip-ct06@inpit.go.jp)

補助金・助成金の正式名称

制度の名称は「INPIT事業再編計画支援事業補助金」で、Jグランツには令和8年度分として「INPIT事業再編計画支援事業補助金(令和8年度)」の名で掲載されています。

交付要領の本文では「INPIT事業再編計画支援補助金」という表記も併用されていますが、指しているのは同じ制度です。

この制度のページが開設されたのは2025年4月1日で、令和8年度分の申請受付は2026年4月1日に始まった、比較的新しい支援策です。

同じINPITが運営する「INPIT外国出願補助金」とは対象者も対象経費も異なりますので、名称の似た制度と取り違えないよう注意してください。

対象都道府県・市区町村

対象地域は全国で、特定の都道府県や市区町村に限定された制度ではありません。

国の産業競争力強化法を根拠とする制度ですので、本社や事業所の所在地によって使える使えないが分かれることはありません。

地域要件の代わりに問われるのが、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けているかどうかという点です。

認定の手続きは主務大臣に対して行うもので、この補助金の申請とは別のプロセスになりますので、時間の見積もりを誤らないようにしましょう。

実施機関

運営しているのは、特許庁と連携して知財の情報提供や人材育成を担う独立行政法人工業所有権情報・研修館、通称INPITです。

窓口は同法人の知財活用支援センター内にある助成事業担当で、所在地は東京都港区虎ノ門四丁目3番1号の城山トラストタワー8階です。

なお、GビズIDの新規取得に関する問い合わせにはINPITでは対応できないとされており、その場合はGビズIDの事務局へ連絡する必要があります。

補助事業の経理処理については、経済産業省が作成した「補助事業事務処理マニュアル」の「経済産業省」をINPITと読み替えて運用する扱いになっています。

対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)

補助対象者は、産業競争力強化法第34条の2に規定する認定事業再編事業者等である特定中堅企業者です。

令和6年9月に施行された改正産業競争力強化法では、中小企業者を除く従業員数2,000人以下の企業が「中堅企業者」と定義されました。

そのうち、積極的な賃上げやリスクを取った投資などを行う成長意欲の高い企業が「特定中堅企業者」として位置づけられ、この補助金の対象になります。

さらに、産業競争力強化法第34条の2第2項に基づく助成に係る支援措置を含む同法第23条第1項の認定を受けていることが条件です。

つまり、特定中堅企業者としての位置づけと、事業再編計画の認定という2つの前提を満たしてはじめて申請の土俵に立てる制度だと理解してください。

対象業種

Jグランツで指定されている業種は、漁業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、農業・林業、鉱業・採石業・砂利採取業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉です。

公務および分類不能の産業を除く事実上すべての産業分野が対象とされており、業種による絞り込みはほとんど行われていません。

実際に活用が見込まれるのは、特許や意匠、商標といった工業所有権が事業価値を左右する製造業や情報通信業でしょう。

ただし、サービス業や小売業でもブランドや独自技術を巡る再編は起こりますので、業種で自社を除外して考える必要はありません。

対象経費

補助の対象になるのは、工業所有権の保護および利用を図るために必要な検討に要する調査事業等の経費です。

交付要領では、経費区分として謝金、旅費、委託費・外注費が挙げられています。

調査の中身としては、知財デュー・デリジェンス、知財侵害予防調査、IPランドスケープ調査、その他工業所有権の保護及び利用を図るために必要な検討に要する調査等の4つが示されています。

いずれも、交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に検収と支払いを完了したものに限られます。

支払いの確認は銀行振込の実績で行われるため、現金払いや手形払いは対象外となる点にも留意してください。

その他要件

補助対象者の資格に加えて、交付要領では3つの追加要件が定められています。

1つ目は、本事業を円滑に遂行するために必要な経営基盤を有し、かつ資金等について十分な管理能力を有していることです。

2つ目は、経済産業省からの補助金交付等停止措置または指名停止措置が講じられている者ではないことです。

3つ目は、経済産業省におけるEBPM(証拠に基づく政策立案)に関する取組に協力することで、申請情報が政策の効果検証に利活用されることへの同意も含まれます。

また、消費税および地方消費税は原則として補助対象経費から除外して補助金額を算定するルールになっており、免税事業者など一部の事業者だけが例外的に含めて算定できます。

補助対象外となるもの

交付要領では、補助対象とならない費用の例として2つが明示されています。

1つは補助金の申請書や実績報告書等の作成に係る費用、もう1つはその他事業に関係ない経費です。

申請書類の作成を外部に委託した場合の費用は補助の対象にならないため、その分は自社負担として資金計画に織り込んでおく必要があります。

経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者へ発注・契約した場合も、その経費は対象外です。

交付決定を通知する前に発注等を完成させた経費についても、補助金の交付対象とはならないと明記されています。

申請期間

令和8年度の交付申請期間は、令和8年4月1日から令和8年12月18日17時00分までです。

西暦に直すと2026年4月1日から2026年12月18日までとなり、約8か月半という比較的長い受付期間が確保されています。

ただし補助事業実施期間は交付決定日から令和9年3月12日までと区切られているため、申請が遅くなるほど調査を実施できる期間が短くなります。

Jグランツ上の受付終了日時も2026年12月18日17時と表示されており、公式サイトの案内と一致しています。

年度末までに検収と支払いを終える必要がありますので、調査ボリュームから逆算して申請時期を決めるのが現実的です。

上限金額・助成額

補助上限額は1事業者あたり650万円です。

補助率が3分の1以内ですので、上限額まで受け取るには1,950万円以上の補助対象経費が必要になる計算です。

補助金の交付は補助対象事業の完了後に支払われる実費弁済方式のため、調査費用は一度自社で全額を立て替える必要があります。

最終的な実施内容と交付決定額は、INPITと調整したうえで決定するとされています。

交付申請に基づく審査の結果、計上した経費が補助対象外と判断されれば、交付決定額が減額または全額対象外となる場合もあります。

補助率

補助率は補助対象経費の3分の1以内です。

残りの3分の2以上は自己負担となりますので、調査の規模を決める際は自社の資金余力とあわせて検討する必要があります。

「以内」と表現されている点が重要で、必ず3分の1が交付されるわけではなく、審査を経て決定される交付決定額が上限になります。

補助率の算定にあたっては、原則として消費税等を除いた金額をベースにする点も押さえておきましょう。

問い合わせ先

問い合わせ先は、INPIT知財活用支援センターの助成事業担当です。

電話番号は代表の03-3581-1101で、交付要領には内線3855、Jグランツの公募情報には内線3852と案内されています。

メールアドレスはip-ct06@inpit.go.jpです。

メールで問い合わせる際は、件名を必ず「INPIT事業再編計画支援事業補助金事業」とするよう指定されており、他の件名では回答を受けられない場合があります。

郵送先の住所は東京都港区虎ノ門四丁目3番1号の城山トラストタワー8階です。

公式公募ページと確認すべきこと

公募の概要と電子申請の入口はJグランツの公募詳細ページにまとめられています。

交付要綱、交付要領、申請様式といった資料一式はINPIT事業再編計画支援事業補助金の公式サイトからダウンロードできます。

最初に確認したいのは、自社が特定中堅企業者に該当するか、事業再編計画の認定を受けているか、GビズIDプライムアカウントを取得済みかの3点です。

特定中堅企業者や事業再編計画そのものの制度内容は、公式サイトからリンクされている経済産業省のページで確認できます。

INPIT事業再編計画支援事業補助金を対象者が活用すべき理由(メリット)

事業再編の場面では、相手企業が保有する特許や商標が本当に事業価値を支えているのかを見極める作業が欠かせません。

この見極めを怠ったまま統合を進めると、後になって権利の抜け漏れや第三者との紛争が表面化し、想定していたシナジーが崩れてしまいます。

本補助金を使えば、専門性が高く費用もかさむ知財デュー・デリジェンスやIPランドスケープ調査の負担を3分の1まで軽くできます。

調査費用の重さから予算を削り、簡易な確認で済ませてしまうという判断を避けられる点が、実務上の最大の価値です。

また、IPランドスケープ調査は目の前の再編案件だけでなく、その後の事業戦略や研究開発の方向づけにも活かせる資産になります。

認定事業再編計画に紐づく支援として位置づけられるため、社内での予算承認を得やすくなる効果も見込めるでしょう。

INPIT事業再編計画支援事業補助金を申請すべき人とそうでない人の特徴

  • 申請すべき人
  • 見送ったほうが良い人の特徴

申請すべき人

  • 産業競争力強化法第23条第1項の事業再編計画の認定を既に受けている特定中堅企業者
  • M&Aや事業譲受にあたり、対象会社の知的財産を専門的に評価したいと考えている企業
  • 再編後の新事業で他社特許の侵害リスクを事前に洗い出しておきたい企業
  • 経営戦略の立案に知財情報を組み込むIPランドスケープ調査を外部委託したい企業
  • 調査費用を一度立て替えたうえで、事業完了後の精算を待てる資金余力がある企業
  • GビズIDプライムアカウントを既に保有している、または余裕をもって取得できる企業
  • 令和9年3月12日までに調査の検収と支払いを完了できる工程を組める企業

見送ったほうが良い人の特徴

  • 事業再編計画の認定をまだ受けておらず、年度内の認定見込みも立っていない企業
  • 中小企業者に該当する、あるいは従業員数が2,000人を超えており中堅企業者の定義から外れる企業
  • 既に調査会社への発注を済ませてしまっている企業(交付決定前の契約は対象外)
  • 特許出願料や商標登録料そのものの補助を求めている企業
  • 調査費用を現金払いや手形払いで決済する予定の企業
  • 補助金の申請書作成費用まで補助対象にしたいと考えている企業
  • 経済産業省からの補助金交付等停止措置または指名停止措置を受けている企業

その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例

  • 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
  • ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
  • 中小企業省力化投資補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)

既存事業とは異なる市場や商材へ踏み出す中小企業を対象に、機械装置費や建物費などの初期投資を支援する枠組みです。

再編によって獲得した技術を土台に新分野へ展開する場合、調査段階を本補助金で、投資段階をこちらでという役割分担が考えられます。

ただし対象は中小企業者であり、特定中堅企業者とは対象範囲が重ならない点には注意が必要です。

グループ内の中小企業が主体となる投資であれば、活用の余地が出てくる場合もあります。

ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)

技術面の新規性がある製品・サービスの開発と、それに伴う設備投資を支える国の代表的な補助制度です。

知財調査で見えてきた技術的な空白領域を、実際の製品開発へ落とし込むフェーズと相性がよい制度といえます。

審査では既存設備の単純な更新ではないことが問われますので、事前の技術動向調査が申請書の説得力を左右します。

公募回ごとに枠組みと締切が変わりますので、検討時点の公募要領で最新の条件を確かめてください。

中小企業省力化投資補助金

人手不足の緩和につながる機器やシステムの導入費用を対象とした制度です。

再編で統合した拠点の業務を少人数で回す体制づくりを検討する際に、選択肢に入ってくるでしょう。

登録済みのカタログ製品から選ぶ方式と、個別に計画を提出する方式があり、導入したい設備によって申請の進め方が変わります。

対象製品のリストは随時更新されていますので、検討の都度、公式サイトで確認する習慣をつけましょう。

小規模事業者持続化補助金

従業員数の少ない事業者が販路を広げる取組に、幅広い経費で使える制度です。

再編後に立ち上げるブランドの告知や、ウェブサイトの刷新、展示会出展などが対象になります。

商標の出願と並行して販促を進める場面では、権利化の準備と告知施策を切り分けて資金手当てする発想が役立ちます。

申請にあたっては商工会議所や商工会の確認が必要になるため、地元の窓口へ早めに相談しておくと安心です。

INPIT事業再編計画支援事業補助金の申請に必要なもの

  • 申請に必要な書類一覧と取得方法
  • 記載例はどこで確認できるか

申請に必要な書類一覧と取得方法

交付申請では、様式第1の「INPIT認定事業再編計画支援事業補助金交付申請書」に加えて、8種類の添付書類を提出します。

具体的には、産業競争力強化法の規定に係る事業再編計画の認定を受けた特定中堅企業者であることを証する証憑類、補助事業に係る相見積もりを取った見積書、補助事業の効果について記載した説明資料です。

さらに、直近2事業年度分の貸借対照表と損益計算書、最新の履歴事項全部証明書、役員名簿、株主名簿・出資者名簿、法人概況説明書が必要になります。

見積書は相見積もりが求められているため、調査会社1社だけに声をかけて申請を進めることはできません。

履歴事項全部証明書は法務局で取得でき、いずれの書類も原本の提出は不要とされています。

申請様式は公式サイトからダウンロードでき、提出はJグランツを通じて行います。

記載例はどこで確認できるか

交付申請書の様式や記入上の留意点は、INPITの公式サイトに掲載されている交付要綱と交付要領で確認できます。

交付要綱は各種様式を定めた文書、交付要領は補助対象経費や審査基準などの運用ルールを定めた文書という位置づけです。

記載方法に迷う論点は、件名を「INPIT事業再編計画支援事業補助金事業」としたメールで助成事業担当へ問い合わせるのが確実です。

Jグランツの入力画面そのものの操作方法については、Jグランツ側のヘルプやよくあるご質問も参考になります。

INPIT事業再編計画支援事業補助金の採択率を上げる事業計画書の作り方

  • 市場性を具体的に書く
  • 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
  • この制度を利用する必要性・重要性を記載
  • 実行体制を明記する

市場性を具体的に書く

審査基準では、認定事業再編計画に対して効果的な調査等内容となっているかが評価項目に挙げられています。

そこで求められるのは、調査によって明らかにしたい市場と技術の範囲を、具体的な領域名や競合企業の数で示すことです。

「知財を調査する」という抽象的な記述ではなく、どの技術分類のどの範囲を、どの程度の件数で分析するのかまで書き込みましょう。

再編後に狙う市場の規模や成長率を、公開統計や業界レポートを引きながら添えると、調査の必要性が伝わりやすくなります。

差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載

この制度は工業所有権の保護と利用がテーマですので、自社の技術やブランドが競合に対してどこで優位に立っているかを整理する必要があります。

保有する特許のうち事業の中核を支えているものはどれか、逆に他社が押さえている領域はどこかを、権利の単位で切り分けて記述してください。

再編によって取得する知財が自社の弱点をどう補うのかを説明できると、調査に投じる費用の意味が明確になります。

既存事業と再編後事業の関係を図で示すと、審査担当者が全体像をつかみやすくなるでしょう。

この制度を利用する必要性・重要性を記載

提出書類のひとつに「補助事業の効果に係る説明資料」が指定されている点が、この制度の特徴です。

調査を行わなかった場合にどんなリスクが残るのか、行った場合に再編計画のどの目標が前進するのかを、対比の形で書き分けましょう。

認定を受けた事業再編計画の記載内容と調査テーマを一対一で結び付けることが、説明資料の説得力を決めます。

社内リソースだけでは対応できない理由、外部の専門機関に委託する必然性も、あわせて言葉にしておいてください。

実行体制を明記する

審査基準には、必要となる経費・費目を過不足なく考慮し、適正な積算が行われているかという項目があります。

謝金、旅費、委託費・外注費という経費区分に沿って、誰にいくら支払うのかを見積書と整合させて記載してください。

補助事業実施期間が交付決定日から令和9年3月12日までと定められているため、調査の着手から報告書受領、支払いまでの工程表を月単位で示すことが重要です。

社内の知財部門と経理部門、委託先の調査会社という三者の役割を明記しておくと、実行可能性の評価が高まります。

INPIT事業再編計画支援事業補助金の申請手順

  1. 自社が産業競争力強化法上の特定中堅企業者に該当するか、経済産業省のウェブサイトで要件を確認する
  2. 産業競争力強化法第23条第1項に基づく事業再編計画の認定を受ける(未認定の場合は認定手続きを先に進める)
  3. GビズIDプライムアカウントを取得する(発行に1週間程度かかるため早めに着手する)
  4. INPITの公式サイトから交付要綱・交付要領・申請様式をダウンロードし、補助対象経費の区分を確認する
  5. 知財デュー・デリジェンス、知財侵害予防調査、IPランドスケープ調査など、実施したい調査の内容を固める
  6. 複数の調査会社から相見積もりを取得する
  7. 補助事業の効果に係る説明資料を作成し、認定事業再編計画との対応関係を整理する
  8. 決算書、履歴事項全部証明書、役員名簿、株主名簿・出資者名簿、法人概況説明書を揃える
  9. 様式第1の交付申請書に必要事項を記入する
  10. 令和8年12月18日17時00分までに、Jグランツにログインして本補助金を検索し、申請内容を入力・添付して提出する
  11. INPITによる審査を経て、交付決定通知を受領する
  12. 交付決定日以降に調査会社と契約(発注)し、補助事業を開始する
  13. 令和9年3月12日までに調査の検収と銀行振込による支払いを完了する
  14. 実績報告書を提出し、確定検査を経て補助金の支払い(実費弁済)を受ける

INPIT事業再編計画支援事業補助金を自社で申請する際の注意点

最も見落としやすいのは、交付決定より前に調査会社と契約してしまうと、その経費が一切補助されないという点です。

交付決定通知を受け取るまでは発注を保留し、審査の結果が出てから正式に契約する段取りを社内で共有しておいてください。

次に注意したいのが、GビズIDプライムアカウントの発行に1週間程度を要し、取得の遅れを理由とした申請期限の延長は認められていないという点です。

支払方法も落とし穴になりやすく、銀行振込の実績でしか確認されないため、現金払いや手形払いを選ぶと補助対象から外れてしまいます。

補助金の受け取りは事業完了後の実費弁済ですので、調査費用の全額を先に用意しておく資金繰りが前提になります。

交付決定前の事業譲渡や会社分割によって交付申請の権利を他者へ承継することは、いかなる理由でも認められない点も覚えておきましょう。

自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ

  • 制度選定の精度が上がる
  • 事業計画の質が上がる
  • 採択後の実務まで見据えられる

制度選定の精度が上がる

知財に関する公的支援は、この補助金のほかにも外国出願補助金や自治体の特許調査費用助成など複数の入口があります。

対象者や対象経費の切り口がそれぞれ異なるため、自社の状況にどれが噛み合うかを見比べる作業には知識が要ります。

本制度は特定中堅企業者と事業再編計画の認定という二重の前提があるため、そもそも要件を満たすかどうかの初期判断が最も重要になります。

要件を満たさないと分かった時点で別の制度へ切り替えられれば、無駄な準備工数を抑えられます。

事業計画の質が上がる

補助事業の効果に係る説明資料は、日常の稟議書とは違う視点で組み立てる必要があります。

認定事業再編計画に書かれた目標と、実施しようとする調査の中身を論理的につなぐ作業は、慣れていないと骨が折れるものです。

審査で不採択の直接原因となる提出書面の不備を事前に潰しておけるだけでも、外部の目を入れる価値があります。

仕上がった説明資料は、社内の投資判断や取引先への説明にもそのまま流用できます。

採択後の実務まで見据えられる

交付決定を受けた後も、契約、検収、支払い、実績報告、確定検査という一連の手続きが控えています。

経理処理は経済産業省の補助事業事務処理マニュアルに沿って行う必要があり、証憑の残し方にも決まりがあります。

補助事業終了後に会計検査院の実地検査が入ることもあるため、書類の整備を後回しにしない体制づくりが欠かせません。

なお、官公署へ提出する書類の作成代行には資格の制約がありますので、依頼先の業務範囲と費用は契約前に確認しておきましょう。

INPIT事業再編計画支援事業補助金を不正受給するとどうなるのか

  • 水増し請求や事実と異なる報告がもたらす代償
  • 手違いに気づいたときの正しい動き方

水増し請求や事実と異なる報告がもたらす代償

この補助金の原資は国の予算であり、その執行には補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が適用されます。

実際には行っていない調査を計上したり、委託費を水増しして請求したりすれば、交付決定の取消しと受領済み補助金の返還を命じられます。

返還時には加算金や延滞金が上乗せされることがあり、悪質と判断された場合は刑事責任を問われる可能性も否定できません。

補助事業終了後に会計検査院の実地検査が行われる仕組みになっており、銀行振込の記録と報告内容の食い違いは表に出やすい構造です。

加えて、経済産業省から補助金交付等停止措置や指名停止措置を受ければ、他の公的支援からも締め出されることになります。

手違いに気づいたときの正しい動き方

調査の範囲が当初計画から変わったり、支払時期がずれ込んだりすることは、実務では起こり得ます。

そうした変更に気づいた時点でINPITの助成事業担当へ連絡すれば、必要な手続きの案内を受けられます。

報告を先延ばしにして辻褄を合わせようとする対応こそが、意図しない不正受給として扱われる最大の原因です。

提出した実績報告書等は情報公開の対象になり得ますので、記載内容には常に事実との整合を保っておきましょう。

INPIT事業再編計画支援事業補助金のまとめ

INPIT事業再編計画支援事業補助金は、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けた特定中堅企業者が行う知財関連調査の費用を支援する制度です。

補助上限額は1事業者あたり650万円、補助率は3分の1以内で、令和8年度の交付申請締切は令和8年12月18日17時00分です。

対象となるのは知財デュー・デリジェンス、知財侵害予防調査、IPランドスケープ調査などに係る謝金・旅費・委託費・外注費です。

交付決定前に発注した経費は対象外となり、補助事業実施期間も令和9年3月12日までと区切られていますので、逆算した工程管理が求められます。

申請はJグランツからの電子申請のみで、GビズIDプライムアカウントの取得が前提になります。

制度の詳細や様式はINPITの公式サイトで、公募の概要はJグランツの公募詳細ページで確認できます。

再編の成否を左右する知財の実態把握に、この制度を活用してみてください。