事業用の建物を所有・管理する事業者にとって、光熱費の高騰と脱炭素への対応は、避けて通れない経営課題になっています。
こうした課題の解決を後押しするのが、環境省が実施する脱炭素ビルリノベ事業です。
この制度は、既存の業務用建築物に断熱改修や高効率設備を導入する取り組みを支援し、省エネルギーと脱炭素化を同時に進めることを目的としています。
補助率は対象経費の1/2〜1/3、補助上限額は1事業あたり10億円と、大規模な改修にも対応できる手厚い内容が特徴です。
本記事では、脱炭素ビルリノベ事業の対象者や対象経費、補助率、そして申請手順までをわかりやすく解説します。
申請を検討されている事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
脱炭素ビルリノベ事業の基本情報
| 正式名称 | 令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業) |
| 対象地域 | 全国 |
| 実施機関 | 環境省(執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ〈SII〉) |
| 対象者 | 国内の既存業務用建築物の建築主等 |
| 対象業種 | 全業種(建設業・製造業・卸売業/小売業・不動産業・宿泊業/飲食サービス業・医療/福祉 等) |
| 対象経費 | 設備費・工事費・設計費 |
| その他要件 | ZEB基準水準の省エネ性能達成、BEMS等によるエネルギー管理 |
| 補助対象外 | 交付決定前に契約・発注した経費 等 |
| 申請期間 | 2026年6月4日〜2026年11月30日23:59 |
| 上限金額 | 1事業あたり10億円(下限額2百万円) |
| 補助率 | 対象経費の1/2〜1/3 |
| 問い合わせ先 | SII 脱炭素ビルリノベ事業事務局(TEL 0120-102-912) |
補助金・助成金の正式名称
この制度の正式名称は、令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)です。
名称が長いため、執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブは、脱炭素ビルリノベ事業という通称で案内しています。
検索や問い合わせの際は「脱炭素ビルリノベ」という通称を使うと情報にたどり着きやすいです。
対象都道府県・市区町村
脱炭素ビルリノベ事業は、環境省が全国を対象に実施する国の補助事業です。
特定の都道府県や市区町村に限定されず、国内の業務用建築物であれば地域を問わず申請できます。
そのため、地方に施設を持つ事業者でも活用しやすい制度といえます。
実施機関
本事業の所管は環境省で、実際の公募や審査は執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が担っています。
SIIは省エネや再エネ関連の補助金を数多く執行してきた団体で、申請の受付から交付決定、実績報告までを一括して管理します。
問い合わせ先はSIIの脱炭素ビルリノベ事業事務局となります。
対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
対象となるのは、国内の既存業務用建築物において脱炭素化の改修を計画する建築主等です。
建物を所有する法人や個人事業主のほか、テナントや管理者など、公募要領に定められた要件を満たす事業者が対象になります。
具体的な対象者の要件は公募要領の12〜13ページに①〜⑪として整理されているため、申請前に必ず確認してください。
対象業種
対象業種は幅広く、建設業や製造業、卸売業・小売業、不動産業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉など、ほぼ全ての業種が含まれます。
業種よりも「対象となる建物と改修内容の要件を満たすか」が重視される制度です。
そのため、事務所ビルや商業施設、学校、病院、ホテルなど、さまざまな用途の建物が活用の候補となります。
対象経費
補助の対象となるのは、脱炭素改修に必要な設備費・工事費・設計費です。
具体的には、断熱窓や断熱材、業務用エアコン等の高効率空調、制御機能付きLED照明器具、業務用給湯器、BEMS(ビルエネルギー管理システム)などの導入費用が含まれます。
対象製品はあらかじめ型番登録された製品に限られるため、公式サイトの型番検索で確認しておくと安心です。
その他要件
改修後には、外皮性能を示すBPIが1.0以下となることが求められます。
あわせて、一次エネルギー消費量を省エネルギー基準から用途に応じて削減する必要があり、ホテル・病院・百貨店・飲食店等では30%程度、事務所・学校等では40%程度以上の削減が要件です。
BEMS等によるエネルギー管理を行うことも必須の要件となっています。
補助対象外となるもの
交付決定前に契約や発注を行った経費は、補助の対象外となります。
また、型番登録されていない製品や、要件を満たさない改修に要した費用も対象になりません。
契約・発注は必ず交付決定後に行うことが大原則ですので、着工のタイミングには十分注意してください。
申請期間
令和8年度の公募期間は、2026年6月4日から2026年11月30日23:59までです。
交付決定額の合計が予算額に達した場合は、期間内であっても受付を終了する点に注意が必要です。
準備には一定の時間がかかるため、早めに着手することをおすすめします。
上限金額・助成額
補助上限額は1事業あたり10億円で、下限額は2百万円に設定されています。
事業全体の予算は令和10年度までで95億円が確保されています。
複数年度にわたる大規模改修にも対応できる点が、この制度の大きな魅力です。
補助率
補助率は、補助対象となる設備費・工事費・設計費の1/2〜1/3です。
具体的な補助率は改修内容や条件によって異なるため、公募要領の16ページやチラシ裏面で確認してください。
自己負担額の見積もりにも関わる重要な項目ですので、早い段階で把握しておきましょう。
問い合わせ先
問い合わせ先は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)の脱炭素ビルリノベ事業事務局です。
電話番号は0120-102-912で、受付時間は平日の10:00〜12:00および13:00〜17:00となっています。
メールで問い合わせる場合は、件名に必ず【質問】と付けて送付するルールになっています。
公式公募ページと確認すべきこと
制度の詳細は、Jグランツの公募詳細ページと、SIIが運営する脱炭素ビルリノベ事業の公式サイトで確認できます。
特に公募情報ページには、補助率や上限額、対象要件、公募要領などがまとめられています。
申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要になるため、取得に時間がかかることを見込んで早めに準備しておきましょう。
脱炭素ビルリノベ事業を対象者が活用すべき理由(メリット)
脱炭素ビルリノベ事業を活用する最大のメリットは、多額の改修費用の一部を国が負担してくれる点にあります。
断熱改修や高効率設備の導入は初期投資が大きくなりがちですが、補助率1/2〜1/3の支援を受けることで、自己負担を大きく抑えられます。
改修後は光熱費そのものが下がるため、補助金と省エネ効果の二重のメリットが得られます。
さらに、建物の快適性や資産価値の向上、脱炭素に取り組む企業としての社会的評価の向上にもつながります。
取引先や金融機関から脱炭素経営を求められる場面が増えている今、こうした制度を活用する意義は大きいといえます。
脱炭素ビルリノベ事業を申請すべき人とそうでない人の特徴
- 申請すべき人
- 見送ったほうが良い人の特徴
申請すべき人
- 老朽化した事務所ビルや商業施設の省エネ改修を検討している事業者
- 光熱費の高騰を設備更新で根本的に改善したい事業者
- ZEB基準水準の省エネ性能を目指せる改修計画がある事業者
- 脱炭素経営を対外的にアピールしたい企業
- 交付決定後に着工できる余裕を持ったスケジュールを組める事業者
見送ったほうが良い人の特徴
- すでに契約・発注を済ませてしまっている事業者
- ZEB基準水準の省エネ性能を満たす改修が難しい建物の所有者
- 短期間ですぐに工事を始めたい事業者
- 型番登録された対象製品を使う予定がない事業者
- エネルギー計算や実績報告などの事務対応が難しい事業者
その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
- 新事業進出補助金
- ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
- 中小企業省力化投資補助金
- 小規模事業者持続化補助金
新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新たな分野へ挑戦する中小企業を支援する制度です。
新市場への展開や新製品の開発に必要な設備投資などを幅広く後押ししてくれるため、事業の柱を増やしたい企業に向いています。
ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
ものづくり補助金は、革新的な新製品やサービスの開発、生産プロセスの改善に取り組む中小企業を支援する制度です。
機械装置やシステム構築などへの投資が対象となり、生産性向上を目指す製造業やサービス業に広く利用されています。
中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消につながる省力化設備の導入を支援する制度です。
ロボットやIoT機器などを活用して業務を効率化したい事業者にとって、心強い選択肢となります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度です。
比較的少額から使いやすく、チラシ作成やウェブサイト構築など、身近な販促活動にも活用できます。
脱炭素ビルリノベ事業の申請に必要なもの
- 申請に必要な書類一覧と取得方法
- 記載例はどこで確認できるか
申請に必要な書類一覧と取得方法
申請には、交付申請書や事業計画に関する書類、改修後の省エネ性能を示すエネルギー計算の結果などが必要です。
エネルギー計算は、指定されたWebプログラムの標準入力法またはモデル建物法のいずれかで行います。
各種様式は公式サイトの各種資料ページから最新版をダウンロードして使用する必要があります。
あわせて、電子申請に使うGビズIDプライムのアカウントも事前に取得しておきましょう。
記載例はどこで確認できるか
記載例や申請時の注意点は、SIIが運営する脱炭素ビルリノベ事業の公募情報ページで確認できます。
公募要領や交付申請の手引き、よくある不備をまとめた資料などが公開されています。
申請可否を判断できるチェックシートも用意されているため、まずはそちらで対象になるか確認すると効率的です。
脱炭素ビルリノベ事業の採択率を上げる事業計画書の作り方
- 市場性を具体的に書く
- 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
- この制度を利用する必要性・重要性を記載
- 実行体制を明記する
市場性を具体的に書く
事業計画では、改修後にどのような省エネ効果やコスト削減が見込めるのかを、数値を交えて具体的に示すことが大切です。
削減できるエネルギー量やCO2排出量を根拠とともに提示すると、計画の説得力が高まります。
抽象的な表現ではなく、建物の用途や利用状況を踏まえた現実的な見通しを描きましょう。
差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
今回の改修が、自社の建物や事業にとってどのような独自の価値を生むのかを明確に記載します。
単なる設備更新ではなく、経営戦略と結びついた改修であることを伝えると評価につながりやすくなります。
周辺施設や同業他社との違いを意識して記述すると、計画の魅力が伝わります。
この制度を利用する必要性・重要性を記載
なぜ補助金を活用してまで今回の改修を行う必要があるのか、その背景と重要性を丁寧に説明します。
脱炭素社会の実現という制度の目的と、自社の取り組みが一致していることを示すことがポイントです。
制度趣旨に沿った計画であるほど、審査での納得感が得られやすくなります。
実行体制を明記する
計画を確実に実行できる体制が整っていることを、具体的に示す必要があります。
社内の担当者や施工事業者、ZEBプランナーなど関係者の役割分担を明記すると信頼性が増します。
資金計画やスケジュールにも無理がないことを示し、実現可能性の高さをアピールしましょう。
脱炭素ビルリノベ事業の申請手順
- GビズIDプライムのアカウントを取得する
- 公募要領やチェックシートで対象になるか確認する
- 改修計画を立て、Webプログラムでエネルギー計算を行う
- 交付申請に必要な書類を準備し、jGrantsへ入力・申請する
- SIIによる審査を経て交付決定を受ける
- 交付決定後に契約・発注し、改修工事を実施する
- 中間報告・実績報告・事業報告を行い、補助金の交付を受ける
脱炭素ビルリノベ事業を自社で申請する際の注意点
最も注意すべきは、交付決定を受ける前に契約や発注をしないことです。
フライングで着工してしまうと、その経費は補助対象外となってしまいます。
また、改修後の省エネ性能を満たすためのエネルギー計算は専門的な内容を含むため、早めに準備を進める必要があります。
予算額に達すると受付が終了する可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールで申請に臨みましょう。
自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
- 制度選定の精度が上がる
- 事業計画の質が上がる
- 採択後の実務まで見据えられる
制度選定の精度が上がる
補助金に詳しい専門家に相談すると、自社の状況に本当に合った制度を選びやすくなります。
似た制度が複数ある中で、最も有利な選択肢を提案してもらえるのは大きな利点です。
本事業ではZEBプランナーへの相談も可能なため、専門家の力を借りることを検討してみましょう。
事業計画の質が上がる
専門家の支援を受けることで、審査担当者に伝わりやすい事業計画書を作成できます。
要件の解釈や数値の根拠づけなど、専門的な視点での助言が得られます。
結果として、計画全体の完成度と説得力が高まります。
採択後の実務まで見据えられる
補助金は採択されて終わりではなく、その後の実績報告や事業報告まで適切に対応する必要があります。
交付決定後の煩雑な手続きまで見据えて支援を受けられると、担当者の負担を大きく減らせます。
本業に集中しながら制度を活用したい事業者にとって、専門家の存在は心強い味方となります。
脱炭素ビルリノベ事業を不正受給するとどうなるのか
- 交付取消と補助金返還につながるリスク
- 不正が発覚する情報提供の仕組み
交付取消と補助金返還につながるリスク
虚偽の申請や補助金の目的外使用が判明した場合、交付決定の取消しや補助金の返還を求められることがあります。
返還にあたっては加算金が課される場合もあり、事業者にとって大きな負担となります。
悪質なケースでは事業者名が公表され、社会的な信用を大きく損なうおそれがあります。
不正が発覚する情報提供の仕組み
補助金の不正は、実績報告時の確認や交付後の検査などを通じて発覚することがあります。
所管する行政機関や執行団体には、外部からの通報や情報提供が寄せられる仕組みも整えられています。
正しい手続きと適切な経理処理を徹底することが、結果的に事業者自身を守ることにつながります。
脱炭素ビルリノベ事業のまとめ
脱炭素ビルリノベ事業は、既存の業務用建築物の脱炭素改修を、補助率1/2〜1/3・上限10億円という手厚い内容で支援する制度です。
光熱費の削減と脱炭素経営を同時に実現できるため、建物を所有・管理する事業者にとって大きなメリットがあります。
一方で、交付決定前の着工は対象外になるなど、注意すべき点も少なくありません。
申請前には必ず最新の公募要領を確認し、スケジュールに余裕を持って準備を進めましょう。
詳しい情報は、Jグランツの公募詳細ページや脱炭素ビルリノベ事業の公式サイトで確認できますので、あわせてご覧ください。
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