省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業【令和8年度】対象設備と補助額の計算・先着順の締切

補助金

東京都内で工業塗装や印刷、ドライクリーニングの工程を持つ事業所では、塗料・インキ・洗浄溶剤に含まれるVOC(揮発性有機化合物)の排出が避けられません。

令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業は、こうした工程を持つ都内の中小企業者等に対し、VOC排出削減設備やVOC削減装置付空調・換気設備の導入費用の3分の2(補助対象設備1台あたり上限2,000万円)を補助する制度です。

この制度を調べるうえで先に押さえておきたい点が2つあります。1つは、事業計画の優劣を競う公募型ではなく先着順の受付であること。もう1つは、公益財団法人東京都環境公社が公表している事業概要において交付申請の受付は令和8年度までとされていることです。

また、補助対象設備は「VOC対策設備」と漠然と定められているわけではありません。募集要項の表に、排ガス処理装置や塗装ブースから、ドライクリーニング用乾燥機の具体的な型番まで14種類が列挙されています。

この記事では、東京都環境公社が公開している令和8年度の募集要項とQ&A集をもとに、自社が対象事業者に当たるか、導入予定の設備が補助対象設備に当たるか、補助額がいくらになるか、令和9年3月31日の締切から逆算して何をいつまでに準備すべきかを整理します。

  1. 令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の基本情報
  2. 受付状況|先着順で、交付申請の受付は令和8年度までとされている
    1. 審査で順位を付ける制度ではなく、先着順で受け付けられる
    2. 予算を超過した日の申請は抽選になる
    3. 交付申請の受付は令和8年度までと公表されている
  3. 自社が補助対象事業者に当たるかを確認する
    1. 対象になるのは3つの作業工程に限られる
    2. 中小企業者の判定は「資本金または従業員数」で行う
    3. 本社が都外でも、都内事業所への導入なら対象になる
    4. 申請できない事業者の条件
  4. 導入予定の設備が補助対象設備に当たるかを判定する
    1. VOC排出削減設備は14種類が列挙されている
    2. 空調・換気設備はVOC吸着フィルターとの組み合わせが条件
    3. 表にない設備でも、VOC対策アドバイザーの助言があれば対象にできる
    4. 新設・増設・更新のどの導入区分に当たるかを整理する
  5. 補助額を計算する|消費税の扱いと端数処理まで含めた計算式
    1. 計算例
    2. 区市町村の補助金を併用する場合は差引き調整が入る
  6. 補助対象経費と補助対象外経費の境界
  7. 申請から入金までを締切から逆算する
    1. 実績報告の期限から逆算すると申請時期が決まる
    2. 申請前に着手できる準備と、着手してはいけない行為
  8. 申請に必要な書類と、申請不備が起こりやすいポイント
    1. 交付申請時に提出する主な書類
    2. 見積書は2社以上、一式表記は認められない
    3. 登記簿謄本は発行後3か月以内、登記情報提供サービスの電子データは不可
    4. 支払いは現金又は銀行振込に限られる
  9. 申請手順
  10. 交付決定後に発生する義務と注意点
    1. VOC削減効果の報告と都の調査への協力
    2. 法定耐用年数の期間は設備を処分できない
    3. 帳簿と証拠書類は5年間保存する
    4. 虚偽記載や決定前発注は交付決定の取消しと加算金の対象になる
  11. 令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業のまとめ

令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の基本情報

正式名称令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業
実施機関公益財団法人東京都環境公社 技術支援部 技術課 環境改善係(東京都環境局の事業)
対象地域東京都(補助対象設備を都内の事業所に導入すること)
対象者都内で工場内塗装(工業塗装・自動車板金塗装に限る)、印刷、ドライクリーニングのいずれかの作業でVOCを取扱う中小企業者、個人事業主、障害者就労施設を有する社会福祉法人等
補助対象設備VOC排出削減設備/VOC削減装置付空調・換気設備
補助対象経費設計費・設備費・工事費・処分費
補助率補助対象経費(消費税及び地方消費税相当額を除く)の3分の2
上限額・下限額補助対象設備1台ごとに2,000万円が上限。下限額の定めはなく、千円未満は切捨て
申請受付期間令和8年4月1日(水)~令和9年3月31日(水)17時(予算の限度額に達した時点で受付終了)
受付方式先着順(予算を超過した日に申請のあった案件は抽選)
事業規模約2.3億円(令和8年度分)
申請方法電子申請システム「Jグランツ」(GビズIDが必要/代行申請は不可)
交付決定までの期間申請受理後おおむね2か月
実績報告の期限工事完了後60日以内又は令和9年11月30日のいずれか早い日
補助金の入金額の確定通知書送付後おおむね1か月以内(令和10年3月31日まで)
問い合わせ先省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業ヘルプデスク 電話03-3633-2282(平日9:00~12:00、13:00~17:00)

出典:公益財団法人東京都環境公社「省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業」および同事業募集要項(令和8年4月)

受付状況|先着順で、交付申請の受付は令和8年度までとされている

令和8年度の交付申請は令和8年4月1日に受付が始まり、令和9年3月31日17時まで受け付けられています。ただし、期限まで必ず受け付けられるわけではなく、予算の限度額に達した時点で受付が終了します。

令和8年度分の事業規模は約2.3億円です。1台あたりの上限が2,000万円であることを踏まえると、金額の大きい申請が続いた場合に予算枠が早く埋まる構造になっています。

審査で順位を付ける制度ではなく、先着順で受け付けられる

東京都環境公社のQ&A集では、申請受付は先着順であると明記されています。事業計画の内容で他社と優劣を競い、点数の高い順に採択される仕組みではありません。

そのうえで、提出された書類に不備がある場合は、是正されるまで申請受付ができないとされています。書類が揃っていない状態で先に送っても受付順を確保できるわけではないため、不備のない状態で提出することがそのまま受付順に直結します。

予算を超過した日の申請は抽選になる

Q&A集では、申請が多く予算を超過した場合の扱いも示されています。予算を超過した日に申請のあったすべての案件について抽選を行い、予算の範囲内で受け付けるという運用です。

つまり、予算枠が埋まる直前に申請した場合は、書類に不備がなくても抽選に外れて受け付けられない可能性があります。設備の導入計画が固まっているなら、年度末を待たずに申請する判断が現実的です。

交付申請の受付は令和8年度までと公表されている

東京都環境公社の事業概要では、本事業の実施年度は令和4年度から令和9年度までで、申請受付は令和8年度までと記載されています。令和9年度は、令和8年度に交付決定を受けた事業者への補助金交付を行う年度という位置づけです。

令和9年度以降に同様の受付が行われるかどうかは、本記事の確認時点で公式に公表されていません。次回の実施を前提に計画を先送りせず、令和8年度の受付期間内に申請できるかどうかで判断することになります。

自社が補助対象事業者に当たるかを確認する

補助対象事業者は、中小企業者、個人事業主、障害者就労施設を有する社会福祉法人等(国及び地方公共団体を除く)のうち、都内でVOCを排出する特定の作業を行っている事業者です。

なお、東京都の報道発表によると、令和8年度から補助対象者に障害者就労施設を有する社会福祉法人等が加わりました。前年度までの情報で対象外と判断していた法人は、あらためて確認する価値があります。

対象になるのは3つの作業工程に限られる

VOCを取扱っていれば対象になるわけではなく、次の作業を行っていることが条件です。

  • 工場内塗装(工業塗装及び自動車板金塗装に限る
  • 印刷
  • ドライクリーニング

工場内塗装が工業塗装と自動車板金塗装に限定されているため、建築塗装や現場施工中心の塗装業は、VOCを取扱っていてもこの区分には当てはまりません。

中小企業者の判定は「資本金または従業員数」で行う

本事業における中小企業者は、中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者などを指します。判定は業種ごとに、資本金か常時使用する従業員数のいずれかを満たせばよい形です。

業種資本金常時使用する従業員
製造業、建設業、運輸業、その他3億円以下又は300人以下
卸売業1億円以下又は100人以下
サービス業5千万円以下又は100人以下
小売業5千万円以下又は50人以下

ここでいう「常時使用する従業員」には、事業主本人と生計を一にする三親等以内の親族、法人の役員、臨時の従業員は含まれません。複数の業種を営んでいる場合は売上高が大きい方を主たる業種として判断し、製造小売は小売業として扱われます。

また、Q&A集ではみなし大企業も対象になると回答されています。大企業の出資が入っていることだけを理由に申請を諦める必要はありません。ただし、国又は地方公共団体の出資を受けている事業者は対象外です。

本社が都外でも、都内事業所への導入なら対象になる

判定の基準は本社の所在地ではなく、補助対象設備を設置する事業所の所在地です。Q&A集では次のように整理されています。

  • 事業者の住所が他府県でも、都内の事業所への導入は申請できる
  • 本社が都内でも、他府県の事業所への設置は対象外
  • 申請後まもなく都内から他府県へ移転する予定がある場合は申請できない
  • 複数の事業所を所有・使用している場合は、事業所ごとに申請する

なお、工事を担当する施工業者については都外の業者でも構わないとされています。

申請できない事業者の条件

募集要項では、次に該当する事業者は補助対象事業者になれないと定められています。

  • 本事業の補助対象と同一の内容で、国その他の団体(区市町村を除く)から補助金等の交付を受けている、又は受けることが決まっている
  • 法令に基づく必要な許可の取得又は届出がなされていない(用途地域の制限に注意が必要)
  • 税金の滞納がある
  • 刑事上の処分を受けている
  • 国又は地方公共団体の出資を受けている
  • 暴力団、暴力団員等に該当する(申請時に暴力団排除に関する誓約書の提出が必要)

ここで実務上つまずきやすいのが、2つ目の許認可です。Q&A集では、建築基準法及び環境確保条例上「工場」として位置づけられる場合は、必ず認定書を取得したうえで申請するよう案内されています。認定書は工場許認可の申請にあたり区市町村の担当部門から発行されるものを指します。

設置場所の用途地域が第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域のいずれかに該当する場合は、建築基準法第48条ただし書きに関する許可証の提出も求められます。これらは自社だけでは短期間に用意できないため、対象になるかどうかを最初に確認したい項目です。

導入予定の設備が補助対象設備に当たるかを判定する

補助対象設備は「VOC排出削減設備」と「VOC削減装置付空調・換気設備」の2種類です。いずれも共通して、未使用品であること、リース品でないこと、原材料又は消耗品でないことが要件になります。中古品やリース契約での導入は対象になりません。

VOC排出削減設備は14種類が列挙されている

募集要項では、設備の種別ごとに要件と対象工程が定められています。

設備の種別要件工程
1 排ガス処理装置VOCを含む排気の処理のために設置するもの共通
2 局所排気装置他のVOC排出削減設備を稼働させるため、又は原材料を低VOC製品に変更することに伴って必要となるために導入するもの共通
3 溶剤回収装置VOCを含む溶剤を回収する装置共通
4 溶剤再生装置回収したVOCを含む溶剤を再生する装置共通
5 簡易VOC測定機設備又は施設の点検等に際して使用するものに限る共通
6 スプレーガン既存品より塗着効率を向上させるもの、又は塗装材料を低VOC製品に変更するために導入するもの工場内塗装
7 塗装ブース①排ガス処理装置をあらかじめ構成要素として備えるもの ②別個独立の排ガス処理装置と一体的に接続されることが明らかなもの ③塗装材料を水性塗料へ変更するために導入されるもの のいずれか工場内塗装
8 塗料供給配管塗装材料を低VOC製品へ変更するために導入が必要となるもの工場内塗装
9 スプレーガン洗浄機密閉してスプレーガンを洗浄する構造のもの工場内塗装
10 乾燥機(工場内塗装)塗装材料を低VOC製品に変更するために導入することが必要となるもの工場内塗装
11 印刷機印刷の用に供する材料を低VOC製品に変更するために導入が必要となるもの印刷
12 乾燥機(印刷)同上印刷
13 ホットドライ機DHシリーズ(TOSEi)。VOCが削減できるとして公的機関等が認めるものはこの限りでないドライクリーニング
14 乾燥機(ドライクリーニング)HRDシリーズ・QDFシリーズ(TOSEi)、VR-223D(山本製作所)。VOCが削減できるとして公的機関等が認めるものはこの限りでないドライクリーニング

6・8・10・11・12は「低VOC製品への変更のために導入が必要となるもの」という条件が付いています。ここでいう低VOC製品とは、現在使用しているものより単位当たりのVOC含有率が低いもの、又はVOCを含まないものを指します。単に古い機械を新しくするだけの入れ替えではなく、使用する材料の切り替えとセットで説明できるかが判定の分かれ目です。

印刷機については、東京都環境公社が公式サイト上で補足を出しています。運用の利便性の観点から導入するオプションは補助対象外で、ソフトウェアや給排紙トレイなど生産性を向上させることを目的に導入するものが例として挙げられています。この考え方は印刷機以外の設備にも準拠するとされています。

空調・換気設備はVOC吸着フィルターとの組み合わせが条件

VOC削減装置付空調・換気設備は、下記の設備にVOCを吸着捕集するフィルターを組み合わせたものに限られます。本体設備とは別で発注し取り付けた場合も「組み合わせ」として扱われます。

種別要件
高効率換気設備比消費電力0.4W/(㎥/h)以下
熱交換型換気設備JIS B 8628に規定されるもの又は熱交換率40%以上
電気式パッケージ形空調機導入推奨機器指定要綱のエアコンディショナー指定基準、又は都内中小クレジット算定ガイドラインの高効率パッケージ形空調機の認定基準を満たすもの
ガスヒートポンプ式空調機導入推奨機器指定要綱のガスヒートポンプ式冷暖房機の指定基準、又は上記ガイドラインの認定基準を満たすもの
中央熱源式空調機クレジット算定ガイドラインの高効率熱源機器・高効率冷却塔・高効率空調用ポンプの認定基準を満たすもの
ルームエアコンJIS C9901(目標年度2010年度)に基づく省エネルギー基準達成率114%以上

フィルターについては、VOCを吸着・捕集することが分かる公的な証明書、又は計量証明を受けた測定結果の添付が必要です。Q&A集でも、省エネ促進税制対象機器から選ぶだけでは足りず、VOC削減の公的な証明が別途必要になると回答されています。

機器が要件を満たすかどうかは、電気式パッケージ形空調機とガスヒートポンプ式空調機は導入推奨機器の検索ページ、ルームエアコンは省エネ型製品情報サイトで確認できます。募集要項では、導入推奨機器に指定されていない機器を選んだ場合、基準を満たしているかの確認に時間を要する場合があるとされています。

表にない設備でも、VOC対策アドバイザーの助言があれば対象にできる

募集要項には、上記の表にない設備を対象にする道も用意されています。東京都が派遣するVOC対策アドバイザーからVOC排出削減効果があるとして助言を受け、申請者がその旨を東京都に報告した設備は、表にかかわらず補助対象設備とすることができるという規定です。

アドバイザー派遣は東京都環境局の制度で、利用は必須ではありません。派遣を希望する場合は、まず化学物質対策課(電話03-5388-3457)に電話で事前相談し、派遣依頼書をメール又は郵送で提出する流れです。技術的助言を希望する場合の派遣日時は、通常の操業状態の日時とするよう案内されています。詳細は東京都環境局のVOC対策アドバイザー派遣制度のページで確認できます。

既存のデジタル印刷機を別のデジタル印刷機に更新する場合など、削減効果の説明が難しいケースについても、Q&A集ではメーカーによる保証等の計算書か、アドバイザーからの助言と報告によって効果を明確に示すよう求められています。日程調整が必要な制度のため、設備選定の段階で相談するかどうかを決めておくと後戻りが減ります。

新設・増設・更新のどの導入区分に当たるかを整理する

申請内容は、次の3つの導入区分のいずれかに該当している必要があります。いずれにも当てはまらない場合、申請を受け付けられないことがあります。

  • 新設:これまで補助対象に該当する機器の設置がなかった事業所に、新しく設置する
  • 増設:既に同じ種類の設備がある状態で、さらに追加で設置する
  • 更新:古くなった既存設備を撤去・処分し、新しい設備に入れ替える

更新を選ぶ場合は、実績報告時にマニフェスト伝票の提出が必要になります。撤去した設備が確かに当該事業所から搬出されたことを示す書類のため、工事を発注する段階で施工業者と取り扱いを確認しておくと確実です。

また、いずれの区分でも導入設備によりVOC排出量の削減が見込まれることが必要です。VOC削減装置付空調・換気設備の場合は、これに加えて作業環境の改善効果と省エネ化が見込まれること、更新の場合は既存設備と比べて原油換算エネルギー使用量が削減されていることが求められます。

補助額を計算する|消費税の扱いと端数処理まで含めた計算式

補助金額は、補助対象設備1台ごとの補助対象経費の3分の2です。ただし、単純に見積総額へ3分の2を掛けた額にはなりません。交付要綱に基づく次の3つのルールが入ります。

  • 消費税及び地方消費税に相当する額は除く(Q&A集でも消費税は補助対象外と回答)
  • 千円未満の端数は切捨て
  • 上限は補助対象設備1台ごとに2,000万円(下限額の定めはない)

計算式にすると次のとおりです。

補助金額=補助対象経費(税抜)×2/3 ※千円未満切捨て、1台につき2,000万円が上限

計算例

以下は制度のルールに沿った計算例で、実際の採択事例ではありません。消費税率は10%として計算しています。

ケース補助対象経費(税抜)補助金額自己負担(税抜分+消費税)
端数が出る例385万円385万円×2/3=2,566,666円→2,566,000円(千円未満切捨て)1,284,000円+消費税385,000円=1,669,000円
上限に届かない例1,200万円1,200万円×2/3=800万円400万円+消費税120万円=520万円
上限に達する例(1台)3,600万円3,600万円×2/3=2,400万円→上限適用で2,000万円1,600万円+消費税360万円=1,960万円

上限は「1申請あたり」ではなく「補助対象設備1台ごと」に設定されています。複数台を導入する場合は、台ごとに補助対象経費を分けて計算することになります。

なお、Q&A集では交付決定額の増額は承認していないと明記されています。交付決定後に計画変更で工事費が増えても、交付決定通知書に記載された額が補助額の上限です。見積の精度がそのまま受け取れる額の上限を決めることになります。

区市町村の補助金を併用する場合は差引き調整が入る

本事業と同一の内容で国その他の団体から補助金等を受けている場合、その事業者は補助対象事業者になれません。ただし、区市町村はこの「その他の団体」から除かれており、区市町村の補助制度との併用が想定されています。

併用する場合は、本補助金の額と区市町村の補助等額の合計が補助対象経費を上回るとき、その超過額を本補助金から差し引いた額が交付されます。たとえば補助対象経費900万円に対し、本補助金600万円と区市町村補助400万円で合計1,000万円になる場合、超過分の100万円を差し引いた500万円が本補助金の交付額になります。

募集要項では、同一の補助対象経費について区市町村から補助を受ける場合は、区市町村側にも可否を確認するよう求められています。

補助対象経費と補助対象外経費の境界

補助対象経費は設計費、設備費、工事費、処分費の4項目です。既存設備の撤去・処分に係る費用が対象に含まれる点は、更新を検討している事業者にとって金額に効いてきます。

項目対象になる例対象外になる例
設計費補助対象設備の導入等に係る設計に必要な経費本事業と直接関係のない設計に要した費用
設備費購入・製造・据付に必要な経費、事業実施に必要不可欠な付属機器、機器搬入費、機器据付費、総合試験調整費、立会検査費、配管耐圧検査費、冷媒ガスの回収及び充填作業費、養生費定められた補助対象設備以外の計測機器・装置、必要不可欠とは言えない付属機器、生産効率の向上を目的としたオプション品
工事費補助事業の実施に不可欠な配管・配電等の工事に必要な経費(労務費、材料費、基礎工事、断熱・保温等の設置工事など)安全対策費、土地の取得・賃貸・管理等に要する費用、道路使用許可申請費用、本事業と直接関係のない工事
処分費本事業に係る設備の撤去・処分費本事業と直接関係のない設備機器等の撤去・処分に要した費用
その他共通仮設費、現場管理費、一般管理費、諸経費(運搬費、租税公課、保険料、従業員給料手当、事務用品費など)、補助事業経費の積算に関する費用、公社に提出する申請書類等の作成費用

見落としやすいのが最後の行です。申請書類の作成費用や諸経費は補助対象外のため、外部に書類作成を依頼した費用を補助対象経費に含めることはできません。そもそも代行による申請自体が認められていない制度です。

もう1点、自社や資本関係のある会社から調達する場合は「利益等排除」の対象になります。自社調達や100%同一資本のグループ企業からの調達では、原価をもって補助対象経費とし、原価を証明できない場合は売上総利益率を用いて利益相当額を差し引いた額が補助対象経費になります。持株比率20%以上100%未満の関係会社からの調達も対象です。該当する場合は製造原価明細か決算報告書の提出が必要になります。

申請から入金までを締切から逆算する

この制度は「申請して終わり」ではなく、交付決定後に工事を行い、実績報告を経て入金という流れです。募集要項に示されている令和8年度交付申請分の日程は次のとおりです。

段階時期
交付申請の受付令和8年4月1日~令和9年3月31日17時(予算到達で早期終了)
審査~交付決定申請受理後おおむね2か月
工事契約・着工交付決定後(交付決定前の契約は不可)
実績報告書の提出工事完了後60日以内、又は令和9年11月30日のいずれか早い日
補助金の交付額の確定通知書送付後おおむね1か月以内(令和10年3月31日まで)

実績報告の期限から逆算すると申請時期が決まる

ここで効いてくるのが、実績報告の期限が令和9年11月30日で頭打ちになる点です。交付申請の受付自体は令和9年3月31日まで続きますが、交付決定に約2か月かかることを踏まえると、年度末近くに申請した場合、工事と実績報告までの期間はかなり圧縮されます。

逆算の目安は次のようになります。実績報告を令和9年11月30日までに終える必要があるため、工事完了はそれより前。工事は交付決定後にしか契約できず、交付決定は申請からおおむね2か月後。つまり、工期の長い設備ほど申請を前倒しする必要があります。

申請前に着手できる準備と、着手してはいけない行為

申請前に進めておける準備と、進めてはいけない行為は明確に分かれています。

  • 申請前に進めておくもの:GビズIDプライムの取得、2社以上からの見積取得、商業登記簿謄本の取得、工場認定書や用途地域に関する許可の確認、原材料のSDSの収集、工事前写真の撮影、必要に応じたVOC対策アドバイザーへの事前相談
  • 交付決定前に行ってはいけないもの:施工業者等への発注、工事契約の締結、設備の購入

募集要項の冒頭では、交付決定前に発注・契約等を行っていた場合は、例外なく補助金を交付することができないと明記されています。Q&A集でも同じ回答が示されています。納期の確認や見積の取得は申請前でも問題ありませんが、正式な発注は交付決定通知を受けてからです。

GビズIDについては、令和8年度の交付申請からJグランツでの電子申請に変わったため必須になりました。発行手続きに日数がかかるアカウントのため、見積を集める段階と並行して取得を進めておくと、交付決定までの2か月を後ろにずらさずに済みます。

なお、計画変更の可能性が生じた場合や、予期せぬ事情で期間内に完了できないと見込まれる場合は、速やかに東京都環境公社へ相談するようQ&A集で案内されています。機種変更や工期の延長は、事前に補助事業計画変更申請書を提出する対象です。

申請に必要な書類と、申請不備が起こりやすいポイント

先着順の制度で、書類に不備があると是正されるまで受付されない以上、書類要件を先に把握しておくことに実利があります。様式は東京都環境公社の公式ページ又はJグランツの申請画面から最新のものをダウンロードして使用します。紙媒体での郵送やFAXによる配布は行われていません。

交付申請時に提出する主な書類

  • 提出物チェックリスト、補助金交付申請書(第1号様式)、内訳明細表(共通様式1)
  • 空調設備の新旧仕様入力表(共通様式2)/換気設備の新旧仕様入力表(共通様式3)※該当設備を導入する場合
  • 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 設立認可書(社会福祉法人の場合)
  • 見積書の写し
  • 敷地内平面図、設備配置図、特記仕様書又はカタログ等
  • フィルター性能の証明書、空調設備の要件が確認できる証憑(換気・空調設備を申請する場合)
  • 工場認定書、建築基準法第48条ただし書きに関する許可証(該当する場合)
  • 工事前写真(カラー写真)
  • VOCについて確認できる資料(原材料のSDS等)
  • 建物の全部事項証明書、賃貸借契約書又は建物所有者からの設置承諾書(申請者が建物所有者でない場合)
  • 購入伝票等(更新・増設でVOC排出を削減できる機器を導入する場合。VOC含有率1%以下なら不要)
  • 自社製品の調達等に係る経費の算定資料(利益等排除に該当する場合)

Q&A集では、機器についてのSDSは不要だが原材料についてのSDSはすべて必要と回答されています。乾燥機を導入する場合は、乾燥機だけでなく冷凍機の写真の提出も求められます。

見積書は2社以上、一式表記は認められない

見積書には、他の補助金と比べても細かい条件が設定されています。

  • 2社以上から取得する(処分費を計上する場合は、処分費についても2社から取得する)
  • 取得したすべての見積書を添付する
  • 申請者宛であること、見積発行者の社判の押印があること
  • 作成日が本補助金の申請受付開始日以降であること
  • 申請時点で有効期限内であること、支払方法の記載があること
  • 件名等に補助事業の名称や設置事業所の住所の記載があること
  • 一式表記は行わず、費用の算出根拠を必ず示すこと

一式表記については、内訳が不明の場合は補助対象外経費になると募集要項に明記されています。Q&A集でも、概算であっても一式で計上せず、すべての品目について数量と単価が記載された内訳を業者に求めるよう案内されています。見積依頼の時点でこの条件を施工業者に伝えておかないと、取り直しで受付が遅れます。

また、補助対象事業と直接関係のない経費を含めないことも条件です。やむを得ず同一工事に含める場合は、内訳で補助対象経費と補助対象外経費を明確に分ける必要があります。

登記簿謄本は発行後3か月以内、登記情報提供サービスの電子データは不可

商業登記簿謄本は発行後3か月以内の履歴事項全部証明書が必要です。「登記情報提供サービス」で取得した電子データは認められません。この点は、同じ書類でも建物の全部事項証明書(申請者が建物所有者でない場合に提出)では登記情報提供サービスの電子データでも可とされており、扱いが異なります。

中小企業団体・中小企業等協同組合の場合は定款及び組合名簿等を添付します。個人事業主の場合は、青色申告者であることを証明する書類(写し)の直近1か年分と、開業届等の職業を確認できる公的書類(写し)を併せて提出します。

支払いは現金又は銀行振込に限られる

実績報告の段階で影響するのが支払方法です。募集要項では、支払方法は必ず現金又は銀行振込で実施することとされ、クレジット、手形、相殺による支払は認められません

支払の証憑としては、金融機関発行の証明書等(ATMの振込明細、金融機関窓口での振込明細、ネットバンキングの振込履歴画面の印刷など)を提出します。原則として申請者本人が支払ったことを証明するものである必要があります。工事契約の段階で支払条件を決めるため、契約前に確認しておきたい項目です。

なお、補助金は工事完了と実績報告を経てから交付される後払いの制度です。設備費と工事費はいったん全額を自社で支払うことになるため、支払時期と入金時期のずれを踏まえた資金繰りの確認が必要になります。

申請手順

令和8年度に交付申請する場合の流れは次のとおりです。令和7年度に交付申請済みの事業者は、実績報告等を電子メール(kaizen-voc@tokyokankyo.jp)で行う扱いになっており、手続きが分かれている点に注意してください。

  1. 募集要項とQ&A集を確認し、対象工程・対象設備・導入区分を整理する
  2. GビズIDプライムを取得する
  3. 必要に応じてVOC対策アドバイザーの派遣を東京都環境局に相談する
  4. 工場認定書や用途地域に関する許可など、取得に時間がかかる書類を確認する
  5. 2社以上から数量・単価の内訳が入った見積書を取得する
  6. 工事前写真を撮影し、様式一式に記入して提出物チェックリストで確認する
  7. Jグランツから交付申請を行う(代行申請は不可)
  8. 審査を経て交付決定通知を受ける(おおむね2か月)
  9. 交付決定後に工事契約・発注を行い、設備を導入する
  10. 工事完了後60日以内又は令和9年11月30日のいずれか早い日までに実績報告書を提出する
  11. 検証・現地調査を経て額の確定通知を受け、おおむね1か月以内に補助金が入金される

申請前の段階では原則として申請書類の確認等は行われません。窓口への持参や郵送も受け付けられていません。問い合わせる際は、募集要項や交付要綱を確認したうえでヘルプデスクへ連絡する形になります。公社は施工業者のあっせんや書類作成の代行、工事内容や費用の相談も受け付けていません。

交付決定後に発生する義務と注意点

補助金の入金で手続きが終わるわけではありません。交付要綱では、設備の導入後にも複数の義務が定められています。

VOC削減効果の報告と都の調査への協力

補助対象事業者には、設備導入によるVOC削減及び省エネ化の効果を都へ報告する義務があります。加えて、都のVOC削減設備の普及促進に資するためのセミナー等での事例発表やアンケート調査、都が行う調査への協力も求められます。これは補助条件の一つとして公式に示されている内容です。

法定耐用年数の期間は設備を処分できない

取得財産等は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定められた法定耐用年数の期間、効率的に運用することとされ、処分が制限されます。ここでいう処分には次の行為が含まれます。

  • 補助金の交付の目的外に使用すること
  • 貸付け・譲渡すること
  • 他の物件と物々交換すること
  • 担保物にすること
  • 廃棄すること

承認を得て処分する場合は、次の算出金を返還することになります。

算出金の額=補助額-(補助額×経過期間÷法定耐用年数の期間)

経過期間は設置完了日からの月数で計算し、1か月に満たない端数は1か月として計算します。設備の入れ替えサイクルが短い事業所では、導入時点でこの制限を織り込んでおく必要があります。

帳簿と証拠書類は5年間保存する

補助事業の経理については、収支を明確にした証拠書類を整備する必要があります。帳簿や証拠書類は、実績報告書を提出した日の属する公社の会計年度終了の日から5年間管理・保存する義務があり、都又は公社から開示を求められた場合は応じることになります。

虚偽記載や決定前発注は交付決定の取消しと加算金の対象になる

募集要項の冒頭には、提出書類にいかなる理由があっても事実と異なる記載があってはならないこと、交付決定前に発注・契約等を行っていた場合は例外なく補助金を交付できないことが明記されています。

これらに違反した場合は交付決定その他の決定が取り消され、既に交付されている場合は年10.95%の利率による加算金を加えて返還することになります。また、交付決定後に提出期限のある書類を期限までに提出しなかった場合も、交付決定が取り消されます。

令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業のまとめ

令和8年度省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業は、都内で工場内塗装(工業塗装・自動車板金塗装)、印刷、ドライクリーニングのいずれかの工程を持つ中小企業者等が、VOC排出削減設備やVOC削減装置付空調・換気設備を導入する費用の3分の2(1台あたり上限2,000万円)を受け取れる制度です。

判断の要点を整理すると次のようになります。

  • 受付は先着順で、予算を超過した日の申請は抽選。書類不備があると是正まで受付されない
  • 交付申請の受付は令和8年度までとされており、令和9年度以降の受付は公表されていない
  • 補助対象設備は募集要項の表に14種類が列挙されており、型番が指定されている設備もある
  • 補助額は税抜の補助対象経費×2/3、千円未満切捨て、1台2,000万円が上限。交付決定額の増額は認められない
  • 実績報告の期限は工事完了後60日以内又は令和9年11月30日のいずれか早い日で、申請が遅いほど工期が圧迫される
  • 交付決定前の発注・契約は例外なく対象外。GビズIDと見積2社以上の準備を申請前に済ませる

設備の要件や提出書類は年度途中で更新されることがあります。申請にあたっては、公益財団法人東京都環境公社の省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業のページから最新の募集要項Q&A集、様式一式を確認してください。制度の概要は東京都環境局のページ、公募情報はJグランツの公募詳細ページでも確認できます。