東京都|スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業補助金を解説

補助金

農業や漁業の現場が抱える困りごとは、技術で解けるものが数多く残されています。

東京都は令和8年度、その解決役をスタートアップと中小企業に託す補助制度を用意しました。

補助対象経費の上限は年1億円、補助率は3分の2以内で、1年あたり最大6,666万円が交付されます。

都が提示した課題一覧のいずれかに応える製品や技術を開発・改良し、実用化まで持っていくことが条件になっています。

申請の受付は令和8年7月14日に始まり、8月20日で締め切られます。

この記事では、東京都が公開している募集要項とJグランツの公募情報をもとに、対象者・対象経費・補助額・審査の流れを順に整理してお伝えします。

  1. 農林水産分野の課題解決事業補助金の基本情報
    1. 補助金・助成金の正式名称
    2. 対象都道府県・市区町村
    3. 実施機関
    4. 対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)
    5. 対象業種
    6. 対象経費
    7. その他要件
    8. 補助対象外となるもの
    9. 申請期間
    10. 上限金額・助成額
    11. 補助率
    12. 問い合わせ先
    13. 公式公募ページと確認すべきこと
  2. 農林水産分野の課題解決事業補助金を対象者が活用すべき理由(メリット)
  3. 農林水産分野の課題解決事業補助金を申請すべき人とそうでない人の特徴
    1. 申請すべき人
    2. 見送ったほうが良い人の特徴
  4. その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例
    1. 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
    2. ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
    3. 中小企業省力化投資補助金
    4. 小規模事業者持続化補助金
  5. 農林水産分野の課題解決事業補助金の申請に必要なもの
    1. 申請に必要な書類一覧と取得方法
    2. 記載例はどこで確認できるか
  6. 農林水産分野の課題解決事業補助金の採択率を上げる事業計画書の作り方
    1. 市場性を具体的に書く
    2. 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
    3. この制度を利用する必要性・重要性を記載
    4. 実行体制を明記する
  7. 農林水産分野の課題解決事業補助金の申請手順
  8. 農林水産分野の課題解決事業補助金を自社で申請する際の注意点
  9. 自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ
    1. 制度選定の精度が上がる
    2. 事業計画の質が上がる
    3. 採択後の実務まで見据えられる
  10. 農林水産分野の課題解決事業補助金を不正受給するとどうなるのか
    1. 交付決定が取り消され返還を求められる場面
    2. 実態と申請内容のずれが明らかになる仕組み
  11. 農林水産分野の課題解決事業補助金のまとめ

農林水産分野の課題解決事業補助金の基本情報

正式名称 令和8年度 スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業補助金(一般型)
対象地域 東京都
実施機関 東京都(運営事務局:一般社団法人AgVenture Lab)
対象者 スタートアップ、中小企業者(会社・個人事業者)、中小企業グループ(共同申請)
対象業種 農業・林業、漁業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、学術研究・専門・技術サービス業
対象経費 原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託費、産業財産権出願・導入費、直接人件費、旅費交通費、展示会出展費
補助対象経費の上限 1億円/年
補助上限額 6,666万円/年
補助率 補助対象経費の2/3以内
申請期間 令和8年7月14日(火)~令和8年8月20日(木)
申請方法 電子申請システム「Jグランツ」のみ(GビズIDプライムが必要)
問い合わせ先 スタートアップ等を活用した東京の農林水産業の課題解決事業 運営事務局(一般社団法人AgVenture Lab)

補助金・助成金の正式名称

この制度の公募名は「令和8年度 スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業補助金(一般型)」です。

Jグランツ上の制度名は「スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業」と表記されており、末尾の「(一般型)」は類型を示す部分にあたります。

名称に「スタートアップ等」とある通り、スタートアップだけでなく中小企業者も等号のなかに含まれており、創業間もない企業に限った制度ではありません。

検索の際は「農林水産分野の課題解決事業」という語で調べると、都の専用サイトにたどり着けます。

対象都道府県・市区町村

対象地域は東京都で、都内の市区町村による限定はありません。

ただし解決を目指す課題は「東京の農林水産分野の課題一覧」に掲げられたものに限られるため、開発の題材そのものが都内の現場に紐づく形になります。

補助事業の実施場所は原則として国内の自社事業所であればよく、必ずしも都内に開発拠点を置く必要はありません。

なお自社の事業所が都内のバーチャルオフィスのみという場合は、都が検査を行える場所を原則東京都内に設定することが求められます。

実施機関

実施主体は東京都で、産業労働局の農林水産部門が所管しています。

実務は「スタートアップ等を活用した東京の農林水産業の課題解決事業運営事務局」が担い、その運営を一般社団法人AgVenture Labが受託しています。

運営事務局は補助金の窓口であるだけでなく、採択企業に対して個別メンタリングや実証実験の場の提供、実装に向けたハンズオン支援まで行う点がこの制度の特色です。

つまり資金だけを受け取る制度ではなく、伴走支援と補助金がセットになった枠組みだと理解しておいてください。

対象者(世帯・個人事業主・法人・団体・研究機関)

申請できるのは、スタートアップ、中小企業者、複数企業で構成する中小企業グループのいずれかです。

スタートアップとは、おおむね創業後10年未満または第二創業後10年未満で、革新的なアイデアにより急速な成長を志向する法人を指します。

中小企業者は会社と個人事業者の双方が含まれ、製造業なら資本金3億円以下または従業員300人以下といった業種別の基準が適用されます。

基準日である令和8年7月1日の時点で、国内に登記簿上の本店または支店があり、実質的に1年以上事業を行っているか国内で創業していることが必要です。

大企業が発行済株式の2分の1以上を保有しているなど、実質的に経営へ参画している企業は中小企業者から除かれます。

対象業種

Jグランツの公募情報では、農業・林業、漁業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、学術研究・専門・技術サービス業の6区分が対象業種として示されています。

従業員数の上限は設けられていませんが、中小企業者としての資本金・従業員数の要件は別途かかります。

農業や漁業を営む事業者だけの制度ではなく、センサーやロボット、AIを扱う情報通信業やものづくり企業こそ主役になり得る設計です。

一方で、風俗関連業やギャンブル業など社会通念上支援対象として適切でないと判断される業態は申請できません。

対象経費

補助対象となる経費は7つの区分に整理されています。

原材料・副資材費は、鋼材や機械部品、電機部品、化学薬品など開発に直接使って消費するものが該当します。

機械装置・工具器具費には試作金型、計測機械、測定装置、サーバ、ソフトウェア、クラウドサービス利用料までが含まれます。

委託費は機械加工や設計、試験評価のほか、大学との共同研究費、実証実験に協力する農家への謝金、規格・認証の取得費用も対象です。

開発工程に直接従事した役員・従業員の直接人件費も対象となり、報酬月額に応じて時給1,050円から5,210円までの単価表が適用されます。

このほか産業財産権出願・導入費、国内移動の旅費交通費、展示会の出展小間料が対象に含まれます。

その他要件

補助対象となる事業は4つの条件をすべて満たす必要があります。

具体的には、都が提示した課題の解決を目指すこと、具体的な計画と技術的な開発要素があること、実用化製品等の製造・販売の権利が申請者に帰属すること、市場での販売を通じて広く普及させることの4点です。

申請書に記載した達成目標を満たす成果物が完成し、完了検査で都がそれを確認できて初めて事業完了となり、認められなければ補助金は交付されません。

同一年度の申請は一企業につき1件に限られ、同一テーマで他の公的補助を受けていないことも要件です。

直接人件費の従事時間は1人につき1日8時間、年間1,800時間が上限とされています。

補助対象外となるもの

販売予定がなく研究開発のみを目的とする事業や、他社が開発した技術の実用化を狙う事業は対象になりません。

生産・量産用の機械装置や金型を導入する設備投資、開発・改良の大部分を外注している事業も除外されます。

経費面では、消費税、収入印紙代、振込手数料、通信費、光熱費、事務用品費といった間接経費が対象外です。

パソコンやタブレット、デジタルカメラのように汎用性が高く用途を特定できない機器も、機械装置・工具器具費として認められません。

親会社や子会社など関連会社との取引で生じた経費、手形小切手や電子記録債権による支払いも一切対象外とされています。

申請期間

令和8年度の申請受付期間は、令和8年7月14日(火)から令和8年8月20日(木)までです。

Jグランツ上の受付終了日時は2026年8月21日0時と表示されており、8月20日いっぱいで締め切られる募集要項の記載と整合しています。

申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、発行までに数週間かかる場合があるため、締切間際に取得を始めると間に合いません。

事業の実施期間は交付決定日から令和10年3月31日(金)までが最長で、単年度事業と次年度継続事業のどちらかを応募時に選択します。

令和9年3月31日を超えて事業を続ける場合は、令和9年2月1日までに遂行状況報告書を提出し、都の審査を受ける必要があります。

上限金額・助成額

補助対象経費の上限は1年あたり1億円で、これに補助率3分の2を掛けた6,666万円が1年あたりの補助上限額になります。

Jグランツの公募情報では補助上限額の欄が「-」と表示されていますが、募集要項には明確に金額が記載されています。

複数年度の計画とする場合は各年度で上限が適用されるため、令和8年度と令和9年度の2か年で最大1億3,332万円の交付を受けられる計算です。

ただし次年度分は交付決定時点で予算が約束されているわけではなく、都の継続審査を経る必要があります。

最終的な補助金額は完了検査後の査定で確定するため、交付決定時の補助予定額から減額されることもあります。

補助率

補助率は補助対象経費の3分の2以内です。

確定額の計算は経費区分ごとに行われ、実際に要した補助対象経費に3分の2を乗じた額と交付予定額を比べて低いほうが採用されます。

経費区分ごとに千円未満は切り捨てとなるため、区分をまたいだ合計で計算した金額とは端数分だけずれる点に注意してください。

残りの3分の1は自己負担となりますので、資金計画では自己資金の手当ても併せて説明できるようにしておきましょう。

問い合わせ先

問い合わせ窓口は、スタートアップ等を活用した東京の農林水産業の課題解決事業の運営事務局です。

運営を担うのは一般社団法人AgVenture Labで、所在地は東京都千代田区大手町一丁目6番1号です。

連絡はtokyokadai宛の電子メールアドレスが公表されており、制度の解釈や申請書の書き方に迷った場合はこちらへ相談できます。

また公募説明会の資料とQ&Aが公式サイトに掲載されているため、問い合わせの前に目を通しておくと疑問の多くは解消します。

公式公募ページと確認すべきこと

制度の概要と対象業種の区分はJグランツの公募詳細ページで確認できます。

募集要項、申請様式、課題一覧、Q&Aといった実務資料は東京都の公式特設サイトにまとめて掲載されています。

まず確認すべきは「東京の農林水産分野の課題一覧」で、自社の技術がどの課題に対応するのかを特定できなければ申請の土台が成り立ちません。

なお申請様式は公募期間中にも修正が入ることがあり、令和8年7月31日には資金計画シートの集計範囲が更新されています。

ダウンロード済みの様式で作業している場合は、最新版との差分を必ず確認してください。

農林水産分野の課題解決事業補助金を対象者が活用すべき理由(メリット)

開発資金の3分の2を公費でまかなえることは、資金繰りに余裕のない企業にとって決定的な後押しになります。

それに加えて、この制度には資金以外の価値が二重に組み込まれています。

ひとつは運営事務局によるメンタリングとハンズオン支援で、開発だけでなく実装や普及の局面まで相談相手がつきます。

もうひとつは実証実験の場の提供で、都内の生産者や現場とつながる機会そのものが支援内容に含まれている点は他の開発補助金にない強みです。

解決すべき課題を都があらかじめ提示しているため、ニーズ探索の工程を大幅に短縮できることも見逃せません。

開発した製品の製造・販売権は申請者に帰属する設計になっており、成果をそのまま自社の商材に育てられます。

採択されると事業者名や概要が公表されるため、農林水産分野での実績づくりや資金調達の材料としても働きます。

農林水産分野の課題解決事業補助金を申請すべき人とそうでない人の特徴

  • 申請すべき人
  • 見送ったほうが良い人の特徴

申請すべき人

  • 収穫や播種、受粉を担う機械やロボットを開発しており、都市部の狭い圃場に対応させたい企業
  • 家畜の分娩兆候判定や畜舎の臭気対策など、飼育管理の負担を減らす技術を持つ事業者
  • 急峻な森林で使える林業機械や、AIによる樹種判別の仕組みを開発している企業
  • 水揚げ直後の水産物の鮮度を非破壊で計測する機器を試作している事業者
  • 創業10年未満で、農林水産分野への参入の足がかりを探しているスタートアップ
  • 既存製品を農業現場向けに改良したいが、試作費用と人件費の負担が重い中小企業
  • 複数社で技術を持ち寄り、共同で開発体制を組みたい中小企業グループ

見送ったほうが良い人の特徴

  • 販売の予定がなく、研究成果を出すこと自体が目的になっている場合
  • すでに量産段階にあり、事業化して収益を上げている技術を対象にしたい場合
  • 開発の主要部分を外部委託する前提で、自社に開発体制がない場合
  • 解決したい課題が都の課題一覧のどれにも当てはまらない場合
  • 申請時点で開発・改良がほぼ終わっており、残りは販売だけという段階の場合
  • 同一テーマですでに国や他の自治体から補助を受けている場合
  • 事業税等の滞納があり、納税証明書を用意できない場合

その他にも利用すべき補助金・助成金制度の代表例

  • 新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)
  • ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)
  • 中小企業省力化投資補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠)

既存事業とは違う市場や製品分野へ軸足を移す企業に、まとまった規模の設備投資を後押しする国の制度です。

農林水産分野で開発した技術を別の産業へ横展開する構想があるなら、次の一手としてこちらが視野に入ります。

付加価値額や給与支給総額について達成すべき数値目標が課されるので、絵に描いた成長曲線ではなく実現可能な水準で設計してください。

公募回ごとに要件が調整されますので、応募の前に最新版の公募要領を取り寄せましょう。

ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)

中小企業が革新的な製品やサービスを生み出すための設備投資を支える、利用実績の豊富な制度です。

本記事の制度が試作と実用化までを見るのに対し、こちらは量産へ移る段階の設備を対象にできるという住み分けがあります。

技術の目新しさだけでは通らず、それが売上と利益にどう変わるのかという筋道の説明が採否を分けます。

交付決定より前の発注が対象外になる点は、多くの補助金に共通する基本ルールとして覚えておいてください。

中小企業省力化投資補助金

人手不足を機械やシステムで補うための投資に的を絞った制度です。

農業法人や食品加工の現場であれば、選果や包装の自動化装置がわかりやすい候補になります。

登録済みのカタログ製品から選ぶ方式が用意されており、事業計画の作成負担を抑えたい企業にとって現実的な選択肢です。

導入後は労働生産性の向上を報告することになるため、比較の基準となる現状値を先に測っておきましょう。

小規模事業者持続化補助金

従業員数の少ない事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際、最初に検討されることの多い制度です。

開発した機器を農業関係の展示会で紹介するための資材制作や、自社サイトの刷新といった使い方が考えられます。

申請の前に商工会または商工会議所の確認を受ける必要があり、この工程が地域の支援機関とつながるきっかけになります。

補助額の規模は控えめですが手続が軽く、補助金の実務に慣れる第一歩として適しています。

農林水産分野の課題解決事業補助金の申請に必要なもの

  • 申請に必要な書類一覧と取得方法
  • 記載例はどこで確認できるか

申請に必要な書類一覧と取得方法

  • 申請書(実施計画、資金計画等)/公式特設サイトから指定様式をダウンロードして作成
  • 補足説明資料(企画書、仕様書、図面、システム構成図、競合製品カタログ等)/自社で用意
  • 特許・実用新案・意匠・商標の証拠書類/特許庁のJ-PlatPatなどから取得
  • 見積書(1件税抜100万円以上の機械装置・工具器具費と委託費は2社分以上)/取引先から入手
  • 確定申告書一式(直近2期分、事業開始2年未満は1期分)/税務署へ申告済みの控えを用意
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書、発行後3か月以内)/法務局で取得(法人のみ)
  • 開業届/税務署へ提出済みの控えを用意(個人事業者のみ)
  • 法人事業税及び法人都民税の納税証明書/都税事務所で取得(法人のみ)
  • 代表者の所得税納税証明書その1/税務署で取得(個人事業者のみ)
  • 代表者の住民税の納税証明書/区市町村の窓口で取得(個人事業者のみ)
  • 社歴(経歴)書/会社案内や概要書で代替可、個人事業者は代表者の経歴書
  • 共同事業実施契約書と各社の印鑑証明書/中小企業グループで共同申請する場合のみ

記載例はどこで確認できるか

申請様式のExcelファイルと募集要項は、いずれも東京都の公式特設サイトからダウンロードできます。

同じページには令和8年7月21日に開催された公募説明会の資料が掲載されており、申請書の各欄で何を求められているかが図解されています。

あわせて公開されているQ&Aには申請者からの実際の質問と回答が整理されているため、様式を書き始める前に通読しておくと手戻りを防げます。

産業財産権の公報類の探し方については、J-PlatPatの操作を解説した参考動画も案内されています。

農林水産分野の課題解決事業補助金の採択率を上げる事業計画書の作り方

  • 市場性を具体的に書く
  • 差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載
  • この制度を利用する必要性・重要性を記載
  • 実行体制を明記する

市場性を具体的に書く

審査項目には「市場性・ビジネスモデル」が独立して置かれており、開発の先にある売り方まで見られます。

誰に、いくらで、どの流通経路を通じて売るのかを、想定顧客の規模とともに数字で示してください。

補助期間が終わったあとの量産・販売・普及がフィージブルかどうかまで問われるため、事業期間内だけで完結する説明では評価が伸びません。

都内の農家戸数や漁業経営体数といった公表統計を引用すると、市場規模の見立てに客観性が加わります。

差別化ポイント(自社と他社の違い)を明確に記載

評価項目の「発想力・技術の革新性」では、既存手法に対する圧倒的な優位性があるかが確認されます。

優位性はコスト、精度、速度という3つの軸で語られていますので、この軸に沿って既存製品との差を数値で並べるのが近道です。

自社の技術が特許や実用新案として押さえられているなら、その証拠書類を添付することで独自性の主張が一段と強くなります。

競合製品のカタログを補足説明資料として提出できる欄が用意されている点も活用してください。

この制度を利用する必要性・重要性を記載

「課題解決への寄与」と「東京の農林水産業の活性化への寄与」という2つの評価項目は、いずれも都側の目線で書かれています。

自社が儲かるという話ではなく、都が掲げた課題がどの程度解けるのか、その効果が個別の現場を超えて広がるのかを説明してください。

補助がなければ開発着手が何年遅れるのか、自己資金だけでは試作を何台までしか作れないのかを具体的に書くと、支援の必要性が伝わります。

都市農業という限られた条件下でこそ意味を持つ技術であれば、その特殊性を正面から押し出すほうが響きます。

実行体制を明記する

「体制・意欲」の評価では、技術開発と経営の両方を担う人材がそろっているかが見られます。

設計、製作、検査という各工程の担当者を氏名と役割で示し、全体工程表と対応づけておいてください。

現場を巻き込む体制があるかも問われるため、実証に協力してくれる生産者や連携先が決まっているなら、その名前を書けるよう事前に合意を取っておくと有利です。

直接人件費を計上する場合は、就業規則と賃金規程が整備されているかも採択後に確認されますので、申請前に社内書類を点検しておきましょう。

農林水産分野の課題解決事業補助金の申請手順

  1. 公式特設サイトから募集要項と「東京の農林水産分野の課題一覧」をダウンロードし、自社の技術が該当する課題を特定します。
  2. GビズIDプライムアカウントを未取得の場合は、発行申請を行います。
  3. 申請書様式をダウンロードし、実施計画と資金計画を作成します。
  4. 見積書、確定申告書、登記簿謄本、納税証明書などの添付書類をそろえます。
  5. 単年度事業とするか次年度継続事業とするかを決め、申請書に反映させます。
  6. 令和8年8月20日までに、Jグランツの申請フォームから必要書類をアップロードします。
  7. 一次審査(書類審査)の結果が8月下旬までにJグランツで通知されます。
  8. 一次審査を通過したら、事務局によるヒアリングと必要に応じた現地調査を受けます。
  9. 9月上中旬に都が指定する日時で二次審査(プレゼンテーション審査)に臨みます。
  10. 9月中下旬の総合審査会を経て、9月下旬に採択結果と交付決定が通知されます。
  11. 交付決定後、事業を開始します。交付決定から1〜2か月以内に都の担当職員による事前支援があります。
  12. 令和9年3月31日を超える事業は、令和9年2月1日までに遂行状況報告書を提出します。
  13. 事業終了後15日以内に実績報告書を提出し、完了検査を受けます。
  14. 補助金額の確定通知を受けた後、Jグランツから請求手続を行い、約1か月後に補助金が振り込まれます。

農林水産分野の課題解決事業補助金を自社で申請する際の注意点

まず押さえておきたいのは、この制度が「達成目標を満たす成果物の完成」を補助金交付の絶対条件にしている点です。

開発に着手して経費を使ったとしても、完了検査で目標未達と判断されれば、それまでにかかった全額が補助対象外になります。

したがって申請書の達成目標は、意欲を示す場ではなく、確実に届く水準を第三者が検証できる形で書く場だと考えてください。

支払方法にも厳しい制約があり、手形小切手と電子記録債権による支払いは一切認められず、現金払いは税込10万円未満でやむを得ない場合に限られます。

経費は補助事業者名義の口座からの振込が原則で、代表者個人のカードや社員による立替払いは対象外です。

申請後は都が求める修正以外の加筆・修正ができないため、提出前の読み合わせを必ず行ってください。

なお二次審査には申請者の役員または従業員しか参加できず、コンサルタントや顧問の同席は認められていません。

自社に申請ノウハウが無い場合は専門家に依頼するのもおすすめ

  • 制度選定の精度が上がる
  • 事業計画の質が上がる
  • 採択後の実務まで見据えられる

制度選定の精度が上がる

開発資金を支える制度は国と自治体を合わせると相当な数にのぼり、要件も補助率もそれぞれ違います。

この制度は同一テーマでの他制度との併給が禁じられているため、どの補助金にどの開発テーマを載せるかという配分の設計が結果を左右します。

制度を横断して比較できる専門家に相談すれば、試作段階はこちら、量産設備は別の制度といった振り分けを短時間で描けます。

単年度で申請するか次年度継続で申請するかという判断も、実績のある相手であれば根拠を添えて助言してもらえます。

事業計画の質が上がる

開発の当事者は技術の中身を熟知している一方で、その価値を審査員に伝わる言葉へ置き換える作業は不得手なことが多いものです。

数多くの申請を見てきた専門家は、6つの評価項目それぞれに何を書けば加点されるのかを経験として蓄えています。

社内では当たり前だった開発工程の管理方法や試験データが、外部の視点で整理し直すと実現可能性の裏づけとして生きてくることも珍しくありません。

仕上がった計画書は、二次審査のプレゼンテーション資料の骨格としてもそのまま使えます。

採択後の実務まで見据えられる

この制度は交付決定後の事務負担が軽くなく、遂行状況報告、実績報告、企業化状況報告と提出物が続きます。

とくに直接人件費を計上する場合、作業日報や賃金台帳、全体工程表まで整えなければならず、日々の記録運用が問われます。

補助事業が完了した年度の翌々年度から5年間は企業化状況の報告義務が続くため、長期にわたって伴走してくれる相手を選ぶ価値があります。

経理を区分して記録する体制を交付決定の直後に整えておけば、報告のたびに資料を探し回る事態を避けられます。

農林水産分野の課題解決事業補助金を不正受給するとどうなるのか

  • 交付決定が取り消され返還を求められる場面
  • 実態と申請内容のずれが明らかになる仕組み

交付決定が取り消され返還を求められる場面

募集要項には、偽りや隠匿その他不正の手段で補助金の交付を受けたとき、または受けようとしたときは交付決定を取り消すと定められています。

補助金を申請時の用途と異なる目的に使った場合や、都内で実質的に事業を行っている実態がないと認められた場合も同様です。

取消しの際は不正の内容に加えて、申請者名やこれに協力した関係者の名前まで公表されることがあり、既に受け取った補助金は期限を定めて返還しなければなりません。

この規定は補助金額の確定後も適用され続けるため、事業が終わったから安心という性質のものではありません。

実態と申請内容のずれが明らかになる仕組み

東京都の職員は、補助事業の実施状況、収支、帳簿書類、取得財産について現地調査を行い、報告を求めることができます。

中間検査と完了検査では、開発物や購入した物品が申請書に記載された実施場所に実在するかが目視で確認されます。

購入した機械装置が実施場所に設置・保管されていることを都が確認できない場合、それだけで補助対象外となる旨が募集要項に明記されています。

記載の誤りに気づいたときは、隠さずに変更申請や事務局への相談という正規のルートで申し出ることが、結果として損失を最小に抑える道です。

農林水産分野の課題解決事業補助金のまとめ

令和8年度 スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業補助金は、東京の農林水産業が抱える課題を技術で解こうとするスタートアップと中小企業を支える東京都の制度です。

補助対象経費の上限は年1億円、補助率は3分の2以内で、1年あたり最大6,666万円が交付されます。

対象経費は原材料費や機械装置費だけでなく、委託費、産業財産権の出願費、直接人件費、展示会の出展小間料まで幅広く認められています。

申請期限は令和8年8月20日(木)で、申請はJグランツのみの受付、GビズIDプライムの取得に数週間かかる点が最大の関門です。

補助金の交付は達成目標を満たす成果物の完成が条件となるため、申請書に書く目標水準の設定が制度活用の成否を決めます。

制度の概要はJグランツの公募詳細ページで、募集要項や課題一覧、申請様式は東京都の公式特設サイトで確認できます。

自社の技術が都の課題一覧のどれに応えられるのかを見極めるところから、準備を始めてみてください。